第17話 修道女と死神

文字数 5,155文字

 唐突(とうとつ)に身元を特定されたドールは、上目遣(うわめづか)いに(おび)える子供を前に唖然(あぜん)としていた。

 ()むべき白髪(はくはつ)に今になって気付かれたのではなく、これまでの会話の脈絡からその答えに辿(たど)り着いたことを前提としたとき、ドールもまた同じように子供の正体を特定出来(でき)てしまったことに息を呑んでいた。


「君は……もしかして『死神さん』なの!?」


 引き()った声音で尋ね返すと、その子供は(つい)に居た(たま)れなくなったのか、自棄(やけ)を起こしたように暗闇の中を逃げ出した。


 生前相対(あいたい)した『死神』はとても子供と呼べる体格ではなかったが、その反応は明確に疑問を肯定するものであった。
 ドールは慌てて呼び止めようとしたが、咄嗟(とっさ)にそれが(むご)い仕打ちだと察して声が出ず、一歩も足を動かすことが出来(でき)なかった。

 もし自分が(あや)めた人が突然目の前に現れて優しく迫ろうものなら、炎を振り()いて()き消そうとするか、そうでなければ逃げ(おお)せるしかないだろうと同情を寄せていた。

 その一方で、()だ現実に生きているはずの『死神』が、この世界で死んだはずの自分と接触し会話を交わすことが出来(でき)ている理由を考えていた。


——あの子は私みたいに、死んで曖昧(あいまい)な存在に成り下がったわけじゃないはず。ひょっとしてあの子は

『死神』で、生前の世界とこの世界とで悪魔を管理する役目を担っているとか? ディヴィルガムの持ち主があの子であったように、あの杖とよく似た畏怖(いふ)を放っていた蛇はあの子の仮初(かりそめ)の姿だっていうの?

——…いいや、違う。あの子は確かに普通の人間だった。大人からの叱責(しっせき)を恐れながらも悪戯(いたずら)(わる)びれるような、どこにでもいる普通の子供に見えた。どうしてあの子は、こんな奇妙な存在に…?



 ドールが到底(とうてい)解くことの出来ない謎に(ひと)り頭を(ひね)っていると、不図(ふと)正面に向かって何かが近付いてくる気配を察した。

 足音はせずとも暗闇が少しずつ揺らいで来ているような気がして、蒼炎(そうえん)灯火(ともしび)を少し高く掲げてみせた。

 するとその(ほの)かな(あかり)に照らされて、影のように(おぼろ)げな青年が姿を現した。
 前髪で左目を隠していることが(かす)かな輪郭(りんかく)から(わか)り、先程行方(ゆくえ)(くら)ました子供が急に成長して戻ってきたように見えていた。


 ドールはその変化の理由を問いかけようとしたが、影よりも更に(くら)い右の瞳が何かを訴えかけているように感じ、押し黙ってその少年を迎えていた。

 青年はドールの目の前まで歩み寄ると深々と(こうべ)を垂れて、明らかに男子へと変わった声音を震わせながら語り掛けてきた。


『…貴女(あなた)の命を奪ってしまったことを深くお詫びします。この()に及んで(ゆる)されるとは思っていませんが…どうか自分が(いや)しくも生き続けることを許してください。』


 その口調からは先程までのような辿々(たどたど)しさは消え、(かしこ)まった謝罪がはっきりとドールの耳に届いていた。
 とはいえその切なる言葉はただ青年にとっての気休めにしかなり得ず、ドールは何も答えを用意出来(でき)ずにその頭部を漠然と見下していた。

 先の子供が等身大の『死神』へと成長したことでかえって冷静になり、(むし)ろ自分自身のことを対照的に(かえり)みるようになっていた。


——許してください、ね…。そう言えば私も最初は『死神』に、似たようなことを口走っていた気がする。でも言葉は似ていたとしても、それは私に命を奪われた人に()てたものじゃなかった。

——私という1人の人間を(こぞ)って殺そうとする卑劣(ひれつ)な人達は殺されて当然。それは理不尽の裏返しなのだから、私に罪はない…そういう醜悪(しゅうあく)な理屈を振り(かざ)していた。あの懇願(こんがん)はその一方で、悪魔を宿した私は殺されて当然という同害報復に(あらが)うための詭弁(きべん)でしかなかった。

