第10話 託し託され

文字数 4,845文字

 人はいつか必ず死ぬ。生命(いのち)には必ず終わりを迎える時が来る。

 花にどれだけ水や肥料を与え続けても枯れる時が訪れるように、どれだけ救いの手を差し伸べても人生はいつしか終焉(しゅうえん)を迎える。
 (たと)え『強欲』の悪魔の力を(ふる)ったとしてもその(ことわり)まで()じ曲げることは叶わないと、ステラは本能的に理解していた。


 だからこそ、生命(いのち)の終わりを()の当たりにすることが口惜(くちお)しく、(おぞ)ましかった。(かつ)てリオを失ったときと同じような虚無感や無力感に再び(おぼ)れることを恐れていた。

 (あまつさ)(みずか)らの手でその終焉(しゅうえん)(もたら)すなど——それが魔力という不可思議な力で(かたど)られた仮初(かりそめ)生命(いのち)だとしても、目的を果たすために必須(ひっす)であると(わか)っていても、ステラは最後まで割り切ることが出来(でき)なかった。


「…おい、ステラ!? (ひど)い顔色やで、しっかりせぇ!!」


 振り返ったクランメの動転したような声音で、ステラは我に返った。

 (いく)つもの魔魂(まこん)を吸収したステラは気付けばクランメの背中に(かぶ)さるように寄り掛かっており、肩を(つか)んだ右手は激しく震えていた。
 他方で全身は意識が飛びそうなほどに(ほめ)いており、温度感覚が失われたはずのこの身が今にも内側から焼き尽くされようとしているのが(わか)った。


——魔力の過剰吸収……生命活力を奪い過ぎて肉体が耐え切れなくなるんだわ……きっとリオが(みずか)らの身を滅ぼしてしまったときと…同じように……。

——あの()は…こんなに(つら)く苦しい最期(さいご)を…迎えていたのね……。


 ステラは亡きリオに想いを重ねて、(かろ)うじて呼吸を整えながら焦点を合わせていた。膨大な魔力を抱えて萌黄色(もえぎいろ)の瞳が(かつ)てないほどに(きら)めき、何度瞬きを繰り返しても視界では同色の火花が弾けていた。


——駄目(だめ)よ、倒れたら……イリアさん達が(たく)してくれた力が…思いが…無駄になってしまう……!!


 だがそうして意志を固めるほどに、胸の(あな)の奥に抑え込む『強欲』が熱く暴走しそうになっていた。
 どんな人にも救いの手を差し伸べたいという欲望がイリア達の消滅により明確に行き場を失い、膨大な魔力と釣り合わない肉体の(うつわ)を壊そうと足掻(あが)いているのだとステラは察していた。

 生前に孤児院の管理人に従事するに当たり、(いく)つもの子供の命を預かるという使命を(まっと)うしてきたつもりだったが、実際に背負う生命(いのち)の重さは数えるほどであっても計り知れないほどの重圧を(まと)っていた。

 結果としてステラは、(わず)かでも意識を緩めれば身体の内側と外側から容易(たやす)()し潰されかねない危難に(おちい)っていた。


——生命(いのち)を丸ごと抱え込むことが…これほどの荷重(におも)になるなんて……。

——私は…そんなことも知らずに…カリムに偉そうな講釈を…垂れていたのね……。



 心の中で不図(ふと)(つぶや)くと、カリムの表情が走馬灯(そうまとう)のようにステラの視界に映し出された。

 幼き頃の(くら)い顔、再会し対峙(たいじ)した頃の失意と嫌悪(けんお)(せめ)ぎ合う顔、そして影に染まりながらも決意に満ちた顔…それらを(なが)めていくに連れて、ステラは少しだけ呼吸が軽く落ち着いていくのを感じた。


——そうだ…カリムもきっと…その重さを自覚したんだわ……その上で…自分の歩むべき未来を…切り(ひら)こうとしている……。

——それなら私は…何としてもこの力を…生命(いのち)を…(つな)がなきゃならない……それが私の…最後の願い……欲望を手放してでも(つむ)ぐべき…役割……!!



