第14話 激動の渦中

文字数 5,528文字

『最後に『嫉妬(しっと)』と『憤怒(ふんど)』の2つの悪徳について(あわ)せて言及(げんきゅう)しておく。どちらも常用的な意味合いと大差はなく、端的(たんてき)に言えば相手を殺してしまいたいほどに(ねた)ましい、(ある)いは怒りを隠せないという衝動が根底にある。『嫉妬(しっと)』は自在に氷結を生み出すことが、『憤怒(ふんど)』は電撃を発生させたり雷を落としたりすることが出来(でき)、主にその力を(もっ)て対象を(あや)めるようだ。』

『この2つに関しては、ラ・クリマスの悪魔が引き起こす厄災の中でとりわけ観測記録が少なく、比較的情報が不足している。何故(なぜ)ならこの2つはいずれも執着と拒絶の対象が特定個人に向けられており、その個人を(あや)めた時点で悪徳は行き場を失うからだ。そうなれば早々(そうそう)に悪魔が『宿主』を滅ぼしてしまうために、厄災として観測される時間が非常に短いのだ。』


『だが裏を返せば対象である個人を(あや)めなければ、悪徳を(いだ)き続ける限り生き(なが)らえる余地があるとも言える。とはいえ魔力の(ともな)う現象が第三者の前で露呈(ろてい)すれば、畏怖(いふ)懐疑(かいぎ)を向けられて(たちま)ち人間社会から追い()られかねない。』

(ゆえ)に『宿主』は悪徳を密かに(つの)らせる傾向にあるため、事前に目星を付けることが難しいことも情報が少ない一因とも言える。だが我々はこれらの性質を踏まえ、確実に悪魔を『封印』出来(でき)るよう今も調査や準備を続けている。いざ対峙(たいじ)することになった場合の対策も、また追って説明してやる。』



——ラ・クリマス大陸暦999年6月30日 16時半 グラティア州アーレア国立自然科学博物館地下


 広大な氷洞(ひょうどう)と化した地下空間は、空気まで()てつくように張り詰めて沈黙していた。

 そんな中カリムは気絶したように眠るサキナを背負って下水道に下りるため、自分の着ていた大陸議会事務官の制服やディヴィルガムを(くる)んでいた布をナイフで加工し(つな)ぎ合わせて、2人を固定する即席の長い(ひも)を作成していた。


 サキナにはディヴィルガムに蓄積されていた『強欲の悪魔』の魔力の残滓(ざんし)を活用することで、一先(ひとま)ず低体温症を回避することは出来(でき)たと判断していた。
 (かつ)てステラが主張したように、悪魔の力とは必ずしも悪意に満ちたものではないということを、(みずか)ら生命活力を分配することで皮肉にも体感していた。

 それでも早急(そうきゅう)にこの氷洞(ひょうどう)から脱出しなければ共倒れしてしまうと危惧(きぐ)し、(かじか)(てのひら)を強引に操っていた。

 そして意識を目の前に(つな)ぎ止めるために、カリムはクランメ・リヴィアの言葉の数々を思い返しながらルーシー・ドランジアとの()り取りの記憶を呼び起こしていた。


如何(いか)にドランジアとの約束が(ゆが)んで()とんのか、もう(わか)ってもらえるやろ? …きっと残る『憤怒(ふんど)の悪魔』にも目星が付いとるんやろな。』


——議長が7体のラ・クリマスの悪魔について改めて説明したのは、『悲嘆(ひたん)』を『封印』するため俺にディヴィルガムを(たく)した時だった。そのときは()だ『嫉妬(しっと)』や『憤怒(ふんど)』についてはあまり調査や対策が進んでいないように聞こえて、『封印』も(しばら)く先のことだと勝手に捉えていた。

——でも『嫉妬(しっと)』の『宿主』は最初から議長のすぐ(そば)にいて、密かに協力を()いられていた。その周到さを考えれば、リヴィアさんの言う通り『憤怒(ふんど)』と対峙(たいじ)するときも近いのかもしれない。