——まったく、救いようがないのは私の方ね。この子は人の命に尊厳を見出(みいだ)して、その重荷を支えることに必死になっているに過ぎない。尊厳すら消し炭に変えていたような私が同情を寄せようだなんて、烏滸(おこ)がましいにも程がある。


 罪を重ねても(なお)真っ当に生きようと藻掻(もが)き苦しむ青年の影を前に、ドールは胸の内から自己嫌悪(けんお)(あふ)れ出すのを感じつつ、(わび)しく(つぶや)くように言い聞かせた。


「さっきも言ったでしょう。悪魔を宿した私は死んで当たり前だった。悪魔に(そそのか)されるままに大勢の命を奪った私は…いいえ、悪魔を顕現させるまでに悪徳を(はぐく)んだ私は、罰せられて当然だったのよ。君はその罰を執行する役目を担っていただけ。君が責任を感じることはないの。だから……」


『それは……違う!!』



 だが青年は突然何か敏感に反応したように声を荒げ、ドールの台詞(せりふ)(さえぎ)った。


貴女(あなた)は…最初から()められていたんだ! ラ・クリマスの悪魔の撲滅(ぼくめつ)目論(もくろ)んでいた秘密裏の組織が、貴女(あなた)がディレクタティオの大聖堂で厄災を引き起こすことを計画の第一段階として組み込んでいて…貴女(あなた)はその計画通りに悪徳を助長させる境遇へと誘導されていたんだ。』

貴女(あなた)は何も悪くなんかない…悪いのは、意図的に悪徳を(そそのか)した連中だ。(もっと)もらしい大義のために、罪の所在も意識も集団で(ぼか)そうとする俺達の方なんだ!』


 ドールは青年が強める語気に驚きつつも、彼が明かした真実はイリア・ピオニーがこの世界で語った内容と整合して、難なく受け止めることが出来ていた。
 そして彼が属しているであろう組織以外にもそのような集団が()(きた)りに存在することを()み締め、沈んだ声音で主張を(かわ)していた。


「それなら尚更(なおさら)私は、犠牲になるに相応(ふさわ)しい人間だったと思うわ。生まれつきの白髪(はくはつ)()み嫌われて、どんなに隠しながら他人(ひと)と接しようとしても確かな疎外感(そがいかん)が必ず生まれて…ずっと孤立していた私が死んだところで、誰も(いた)む人なんていなかった。」

「君の言う計画は、ドランジア議長がこの国の平和のために(くわだ)てていたものなんでしょう。私は自分が殺された本当の理由を後から知ることが出来(でき)ただけでも、満足しているのよ。」


 それでも影の青年は(おぼろ)げな輪郭(りんかく)を震わせながら、獅噛(しが)み付くようにドールに問いかけた。


『…なんでだよ…なんでそうなるんだよ……。大体、どうして白髪(はくはつ)他人(ひと)から()み嫌われる理由になるんだよ……!?』


「どうしてって…白髪(はくはつ)老衰(ろうすい)(あかし)だからでしょう。生まれつき頭髪が老いているなんて不吉。だから貴女(あなた)は不吉の象徴。それが転じて悪魔の子だの何だのって散々言われ続けてきたのよ。当たり前に(わか)ることでしょう?」


『そんな迷信なんて聞いたことがない…髪の色なんて(みな)(みな)(まった)く同じじゃないだろ!? 確かに白髪(はくはつ)の人を貴女(あなた)以外に見かけたことはないけど、差別的な因習を見聞きしたこともない!』

『あの夜俺が廃墟の中で見つけたあんたはとても恐ろしく感じたけど、それは不吉の象徴だったからじゃない! (むし)ろあんたの長い白髪(はくはつ)は…その…神秘的な美しさがあると思った……!』



 青年は(わめ)くように訴えかけながらも、徐々に恥じらい始めたのか威勢が(しぼ)んでいた。

 一方のドールは、青年が容易(たやす)く常識を打ち破るどころか引け目であるはずの白髪(はくはつ)に魅力を見出(みいだ)したことが信じられず、驚愕(きょうがく)のあまり紅潮(こうちょう)して数歩たじろいでいた。
 (かつ)て自分を(かば)ったアメリアでさえ、直接的に長所として励ましてくれたような覚えがなかった。


「…そんな、急にお世辞(せじ)を言われても…。」


『お世辞(せじ)じゃない、あのときの俺は確かにそう感じていた。…それよりも本当に()み嫌われるような外見っていうのは、こういうことを指すんじゃないのか。』


 青年ははっきりと言い返すと、左手を掲げて前髪を()き上げた。彼が隠していた左目はドールを呑み込んだ大蛇と同じ黄金色(こがねいろ)をしており、一面黒い影で出来(でき)た少年の顔の中で(あや)しい輝きを放っていた。