 次の瞬間、ステラのワンピースの袖口(そでぐち)(すそ)から(おびただ)しい青白い(つる)(あふ)れ出し、クランメの身体中に巻き付きながらステラごと拘束した。

 (もた)れかかるように(つる)(かたまり)が押し寄せたことで、流石(さすが)のクランメも立て続けに動揺した。
 そんな彼女の耳元に向かって、ステラは(かす)れた声音を(しぼ)り出した。


「…リヴィアさん……余さず受け取って…(つな)げてください……私達の…魔力を…生命(いのち)を……願いを……!!」


 高熱に浮かされるような口調から切迫した具合を察したクランメは、小さく息を吐いて冷静さを取り戻すと、ステラの意志に(こた)えるように(ささや)き返した。


「…任せとき。(みんな)の力も思いも、うちが全部ぶつけたるわ。」


 その一言を聞いて安堵(あんど)したステラは(おぼろ)げな意識の中で、持て余すほどの魔力を(つる)を通してクランメに注ぎ込み始めた。

 負担がかからないように少しずつ、その一方で肉体が限界を迎えることのないよう譲渡を()いた。最期(さいご)の最後に自分自身の(たましい)から魔力を(しば)り尽くして譲渡を終えるまで、意識を途切(とぎ)れさせるわけにはいかなかった。

 だが全身から(あふ)れ出す萌黄色(もえぎいろ)の光に(うず)もれていくように、ステラは次第に何も考えられなくなっていった。
 ただこの役割が無事に完遂(かんすい)されること、そしてこの先に待ち受ける命運を祈りながら微睡(まどろ)みに似た感覚に()ちていった。


——リヴィアさん…どうかカリムを…ルーシーさんの元へ…導いてください……ルーシーさん……どうかカリムと……向き合ってあげて…ください……。


——そしてカリム……どうか私達の生命(いのち)が…重荷(おもに)にならないよう……(すこ)やかに…生きられますように……。




 ラ・クリマスの悪魔を顕現させたその身は最早(もはや)周囲と同じような人間ではなく、生命(いのち)と魔力とが同化した異質で恐るべき存在である——クランメがそのことに気付いたのは、『嫉妬(しっと)』の悪魔を宿した日の夜のことであった。

 ルーシー・ドランジアから(もら)ったリンゴを食べて以来空腹を覚えず、一切の眠気を感じなくなっていた。
 悪徳が弱まるなどして魔力の供給が一定値を下回るか、魔力を浪費した場合にのみ身体は休息を必要とするが、それは睡眠というより気絶や昏睡(こんすい)(ひょう)する方が妥当であった。


 (ゆえ)にクランメは人並みの生活を喪失(そうしつ)しないよう無理矢理にでも食事や睡眠を習慣付け、意識的に『嫉妬(しっと)』を(つの)らせては適度に魔力を発散する日々を送り続けた。

 (およ)そ5年に(わた)り悪魔との共存を(はか)るなかで、適切な魔力の管理が(おの)ずと身についていた。
 蓄積される魔力の上限と下限が体感で細かく計量出来(でき)るようになり、出力を繰り返すことで効率や操作性が洗練されていった。


 そうして常時安定させていたクランメの魔力量が、ステラの供給により一瞬で振り切れた。充満する魔力で肺や脳が急速に圧迫され、身体中が破裂するかのような危機に(ひん)した。

 だが咄嗟(とっさ)に両手を突き出して岸辺に氷結を張り、金色の渦が逆巻く黒い湖の底に向かって——紺青色(こんじょうしょく)の瞳に一番星のように映る小さな光に向かって氷柱を伸ばし始めた。

 直径3,4メートルほどの太さの氷柱を猛烈な速度で突き出すように生成するような魔力の使い方は、経験上(いちじる)しい肉体の消耗を(ともな)うものであったが、ステラの(つる)を経由して届けられる魔力は無尽蔵(むじんぞう)に思えるどころか、依然として吐き出し続けなければ身体が耐えられないような量と密度であった。


——理屈通りに進められてるとはいえ、なんちゅう膨大な魔力なんや。少しでも気ぃ抜いたら意識が全部持っていかれて暴発して(しま)いや。こんなん到底人1人が抱えられる魔力やあらへん。

——『強欲』の悪魔を宿しとるステラでさえ処理が鈍重(どんじゅう)になるほどの負担やったんや…ただ物質を変化させるしか能の無いうちが漫然と抱えられるもんやないと、覚悟しとったはずなんやけどな……!