——でも、その役目を俺が担うかどうかは(わか)らない。今の俺が議長にとって、『(かげ)の部隊』にとってどのような存在価値を見出(みいだ)されているのか、最早(もはや)何も(わか)らない。




 3日前、『貪食(どんしょく)の悪魔』の襲撃に(ともな)い孤立した蒸気機関車に取り残されてしまったカリムは、雨雲が通り過ぎた夕暮れ時になって(ようや)く大陸軍の救援を迎えていた。

 グラティア方面より()け付けた軍人からは、城郭(じょうかく)都市トレラントが蒼獣(そうじゅう)の襲撃に()って壊滅的な被害を受けた影響で救援が遅れたことを謝罪された。

 蒼獣(そうじゅう)(さなが)御伽噺(おとぎばなし)翼竜(よくりゅう)を思わせる巨大な姿であったという話には耳を疑ったが、何処(どこ)へ飛び去ることもなく消滅したとも聞くと、肩の力が抜けて他所事(よそごと)のような同情を(よそお)った。


 それよりも、これまでの道中で1人の女性議会事務官を保護し先んじて移送したという情報に安堵(あんど)を覚えていた。
 少しでも早くサキナに追い付くべきか(いま)だに思案していたカリムだったが、結局は蒸気機関車の復旧を待って帰路に()くことにしていた。

 だが本来機関車の整備士はテルミナ旧砦(きゅうさい)に常駐しているものの、その拠点もまた『貪食(どんしょく)の悪魔』の被害を受けて1人残らず()われてしまったことから、派遣された軍人たちの技量ではその日のうちに旧砦(きゅうさい)までゆっくりと機関車を動かすことで精一杯であった。

 翌日も旧砦(きゅうさい)での点検が決まったことから、カリムは夜が明けてから軍の馬を拝借してトレラントへ戻った。
 

 軍事と商業の一大拠点であったはずの堅牢(けんろう)な都市は、まるで大規模な爆撃が集中したかのように無惨(むざん)な廃墟と化しており、カリムは到底(とうてい)太刀打(たちう)ちできない脅威を想像で補完して打ち(ひしが)がれた。

 ただ街の地下に作られていた『(かげ)の部隊』の本部は健在であり、サキナの帰寮を確認したかったものの、まずは『封印』した『強欲の悪魔』をルーシーに引き渡すべくそのままヴィルトスの大陸議会へと馬を走らせた。


 だがルーシーは昨今(さっこん)度重(たびかさ)なる厄災に加えて昨日の壊滅的被害への対応に忙殺(ぼうさつ)されており、面会が出来(でき)る頃にはすっかり日が暮れていた。
 それでも封瓶を受け取り黙々と報告書を一読するルーシーは(まった)(やつ)れている様子がなく、(むし)黄金色(こがねいろ)の瞳がいつになく(するど)いように感じたカリムは終始緊張で身が強張(こわば)りそうだった。


「…ご苦労だった。そして(すで)に知っているかもしれないが、『貪食(どんしょく)の悪魔』は暴虐の果てにトレラントの大陸軍と痛み分けをする形で消滅した。」


 (やが)てルーシーが淡々と言い放った事実に、カリムは深々と陳謝した。


「申し訳ございません。昨日の明朝『貪食(どんしょく)の悪魔』とは会敵(かいてき)しましたが、翼を持つ『宿主』に逃走を許してしまいました。大陸軍や『(かげ)の部隊』に多大な被害が及んだ原因の一端(いったん)は、僕とサキナの過失にございます。」


「仮に逃してもおまえが気に病む必要はないと以前も言っただろう。確かにあれは過去に例を見ない規模まで発達したが、

。『貪食(どんしょく)の悪魔』はまたいずれ近い将来必ず現れる。そのときまでにまた備えておけばいいだけの話だ。」


 『淫蕩(いんとう)の悪魔』の一件とは異なり失態を一切(とが)めないルーシーを前に、カリムは内心動揺していた。
 人の命も街並みも失ったものは数が知れないというのに、(まった)く悔やまないどころか不満など少ないかのような口振りが釈然としなかった。