 (あたか)もそこだけ()め替えられたかのような異質さにドールは絶句し、それが本当に実在する1人の人間の姿ならば(うと)まれて当然だろうと思わずにはいられなかった。

 だが彼はその引け目について思い悩んでいるわけではないことに気付くと、(ざわ)めく心を落ち着かせながら言い聞かせた。


「…でも、君は組織に属していて、(ひと)りじゃないんでしょう?」


『ただ利害関係があるだけだ。(すべ)てが終われば、俺はまた(ひと)りになる。』


「そうじゃなくて…ちゃんと他人(ひと)と上手くやれるってことよ。他人(ひと)の良い所を見つけて、他人(ひと)を思い()って、他人(ひと)に対して罪悪感を(いだ)くことが出来(でき)る。どんなに重たい(ごう)を背負っていても、外見に自信がなくても、それが出来(でき)るなら人は何処(どこ)へでも歩いていけるし、いつしか誰かが支えてくれるものだと思う。」

「私にはそれが出来(でき)なかったけど、君は違う…自由なんだよ。私の命を奪ったがために立ち止まっているのなら勿体無(もったいな)いことだと思う。だから出来(でき)ることなら私は、君がもう一度歩き出せるように背中を押してあげたいな。」



 生前は修道女でありながら誰1人として助け、導くことのなかったドールであったが、ここに来て初めて真っ当な慈悲を与えられたような気がして清々(すがすが)しい満足感を得ていた。
 この青年が白髪(はくはつ)()み嫌わず

扱ってくれたことで、(ようや)く自信を持った励ましを贈ることが出来ていた。

 だが影の青年は()だどこか釈然としない様子で、不満げにドールに問いかけた。


貴女(あなた)が列挙したことは、貴女(あなた)も充分に出来(でき)る人だと思う。…貴女(あなた)には、何か人生でやりたいことはなかったんですか。何も未練はなかったんですか。そういうものまで全部押し殺して、背中を押してほしいだなんて思えません。』


 強情に食い下がる青年に対してドールは一瞬(あき)れそうになり、戸惑うように口籠(くちごも)った。(すで)に現実に生きていたこと自体が遠い昔のようで、一度でも夢や憧れを(いだ)いていたかどうかすら定かでなかった。


「生前やりたかったことなんて…何も……。」


 だが青年の震えた声音はドールの遠い昔に埋もれていた記憶をなぞり、同じような問いかけを与えられていた過去を思い起こさせた。他でもないアメリアが(しわが)れた声音で、ぶっきらぼうに投げかけた会話の一端であった。


『…おまえももう大人になるんだから、いつまでも(みじ)めな環境に甘んじる必要なんてないはずだろう? この世界にはおまえの白髪(はくはつ)を何とも思わず受け入れてくれる場所がいくらでもあるはずさ。…おまえは将来やりたいことの1つもないのかい?』



——あのとき、私は何て答えたんだっけ。


 『悲嘆(ひたん)』に(おぼ)れて意識が曖昧(あいまい)になり、思い出せなかった(はかな)い願いは、今になって当たり前に存在するかのようにドールの胸の内に(よみがえ)った。


「私は……吟遊(ぎんゆう)詩人になりたかった。」



 静かに(つぶや)くドールを前に、青年はきょとんとした反応を見せた。


『…吟遊(ぎんゆう)詩人?』


「そう…大陸中を各地の教会(づた)いに(めぐ)り歩いて、預言者グレーダンの数々の逸話(いつわ)を聴かせて回りたかった。グレーダン教団は古くからある宗教団体だからか、(よわい)20にならないと成人扱いしてくれなくて…20になれば、所属する修道院を出て各地の教会に伝道する役目を受けられていたのよ。」

「私は幼い頃からずっと(ひと)りで大聖堂の図書室で本を読み(あさ)ってて…いつしか本に(えが)かれた(いろ)んな景色をこの目で見て回ることを夢見ていたの。伝道に(あやか)るという形ではあるけど、本当は出来(でき)ることなら教団の枠組みや(しがらみ)(とら)われずに、自分の足で自由にこの世界を……。」