 クランメは背中に(もた)れるように()し掛かるステラと幾重(いくえ)もの(つる)、そしてそれ以上に襲い来る膨大な魔力を(かろ)うじて受け止めつつ、生成する氷柱が(いびつ)にならないよう集中していた。

 ラ・クリム湧水湖(ゆうすいこ)の広さや深さは、生前の隕石研究に当たりセントラムの地形を調査する際に(おおよ)そ把握していたため、その記憶に基づいて目指すべき地点までの距離と角度を割り出していた。

 だが仮にその記憶がなくとも、クランメはそこに辿(たど)り着くための執念を持ち合わせていた。


——せやけどドランジアは、うちら7人分の悪魔の力をきっちり制御して野望を前進させた…今も(なお)膨大な量と密度の魔素を吸収しながら自己を保存させとる。本真(ほんま)(にく)たらしいほどこの上ない。なして伝承の悪魔を宿しとらんあいつに、そないな芸当が出来(でき)んねん!?


 抱えきれないほどの魔力を背負ったことでより一層ルーシーとの力量の差を痛感したクランメは、その『嫉妬(しっと)』を更なる原動力として(みずか)らを奮い立たせていた。

 そして(すさ)まじい速度で水中を突き進んでいた氷柱はあっという間に湖底へと到達し、次の瞬間には半球状の壁のようなものに衝突した。ルーシーが自己保存のために生み出している魔力で出来(でき)た防護壁であった。


——捉えた…そこやなドランジア!!


 クランメは察するや(いな)や氷柱の先端を更に展開して、その防護壁を(おお)い尽くした。

 そうして出来上(できあ)がった氷の円天井(まるてんじょう)を肥大化させ、充分な厚みに至ったことを認識すると、愈々(いよいよ)氷柱から円天井(まるてんじょう)にかけての中身を繰り抜いて昇華させ、人が通行出来(でき)る『氷穴(ひょうけつ)』の加工へと段階を移行した。

 足場を階段状に(かたど)ることを含め、(ほとん)(すべ)てが湖中で正確に視認出来(でき)ないなかでの作業だった。
 その上昇華という変化の促進が氷柱生成よりも更に激しく魔力を消費することから、洪水のように押し寄せる膨大な魔力を(さば)きながら繊細(せんさい)な作業を慎重かつ大胆に推し進める必要があった。


 それでもクランメは、脳裏(のうり)(えが)いていた設計図通りにそれを(こな)していた。

 その荒業(あらわざ)を可能にしていたのは、長年悪魔を宿し続けた者としての矜持(きょうじ)のようなものであり、同じ悪魔の『宿主』達の意志に(こた)えようという決意であり、湖底に(ひそ)むルーシーに対する挑戦的な気概(きがい)であった。


——大人しく待っとれよドランジア。(ひと)りで世界を救う(かげ)の英雄に成りたかったんかは知らんけどな…大事なもん無言で切り捨てて他人(ひと)の命散々(もてあそ)んどいて、そんなとこに引き(こも)るんが最善策だったなんてうちは認めへんで。

——『(かげ)の部隊』なんてもん指揮せんと、表舞台(おもてぶたい)で人々を動かすんが首相としての…ドランジアの家系の()り方ちゃうんか。勿論(もちろん)これはうちの利己的な偏見…悪魔に(あお)られた(いや)しい動機かもしれへん。せやから、ちゃんとおまえと同じ血を継ぐ(もん)を送り付けたる。湖の底で

家族会議、やってもらうからな!!




 『氷穴(ひょうけつ)』の完成まではものの数分であったが、クランメには何時間も時が過ぎたように感じていた。
 厳密には時の流れなど体感で計れないほど、身体も意識もいつの間にか空気の(かたまり)のように曖昧(あいまい)なものになっていた。

 背中に()し掛かっていたはずの重圧も何も感じなくなり、ステラが()(もた)れて存在しているのかどうかすら(わか)らなかった。
 経験したことのない疲労で息も()()えであるにも(かかわ)らず、肺の底が抜け落ちているようで呼吸をしている感覚がなかった。

 それでも(たく)された力と(みずか)らの魔力の(すべ)てを解き放ったことで確かな達成感があり、クランメは(わず)かな意識を後方の茂みに身を(ひそ)めている影の青年に向けた。