 一方のルーシーは部屋の奥からディヴィルガムを持ち出し、呆気(あっけ)にとられるカリムに再び託した。


「おまえには明後日の14時に、アーレア国立自然科学博物館のクランメ・リヴィアを訪ねてもらう。奴は職員である一方で『(かげ)の部隊』の密かな協力者でもあるのだ。要件に関しては、『定期報告』と言えば伝わるはずだ。ディヴィルガムについて話が出るかもしれないから、忘れずに持参するように。明日はゆっくり身体を休めておけ。」


 唐突(とうとつ)に新しい任務を命じられたカリムだったが、その内容よりもサキナが持っていたはずの古びた杖をこの場で再び手渡されたことに(いささ)か混乱していた。


「あの…この杖はサキナが持っていたはずですが?」


「ああ、昨日の夜分(やぶん)にトレラントに戻った際に部隊へ返却してもらっていた。あいつには

(すで)

。次に悪魔と対峙(たいじ)する際にまたおまえと組ませるかは未定だが…何か気になるか?」


 だが気になることを(すべ)て看破されたようにルーシーに言い返されてしまい、カリムはばつが悪くなって早々(そうそう)にその場を(あと)にせざるを得なくなっていた。




「カリム殿。送迎に上がりました。どうぞこちらへ。」


 サキナを背負いながら慎重に地下水路への梯子(はしご)を下ったカリムだったが、その先には紫紺(しこん)のローブと白い仮面を身に付けた『(かげ)の部隊』の女性が1人待ち構えていた。

 女性であることは異様に落ち着き払った(しと)やかな声音で判別しており、クランメを急襲すべく身を(ひそ)めていたサキナと行動を共にしていたことが推測出来(でき)た。
 そして彼女は何ら問いかける暇を与えず(ひるがえ)って歩き始めたので、カリムは仕方なく無言で追随(ついずい)していった。


 サキナを含め、明らかに自分の知り得ぬ領域で『嫉妬(しっと)の悪魔』を『封印』するための計略が進んでいたことには薄気味悪(うすきみわる)さを覚えていたが、(まった)く構造を把握していない地下水路を逸早(いちはや)脱出(だっしゅつ)出来(でき)ることはかえって好都合であった。

 間もなくして地上に出た先は博物館の裏手に当たり、そこには1台の自動車が待機していた。
 カリムにとって自動車に乗り込むことは初めての体験であり、サキナの身柄(みがら)(たく)しつつ大陸議会まで送り届けてもらえるという待遇に目を丸くしていた。

 だが背中から下ろしたサキナをそっと後部座席に預けたカリムには、先導していた『(かげ)の部隊』の女性から黒地(くろじ)のローブと耳当てが支給された。


「これは絶縁体を編み込んだローブと防音具です。『憤怒(ふんど)の悪魔』の雷撃対策としてご着用ください。」


「…どういうことですか? 議長のもとに向かうのではないのですか?」


「議長は現在ソンノム霊園へ展墓(てんぼ)に向かわれております。そしてこれより議長の前に『憤怒(ふんど)の悪魔』を宿す者が現れます。『嫉妬(しっと)』の『封印』に成功したいま、残る『憤怒(ふんど)』を『封印』出来(でき)さえすれば我々の悲願は達成されるのです。」



 ()も部隊の共通認識であるかのように語る口振りに、カリムは寒い地下空間から脱出したにも(かかわ)らず全身に鳥肌が立っていた。
 何より『貪食(どんしょく)』の『封印』に成功している前提で会話を成立させていることが(おぞ)ましく、大局(たいきょく)の中で自分が強引に押し流されている現実を(さと)った。