 ドールは(あふ)れんばかりの遠い記憶を青年に打ち明けていると、不意に両頬(りょうほお)を何かが(つた)い流れていく感覚を察した。

 次に息を吸い込んだときには鼻の奥が不規則に(つか)え、瞳の奥に突き刺すような痛みを感じた。


——あれ…どうして今になって、涙なんか……。


 どんなに『悲嘆(ひたん)』を振り()いても湧き出すことのなかった涙が、今になって決壊したように(あか)い瞳から(あふ)れていることに、ドールは動揺を隠せなかった。()うに忘れていた衝動に耐え切れず、恥ずかし気もなくその場に崩れて泣き(じゃく)った。


——ああ、これが

悲嘆(ひたん)』なんだ。悪徳のせいじゃない、自分で自分を諦めて、殺したことで生まれる正しい感情なんだ。本当は私…ちゃんと生きたいって思ってたんだ。


 そして鼻を(すす)りながらも(うる)んだ視界の中で、蒼炎(そうえん)灯火(ともしび)の下で揺らめく青年の影を捉え、切なる願いを(たく)そうとした。


「…お願いです、『死神さん』。私の代わりに、私の分まで、生きている限りその世界で色んな景色を見てください。私を殺した事実が重荷となってこれからも君を苦しめ続けるのなら、その荷と共に私を連れて行ってください。そうすればきっと…君も私も救われるでしょう。」



 (もや)がかったような少年の表情を識別することまでは叶わなかったが、青年は今度こそ安堵(あんど)したようで、穏やかにドールに(こた)えた。


『ありがとうございます。…それと、俺は『死神さん』じゃなくて、カリムって名前なんです。』


 あまりにも遅すぎた自己紹介に、ドールの口元からは(むせ)たような苦笑いが(こぼ)れた。


「そういえば、お互い全然素性(すじょう)も知らないまま話していたのね。…私の名前はドール。もう死んじゃった身だけど、これから(よろ)しくね。」
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登場人物紹介

【ドール】齢19の修道女。

▶ラ・クリマス大陸北西部にあるディレクト州の歴史ある街ディレクタティオで暮らしており、グレーダン教の総本山であるディレクタティオ大聖堂に連なる修道院に属している。