——最後に君に…伝えたいこと……。


——この盆地の…特質……いや…そんなんやないな……。


 セントラムを中心とする地域で5年周期に見られる豊作の要因は、湖の底の更に深くに埋まる巨大隕石に引き寄せられる魔素(まそ)奔流(ほんりゅう)が物質を()り抜けることで生じる土壌の活性化である——この白黒の世界でそんな仮説を立てていたクランメだったが、最早(もはや)未練として(たく)すことも野暮(やぼ)だと思い、自嘲(じちょう)気味に笑みを(こぼ)した。

 青年が持つディヴィルガムを通して今も()だ声が届くのか確かめる(すべ)はなかったが、クランメはぽつりと(つぶや)くように一言を残した。


——こんなもんでもな……(のこ)すことに意味があるんや……。


——せやから…後のことは頼むやで…カリム君……。





「…リヴィアさん、ありがとうございます。そして(みな)さんが貸してくださった力を、絶対に無駄にはしません。」


 湖畔(こはん)に輝いていた萌黄色(もえぎいろ)(もや)とそこから伸びる幾重(いくえ)もの青白い(つる)()き消え、更に紺青色(こんじょうしょく)(もや)霧散(むさん)すると、カリムは(うる)む目元を(そで)(ぬぐ)いながら茂みから姿を現した。

 岸辺には湖底に続く立派な氷穴(ひょうけつ)が作り上げられ、壊月彗星(かいげつすいせい)がその入口を称賛するように煌々(こうこう)と照らしていた。
 他方で氷穴(ひょうけつ)()ぐ奥はその光も届かぬ暗闇であり、カリムは(たちま)ち足が(すく)んだ。


 だがその背中を後押しするように、(すみれ)色の(もや)が静かに寄り添って(ささや)いた。


『…それでは共に参りましょう、カリム様。』
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登場人物紹介

【ドール】齢19の修道女。

▶ラ・クリマス大陸北西部にあるディレクト州の歴史ある街ディレクタティオで暮らしており、グレーダン教の総本山であるディレクタティオ大聖堂に連なる修道院に属している。