 立て続けとなる最後の悪魔との対峙(たいじ)を予告されて絶句することも(まま)ならず、彼女に支給品の着用を改めて促されたカリムは、その指示通りに準備をして自動車に乗り込む他なかった。


 初めて乗る自動車は、馬車よりも狭い密室とここ数時間続く目紛(めまぐ)るしい展開が(あい)まって、快適さは皆無(かいむ)であり息苦しいばかりであった。
 それでもカリムは霊園に到着する前に、出来(でき)る限り現状を整理することに努めていた。


——議長はやはり最初から、ものの1カ月で7体(すべ)てのラ・クリマスの悪魔を『封印』することを目論(もくろ)んでいたのか? そこまでして急ぐ必要性は何なんだ?

——いや、リヴィアさんの言う通り『封印』の仕組みが曖昧(あいまい)であるが(ゆえ)に、短期集中的に計画を進めたことは想像に(かた)くない。問題は『封印』の

(ぼか)され続けていることだ。


 地下水路で出迎えた『(かげ)の部隊』の女性は助手席に座っており、運転は元々車内で待機していた別の部隊員が担っていた。
 カリムの瞳には無言で自分を移送する2人の後ろ姿が、同じ部隊員であるにも(かかわ)らず(ひど)く不気味に映っていた。


——こいつらは俺の知らないことをどこまで知っているんだ? 部隊の中でどれだけの連中が、議長と真の目的を共有しているんだ?

——議長には『封印』した『嫉妬(しっと)の悪魔』を引き渡すとき、()らい付いてでも色んなことを問い(ただ)すつもりだったのに、それすら他の部隊員によって阻止されているような気がする。議長と相対(あいたい)する前に、何人もの部隊員が壁となって急に湧いて出てきたみたいだ。


——当然か。部隊の側から見れば、俺は散々悪魔に(ほだ)されて計画に疑問を突き付けようとする反乱分子みたいなものだからな。



 だがそんな戦慄(わなな)きを払拭(ふっしょく)しようと、カリムは(かたわ)らに立て掛けていたディヴィルガムを手に取り、隕石の内部に(ただよ)う淡く青い光の粒子をじっと見つめた。


——リヴィアさんを(たばか)るためには、これまで最前線に立ってきた俺が何も知らされず(おとり)になることが最適だった。その合間にどれだけ俺が(ほだ)されようとも、最後まで『(かげ)の部隊』としての任務を果たせばそれで構わない…(あらが)うのならば排除すればいいだけの話だから。

——最後まで俺が悪魔と対峙(たいじ)しなければならない理由も意義も、『(かげ)の部隊』にあるはずがない。俺は偶々(たまたま)ここまで成功を重ねて来て、今もその流れのままに最後の戦いに()り出されているだけなんだ。所詮(しょせん)は目的を果たすための道具以外の何者でもなかったんだ。


——でも今の

目的は、任務の(まっと)うでも世界平和でもない。もし議長が狙い通りに厄災を引き起こす術を持っていて、一連の計画のためにリオを犠牲にしたのなら、俺の復讐(ふくしゅう)()だ終わっていないことになる。そして悪魔を文字通りの『封印』する以外の目的があるのなら、それに納得しなければ、これまで奪った『宿主』達の命に(こた)えることが出来(でき)ない。

——どういう状況で『憤怒(ふんど)の悪魔』と対峙(たいじ)することになるかは(わか)らないけど、いずれにせよ氷結の力は一度しか使えない。だから可能なら『憤怒(ふんど)』の『宿主』と話をつけて、議長と相対(あいたい)するまでこの力は温存したい。判断力をこれまでより一層(いっそう)研ぎ澄まさなきゃならない……けど。



 だがどれだけ頭の中で決心を重ねても胸の内では動悸(どうき)が加速していくような気がして、隣で(いま)だ目覚めぬサキナを不安気に見遣(みや)った。

 カリムはサキナが力無(ちからな)く座席に垂らす右腕を、不図(ふと)左手で握って揺り動かしたい衝動に()られていた。脳裏(のうり)には、瀕死(ひんし)のクランメが(たく)した言葉が鮮明に(よみがえ)っていた。