▶生まれつきの白髪が忌み嫌われ、赤子の頃に大聖堂に託された孤児だった。

▶対人関係が希薄なため幼い頃から本の虫であり、好奇心が旺盛。

▶その性格が災いしてか、あることをきっかけに異端者、廻者として糾弾されることになり、その理不尽な仕打ちを機にラ・クリマスの悪魔を顕現させてしまう。

【死神】ドールの命を狙い対峙する謎めいた人物。

▶グレーダン教徒に似た紫紺のローブを纏い、真っ白で無機質な仮面を着けている。

▶グレーダン教に代々継承されてきた司教杖に似た、武器と言い難い杖を構える。

▶その先端に着装された黒い鉱石からは、悪魔を脅かす不思議な力が醸し出されている。

▶「死神」という名称は、ドールが便宜上付与したものにすぎない。

【ネリネ・エクレット】齢16の貴族令嬢。

▶大陸南東部ヒュミリア州、2大交易都市の1つであるメンシスを治める領主ホリー・エクレットの1人娘。

▶穏やかで物腰柔らかな性格だが、箱入り故に世間知らずである。艶のある金髪の持ち主。

▶だが突如メンシスを襲った猛烈な竜巻で被災し、親も家も失う。

▶街の再建を大陸軍に任せて親戚の元へ身を寄せることになるが、その言動はまるで別人になったようであった。

【カリム】大陸議会の事務官を名乗る青年。

▶年齢はネリネと同じくらいと思われ、左目を前髪で隠しており陰気そうな印象である。

▶身に付けている赤を基調としたシャツと議会所属を表すバッジを留めた黒地のチョッキは所定の制服のようなもの。

▶馬車に乗りメンシスを去るネリネに随行し、竜巻被害について聴取しようとする。

▶大陸北東部の孤児院の出身で、過去に何か苦い経験をしているようである。

【リリアン・ヴァニタス】ヴァニタス海賊団の若き首領。

▶巻き毛の金髪が特徴で、体術では随一の戦闘力を持つ。

▶急逝した父の遺言により、齢16にして首領の座を継承しているが、経験が乏しく未熟であるため、父の右腕であった幹部ローレンの助力を得ながら海賊団を存続させている。

▶海賊団はアルケン商会という善良な団体を騙る裏で、密輸品などの取引を働いていた。

【ロキシー・アルクリス】齢17の女使用人。

▶大陸中央部プディシティア州にあるセントラム農業盆地の領主クレオーメ・フォンス伯爵の別邸に仕える。

▶物心ついた頃から母レピアと共に別邸に棲み込みで従事しており、あまり外界との接触がない。

▶長い藍色の髪をしており、やや陰鬱な印象とは裏腹に齢離れした恵体の持ち主。

▶使用人長でもあるレピアとともに好からぬ秘密を抱えており、大陸軍側からの詮索を敬遠している。

【ルーシー・ドランジア】大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長。

▶すらりとした上背に長い黒髪を湛え、銀縁の眼鏡の奥に黄金色の瞳を覗かせる齢28の女性。

▶メンシス港の機能停止を受け、セントラムの生産品の出荷計画などを見直すべく部隊を牽引しフォンス邸別邸を訪れるが、密かに別の目的も念頭にあるらしくロキシーに探りを入れる。

▶飄々として掴みどころのない性格。身内も大陸議会の関係者であるらしい。

【ステラ・アヴァリー】齢24の孤児院管理人。

▶大陸北東部カリタス州の新興都市グリセーオで大陸軍が設立し運営を委託するジェルメナ孤児院に従事している。

▶領主キーウィ―・アヴァリーの1人娘であり、2年前に母から管理人の立場を継承している。

▶赤みがかった茶髪を三つ編みで束ねている。世話焼きで責任感や正義感が強い。

▶過去に厄災を経験して以来、1人でも多くの親なき子の命を護りたいと身を粉にして働いているが、結果としてこれ以上収容できないほどの孤児を拾ってしまい、食糧などの遣り繰りに頭を悩ませている。

【リオ】かつてジェルメナ孤児院で暮らしていた少女。

▶物語開始時点から7年前、グリセーオ西端を流れる川に独り漂着していたところを救助されたが、虚弱体質に陥っていたためジェルメナ孤児院に引き取られ静養することになる。

▶救助以前の記憶をほとんど引き出すことが叶わず、当時は齢7,8程度と推測されていた。

▶2年後に『強欲の悪魔』を顕現させてしまい、命を落としている。栗毛と鈍色の瞳が特徴。

【ピナス・ベル】伝説の瑠璃銀狼の血を引くラピス・ルプスの民の少女。

▶外見は齢12,3ほどだが、人間と比べて齢を重ねる間隔が緩やかで、既に30年生きている。

▶大陸北部アヴスティナ連峰の中腹にあるクラウザという集落で同胞と共に密かに暮らしている。

▶とある目的を果たすため『貪食の悪魔』を宿して鳥の姿となり、大陸西部へ向かっている。

▶7年前のとある出来事で人間側との軋轢を経験し、その際に『貪食の悪魔』を宿した母を失っているほか、サキナとも面識をもっている。

【オドラ―・ベル】ピナスの祖父であり、クラウザの集落を束ねる長老。

▶齢200を超え、ラピス・ルプスの民の特徴である銀色の毛並みは灰色にくすみ、全身毛むくじゃらである。

▶大陸の人間が内戦時代を経て現代に至るまでの歴史だけでなく、千年前から続く厄災についても口伝により知識を蓄えている。

▶人間と対立する気はないが、緩やかに数を減らしてく一族の行く末を憂い、『貪食の悪魔』を同胞から生み出さぬためにも、人間の手を借りてでも種を存続させるべきか思案している。

【クランメ・リヴィア】齢28の博物館職員兼調査研究員

▶大陸西部グラティア州、首都ヴィルトス近郊のアーレア国立自然科学博物館に従事している。

▶やや小柄で、分厚い眼鏡と象牙色の髪が特徴。大陸南西部ミーティス州の農村出身で、独特な訛りで喋る。

▶ルーシーとはグラティア学術院で同期生の関係だが、当時はあまり好ましい印象を抱いていなかった。

▶ラ・クリマスの悪魔の『封印』に関わるとある仕事を引き受けている。

【イリア・ピオニー】齢26にして大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長を務める軍人。

▶桃色がかった金髪と強い正義感の持ち主。国の平和のため心身を尽くそうとする厳格な性格。

▶現代に至る国内軍事を統括し続けた由緒あるピオニー家の娘。父ジオラスは元帥の地位にあり、2人の兄も同じく軍人である。

▶十代のころに出会ったルーシーの理想に感銘を受け、励まされたことでその背中を追い続けている。

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