第8話 生きるすべて

文字数 5,067文字

 暗闇を藻掻(もが)くように引き()くと、カリムは見知らぬ薄暗い部屋のベッドで半身を起こしていた。

 (かたわ)らの窓からは壊月彗星(かいげつすいせい)(まぶ)しい光が差し込み、真新(まあたら)しそうな家具や絨毯(じゅうたん)(つや)やかに照らしていた。
 室内はジェルメナ孤児院でリオと過ごした空間よりも一回りは広く、(いや)しい孤児1人を寝かせるには余りある待遇であった。

 
 カリムは(たちま)ち居た(たまれ)れない思いと現状把握のためにベッドから出ようとしたが、時を同じくして部屋の扉が開き、(あか)を基調とした軍服を(まと)った女性が入ってきた。


「あら。よかった、もう気が付いたのね。」


 その女軍人は手元のトレーに水の入ったグラスと軽食を載せており、部屋の照明を()けるとベッドの(そば)へ歩み寄って静かに机上に下ろした。

 ルーシー・ドランジアに似た風貌(ふうぼう)だったが、長い黒髪は全体的に藍色がかっていて上背(うわぜい)もそれほどなく、(つぶ)らで澄んだ黒い瞳を宿していたことから、カリムは(いく)らか柔和(にゅうわ)な印象を(いだ)いた。


「国土開発維持部隊、第一部隊員のナンジ―・レドバッドよ。今日のことは、本当に残念な出来事(できごと)だったわね。」


「…今日のこと…?」


「そうよ。厄災が収束してから6時間くらいかな。時刻は…19時半ね。」


「…一体、何が起こったんですか…?」



 ベッドの上で(うつ)ろな表情を浮かべて尋ねるカリムを前に、ナンジ―は椅子に腰かけて一連の事件を丁寧(ていねい)に打ち明けた。

 ジェルメナ孤児院から3,4メートルほどの高さに青白い(つる)(かたまり)が浮かび、その下から生えるように蔓延(はびこ)(おびただ)しい(つる)が、孤児院を始め周辺の住民を家屋ごと呑み込みながら延伸していたこと。
 その厄災は30分もかかることなく終息し、膨大な(つる)即座(そくざ)(ちり)と化して跡形もなく消滅したこと。

 ステラを始め孤児院の子供達や近隣住民など数十人が(つる)に取り込まれた影響で衰弱していたが、総じて命に別状はなく応急的に設けられた救護拠点にて静養していること。
 唯一

宿

であったリオだけが見当たらず、身に付けていた衣類や銀札を(のこ)して忽然(こつぜん)と消失してしまったことをカリムは聞かされた。

 ナンジ―が配膳(はいぜん)した机上の(そば)には、綺麗(きれい)(たた)まれたその遺品が置かれていた。


「…どうして俺だけ、こんなに良いベッドに運ばれているんですか。そもそもここは何処(どこ)なんですか。」


「この部屋はグリセーオの大陸軍駐屯地(ちゅうとんち)にある客間の一室よ。君が(ひと)り運び込まれた理由は知らないけれど、他の被災者よりずっと被害が軽微(けいび)だったことは確かなはずよ。」

「…とはいえ体力を奪われていることには変わりないだろうから、気が進まなくても最低限の飲み食いはしておいてね。」


 ナンジ―は淡々と答えたのち、立ち上がって椅子を元あった位置へと戻した。だがカリムにはその挙動が一転して(わざ)とらしく応答を打ち切ろうとしているように感じられて、不満を(あら)わにするようにナンジ―の背中に言葉を投げかけた。


「どうして俺みたいな悪者に、こんな施しをするんですか。」


「…君が何をしてきたのかは知らないけれど、(たと)え刑務所に収容される大罪人でも、寝床(ねどこ)と食事は与えられるものよ。」


「じゃあ、質問を替えます。俺はこのあと、どうなるんですか。」


 カリムは凄惨(せいさん)な厄災とやらが起こったとはいえ、自分がグリセーオで積み重ねてきた罪が不問にされることはないと覚悟していた。
 罪人を隔離するには快適すぎる部屋だったが、大陸軍の拠点であるならば拘留(こうりゅう)されているも同然であると考えていた。


「悪いけど、私は君が被災したということ以外は何も知らされていないの。」


「それなら俺をここに運び込んだ人を呼んでもらえませんか。(いく)つか()きたいことがあるんですが。」


 ナンジ―は(しら)を切っている可能性もあり、これ以上の質問が期待出来(でき)ないことは予想通りであった。
 (ゆえ)にカリムは(くら)眼差(まなざ)しで次なる行動を見据えていたが、不可解な待遇であったためにどれだけの要望が通用するかは未知数であった。

 それでもナンジ―は(まゆ)を動かすことなく、数秒の間をおいた後カリムに(しば)し待つよう言い残して退室した。


 カリムは無音の空間でベッドに鎮座(ちんざ)している自分の姿が馬鹿らしく思えて、ナンジ―が座っていた椅子を引き出し、腰を下ろしていた。

 体調に支障はなかったものの食欲はなく、グラスの水を口に含ませるに(とど)めた。生温(なまぬる)い一筋が胸の内に大きく空いた(あな)(よぎ)り、腹の底へと()ちていく様を(むな)しく感じていた。