『ドランジアの…陰謀(いんぼう)を……うちの力を使(つこ)うて…全部、暴くんや…! …そのうえで君が…本真(ほんま)()すべきことを……あの()と、考えるんや…!』


——サキナはきっと、最後まで使命を果たせと冷淡に(さと)すのかもしれない。でももしリオのことを想うのなら、一緒に議長に立ち向かってくれたりしないだろうか。それが出来(でき)なくとも一言でいいから励まして、送り出してくれないだろうか。

——その一言さえあれば……俺は少しでも、楽になれるかもしれないのに。
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登場人物紹介

【ドール】齢19の修道女。

▶ラ・クリマス大陸北西部にあるディレクト州の歴史ある街ディレクタティオで暮らしており、グレーダン教の総本山であるディレクタティオ大聖堂に連なる修道院に属している。

▶生まれつきの白髪が忌み嫌われ、赤子の頃に大聖堂に託された孤児だった。

▶対人関係が希薄なため幼い頃から本の虫であり、好奇心が旺盛。

▶その性格が災いしてか、あることをきっかけに異端者、廻者として糾弾されることになり、その理不尽な仕打ちを機にラ・クリマスの悪魔を顕現させてしまう。

【死神】ドールの命を狙い対峙する謎めいた人物。

▶グレーダン教徒に似た紫紺のローブを纏い、真っ白で無機質な仮面を着けている。

▶グレーダン教に代々継承されてきた司教杖に似た、武器と言い難い杖を構える。

▶その先端に着装された黒い鉱石からは、悪魔を脅かす不思議な力が醸し出されている。

▶「死神」という名称は、ドールが便宜上付与したものにすぎない。

【ネリネ・エクレット】齢16の貴族令嬢。

▶大陸南東部ヒュミリア州、2大交易都市の1つであるメンシスを治める領主ホリー・エクレットの1人娘。

▶穏やかで物腰柔らかな性格だが、箱入り故に世間知らずである。艶のある金髪の持ち主。

▶だが突如メンシスを襲った猛烈な竜巻で被災し、親も家も失う。

▶街の再建を大陸軍に任せて親戚の元へ身を寄せることになるが、その言動はまるで別人になったようであった。

【カリム】大陸議会の事務官を名乗る青年。

▶年齢はネリネと同じくらいと思われ、左目を前髪で隠しており陰気そうな印象である。

▶身に付けている赤を基調としたシャツと議会所属を表すバッジを留めた黒地のチョッキは所定の制服のようなもの。

▶馬車に乗りメンシスを去るネリネに随行し、竜巻被害について聴取しようとする。

▶大陸北東部の孤児院の出身で、過去に何か苦い経験をしているようである。

【リリアン・ヴァニタス】ヴァニタス海賊団の若き首領。

▶巻き毛の金髪が特徴で、体術では随一の戦闘力を持つ。

▶急逝した父の遺言により、齢16にして首領の座を継承しているが、経験が乏しく未熟であるため、父の右腕であった幹部ローレンの助力を得ながら海賊団を存続させている。

▶海賊団はアルケン商会という善良な団体を騙る裏で、密輸品などの取引を働いていた。

【ロキシー・アルクリス】齢17の女使用人。

▶大陸中央部プディシティア州にあるセントラム農業盆地の領主クレオーメ・フォンス伯爵の別邸に仕える。

▶物心ついた頃から母レピアと共に別邸に棲み込みで従事しており、あまり外界との接触がない。

▶長い藍色の髪をしており、やや陰鬱な印象とは裏腹に齢離れした恵体の持ち主。

▶使用人長でもあるレピアとともに好からぬ秘密を抱えており、大陸軍側からの詮索を敬遠している。

【ルーシー・ドランジア】大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長。

▶すらりとした上背に長い黒髪を湛え、銀縁の眼鏡の奥に黄金色の瞳を覗かせる齢28の女性。

▶メンシス港の機能停止を受け、セントラムの生産品の出荷計画などを見直すべく部隊を牽引しフォンス邸別邸を訪れるが、密かに別の目的も念頭にあるらしくロキシーに探りを入れる。