▶生まれつきの白髪が忌み嫌われ、赤子の頃に大聖堂に託された孤児だった。

▶対人関係が希薄なため幼い頃から本の虫であり、好奇心が旺盛。

▶その性格が災いしてか、あることをきっかけに異端者、廻者として糾弾されることになり、その理不尽な仕打ちを機にラ・クリマスの悪魔を顕現させてしまう。

【死神】ドールの命を狙い対峙する謎めいた人物。

▶グレーダン教徒に似た紫紺のローブを纏い、真っ白で無機質な仮面を着けている。

▶グレーダン教に代々継承されてきた司教杖に似た、武器と言い難い杖を構える。

▶その先端に着装された黒い鉱石からは、悪魔を脅かす不思議な力が醸し出されている。

▶「死神」という名称は、ドールが便宜上付与したものにすぎない。

【ネリネ・エクレット】齢16の貴族令嬢。

▶大陸南東部ヒュミリア州、2大交易都市の1つであるメンシスを治める領主ホリー・エクレットの1人娘。

▶穏やかで物腰柔らかな性格だが、箱入り故に世間知らずである。艶のある金髪の持ち主。

▶だが突如メンシスを襲った猛烈な竜巻で被災し、親も家も失う。

▶街の再建を大陸軍に任せて親戚の元へ身を寄せることになるが、その言動はまるで別人になったようであった。

【カリム】大陸議会の事務官を名乗る青年。

▶年齢はネリネと同じくらいと思われ、左目を前髪で隠しており陰気そうな印象である。

▶身に付けている赤を基調としたシャツと議会所属を表すバッジを留めた黒地のチョッキは所定の制服のようなもの。

▶馬車に乗りメンシスを去るネリネに随行し、竜巻被害について聴取しようとする。

▶大陸北東部の孤児院の出身で、過去に何か苦い経験をしているようである。

【リリアン・ヴァニタス】ヴァニタス海賊団の若き首領。

▶巻き毛の金髪が特徴で、体術では随一の戦闘力を持つ。

▶急逝した父の遺言により、齢16にして首領の座を継承しているが、経験が乏しく未熟であるため、父の右腕であった幹部ローレンの助力を得ながら海賊団を存続させている。

▶海賊団はアルケン商会という善良な団体を騙る裏で、密輸品などの取引を働いていた。

【ロキシー・アルクリス】齢17の女使用人。

▶大陸中央部プディシティア州にあるセントラム農業盆地の領主クレオーメ・フォンス伯爵の別邸に仕える。

▶物心ついた頃から母レピアと共に別邸に棲み込みで従事しており、あまり外界との接触がない。

▶長い藍色の髪をしており、やや陰鬱な印象とは裏腹に齢離れした恵体の持ち主。

▶使用人長でもあるレピアとともに好からぬ秘密を抱えており、大陸軍側からの詮索を敬遠している。

【ルーシー・ドランジア】大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長。

▶すらりとした上背に長い黒髪を湛え、銀縁の眼鏡の奥に黄金色の瞳を覗かせる齢28の女性。

▶メンシス港の機能停止を受け、セントラムの生産品の出荷計画などを見直すべく部隊を牽引しフォンス邸別邸を訪れるが、密かに別の目的も念頭にあるらしくロキシーに探りを入れる。

▶飄々として掴みどころのない性格。身内も大陸議会の関係者であるらしい。

【ステラ・アヴァリー】齢24の孤児院管理人。

▶大陸北東部カリタス州の新興都市グリセーオで大陸軍が設立し運営を委託するジェルメナ孤児院に従事している。

▶領主キーウィ―・アヴァリーの1人娘であり、2年前に母から管理人の立場を継承している。

▶赤みがかった茶髪を三つ編みで束ねている。世話焼きで責任感や正義感が強い。

▶過去に厄災を経験して以来、1人でも多くの親なき子の命を護りたいと身を粉にして働いているが、結果としてこれ以上収容できないほどの孤児を拾ってしまい、食糧などの遣り繰りに頭を悩ませている。

【リオ】かつてジェルメナ孤児院で暮らしていた少女。

▶物語開始時点から7年前、グリセーオ西端を流れる川に独り漂着していたところを救助されたが、虚弱体質に陥っていたためジェルメナ孤児院に引き取られ静養することになる。

▶救助以前の記憶をほとんど引き出すことが叶わず、当時は齢7,8程度と推測されていた。

▶2年後に『強欲の悪魔』を顕現させてしまい、命を落としている。栗毛と鈍色の瞳が特徴。

【ピナス・ベル】伝説の瑠璃銀狼の血を引くラピス・ルプスの民の少女。

▶外見は齢12,3ほどだが、人間と比べて齢を重ねる間隔が緩やかで、既に30年生きている。

▶大陸北部アヴスティナ連峰の中腹にあるクラウザという集落で同胞と共に密かに暮らしている。

▶とある目的を果たすため『貪食の悪魔』を宿して鳥の姿となり、大陸西部へ向かっている。

▶7年前のとある出来事で人間側との軋轢を経験し、その際に『貪食の悪魔』を宿した母を失っているほか、サキナとも面識をもっている。

【オドラ―・ベル】ピナスの祖父であり、クラウザの集落を束ねる長老。

▶齢200を超え、ラピス・ルプスの民の特徴である銀色の毛並みは灰色にくすみ、全身毛むくじゃらである。

▶大陸の人間が内戦時代を経て現代に至るまでの歴史だけでなく、千年前から続く厄災についても口伝により知識を蓄えている。

▶人間と対立する気はないが、緩やかに数を減らしてく一族の行く末を憂い、『貪食の悪魔』を同胞から生み出さぬためにも、人間の手を借りてでも種を存続させるべきか思案している。

【クランメ・リヴィア】齢28の博物館職員兼調査研究員

▶大陸西部グラティア州、首都ヴィルトス近郊のアーレア国立自然科学博物館に従事している。

▶やや小柄で、分厚い眼鏡と象牙色の髪が特徴。大陸南西部ミーティス州の農村出身で、独特な訛りで喋る。

▶ルーシーとはグラティア学術院で同期生の関係だが、当時はあまり好ましい印象を抱いていなかった。

▶ラ・クリマスの悪魔の『封印』に関わるとある仕事を引き受けている。

【イリア・ピオニー】齢26にして大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長を務める軍人。

▶桃色がかった金髪と強い正義感の持ち主。国の平和のため心身を尽くそうとする厳格な性格。

▶現代に至る国内軍事を統括し続けた由緒あるピオニー家の娘。父ジオラスは元帥の地位にあり、2人の兄も同じく軍人である。

▶十代のころに出会ったルーシーの理想に感銘を受け、励まされたことでその背中を追い続けている。

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