▶飄々として掴みどころのない性格。身内も大陸議会の関係者であるらしい。

【ステラ・アヴァリー】齢24の孤児院管理人。

▶大陸北東部カリタス州の新興都市グリセーオで大陸軍が設立し運営を委託するジェルメナ孤児院に従事している。

▶領主キーウィ―・アヴァリーの1人娘であり、2年前に母から管理人の立場を継承している。

▶赤みがかった茶髪を三つ編みで束ねている。世話焼きで責任感や正義感が強い。

▶過去に厄災を経験して以来、1人でも多くの親なき子の命を護りたいと身を粉にして働いているが、結果としてこれ以上収容できないほどの孤児を拾ってしまい、食糧などの遣り繰りに頭を悩ませている。

【リオ】かつてジェルメナ孤児院で暮らしていた少女。

▶物語開始時点から7年前、グリセーオ西端を流れる川に独り漂着していたところを救助されたが、虚弱体質に陥っていたためジェルメナ孤児院に引き取られ静養することになる。

▶救助以前の記憶をほとんど引き出すことが叶わず、当時は齢7,8程度と推測されていた。

▶2年後に『強欲の悪魔』を顕現させてしまい、命を落としている。栗毛と鈍色の瞳が特徴。

【ピナス・ベル】伝説の瑠璃銀狼の血を引くラピス・ルプスの民の少女。

▶外見は齢12,3ほどだが、人間と比べて齢を重ねる間隔が緩やかで、既に30年生きている。

▶大陸北部アヴスティナ連峰の中腹にあるクラウザという集落で同胞と共に密かに暮らしている。

▶とある目的を果たすため『貪食の悪魔』を宿して鳥の姿となり、大陸西部へ向かっている。

▶7年前のとある出来事で人間側との軋轢を経験し、その際に『貪食の悪魔』を宿した母を失っているほか、サキナとも面識をもっている。

【オドラ―・ベル】ピナスの祖父であり、クラウザの集落を束ねる長老。

▶齢200を超え、ラピス・ルプスの民の特徴である銀色の毛並みは灰色にくすみ、全身毛むくじゃらである。

▶大陸の人間が内戦時代を経て現代に至るまでの歴史だけでなく、千年前から続く厄災についても口伝により知識を蓄えている。

▶人間と対立する気はないが、緩やかに数を減らしてく一族の行く末を憂い、『貪食の悪魔』を同胞から生み出さぬためにも、人間の手を借りてでも種を存続させるべきか思案している。

【クランメ・リヴィア】齢28の博物館職員兼調査研究員

▶大陸西部グラティア州、首都ヴィルトス近郊のアーレア国立自然科学博物館に従事している。

▶やや小柄で、分厚い眼鏡と象牙色の髪が特徴。大陸南西部ミーティス州の農村出身で、独特な訛りで喋る。

▶ルーシーとはグラティア学術院で同期生の関係だが、当時はあまり好ましい印象を抱いていなかった。

▶ラ・クリマスの悪魔の『封印』に関わるとある仕事を引き受けている。

【イリア・ピオニー】齢26にして大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長を務める軍人。

▶桃色がかった金髪と強い正義感の持ち主。国の平和のため心身を尽くそうとする厳格な性格。

▶現代に至る国内軍事を統括し続けた由緒あるピオニー家の娘。父ジオラスは元帥の地位にあり、2人の兄も同じく軍人である。

▶十代のころに出会ったルーシーの理想に感銘を受け、励まされたことでその背中を追い続けている。

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