 部屋の時計が20時を回った頃、再び扉が開いてカリムが待ち()びた人物——ルーシー・ドランジアが姿を現した。
 
 そして何ら言葉を発することなく机を挟んでカリムの反対側の椅子に腰かけると、脚を組みながら蛇のような黄金色(こがねいろ)の瞳でカリムの(うつ)ろな表情を捉えた。


態々(わざわざ)この私を呼び出してまで、何を()こうと言うんだ。」


「あの昼間に起こった厄災とかいう現象は誰の仕業(しわざ)なのか…リオをあんな目に()わせた奴は誰なのか教えてください。」


 対するカリムは、目の前から放たれる圧倒的な雰囲気に(ひる)まぬよう両拳を強く握り締め、突飛(とっぴ)な質問をぶつけていた。
 最も知りたい疑問の答えを得るにはあまりにも段取りとして稚拙(ちせつ)であったが、目的のための手段を真っ先に(つか)んで押さえることが何よりも優先されていた。

 案の(じょう)ルーシーは姿勢を変えず、鼻で笑ったように切り返してきた。


「おまえはあくまで厄災を、第三者が意図的に引き起こしたものだと考えているのか?」


「はい。だって理不尽じゃないですか、こんなの。」


 カリムが小さく答えると、ルーシーは今度こそ短く笑い声を口から(こぼ)した。力無く(あき)れたような、乾いた声音だった。


「ああ、理不尽だとも。厄災を引き起こすラ・クリマスの悪魔は千年近く前にこの大陸に()ちて以来、女性にしか顕現したことがないのだ。それが遺伝子上の性質に()るものなのかはまるで定かではないが、少なくともおまえが肩代わり出来(でき)る余地など最初からなかった。」

「言い換えるなら、この地に住む女性が永劫(えいごう)(のが)れられない呪いのようなものだ。(もっと)も、現代では古い伝承のような扱いで大抵は忘れ去られているがな。」


 ルーシーが平然と並び立てる言葉は、カリムにとって聞き慣れないものばかりであった。

 だがリオが犠牲になった一部始終と重ね合わせると、何か超越的な存在が自分の(かたき)になっていることは理解出来(でき)た。他にも尋ねたいことは山ほどあったが、ルーシーの表現をそのまま転用する形で強引に話を進めていた。


「それなら、その悪魔はどうやったら殺せますか。」


 その一言には、流石(さすが)のルーシーも一瞬表情を強張(こわば)らせたように見えた。


「それを()いたところで、どうするつもりだ?」


「あのとき俺に投げ込んできた杖があれば出来(でき)るんですよね? 『宿主』の胸元に突き付ければ厄災は(しず)められる…つまり、悪魔を殺すことが出来(でき)るんですよね? でも俺はあのとき、結局リオに杖を向けることが出来(でき)なかった…それがどういう結果になるのかを恐れて、何も出来(でき)ずリオを見殺しにしてしまったんです。」

「だから俺は、復讐(ふくしゅう)しなきゃならない。リオに理不尽な死を下した悪魔を殺さないと、自分を(ゆる)すことも出来(でき)ないんです。だからお願いします…どうか俺に、悪魔を殺す(すべ)を教えてください…!!」



 孤児の分際(ぶんざい)で、不躾(ぶしつけ)で生意気な懇願(こんがん)をしていることは自覚していた。

 机に(ひたい)をぶつけかねないほどに(こうべ)を垂れても、どんなに蒼白(そうはく)面持(おもも)ちで悲痛な声音を演出しても、同情で話が上手く進むなどとは毛頭(もうとう)期待していなかった。

 それでも、他に何も対価を用意できない以上は態度を前面に押し出すしか選択肢を持ち得なかった。



「…おまえがはっきりと物事を考えられるように、3つほど教えてやる。」


 するとルーシーが溜息混じりに、机上に突っ()すような姿勢のカリムに向けて語り掛け始めた。


「まず1つ目。ラ・クリマスの悪魔が顕現した者は、その命と魔力が一体化して不可分になる。(すなわ)ち、例の杖を『宿主』に突き付ければ悪魔を(はら)うことは出来(でき)るが、同時に『宿主』も命を失うことになる。」

「おまえが杖を有効に使えたとしても、リオという娘を失う顛末(てんまつ)に変わりはなかった。あの幼い身体では到底悪魔の力を制御しきれず、長く持たなかったのだろう。だから、そのことについておまえが後悔を(いだ)くことは的外(まとはず)れというものだ。」


 カリムはその無慈悲な補足に思わず頭を上げて目を見開いたが、ルーシーは間髪(かんぱつ)を入れずに話し続けた。


「2つ目。例の杖は悪魔を(はら)い厄災に抗うことは出来(でき)るが、悪魔そのものを滅ぼすことは出来(でき)ない。せいぜい一時的に捕らえ(とど)めておくことで精一杯だ。ラ・クリマスの悪魔は(およ)そ千年に(わた)りこの大陸に()み続け、悪徳を(つの)らせた者に宿って厄災を引き起こし、宿主が壊れればこの地に(かえ)って次なる顕現を待つのだと言われている。」

「そして3つ目に、あの杖はこの世に2つと存在しない道具だ。とはいっても重要なのは先端に着装(ちゃくそう)された隕石という希少鉱石であって、(つか)の部分はただの飾りに過ぎないがな。現実問題として悪魔と対峙(たいじ)出来(でき)る者は、その杖を託された1人でしかないというわけだ。」

「…さてここまで聞いて、おまえは()だ無謀な復讐(ふくしゅう)を望むというのか?」



 ルーシーの口振りは相変わらず淡々としていたが、カリムは節々(ふしぶし)で言葉以上に強い拒絶を——悪魔についてこれ以上関心を持たせたくないというあからさまに突き放す意思を感じていた。

 悪魔を殺す(すべ)(わか)らず、悪魔に刃向かえる者は選ばれし1人のみだが、そこに挑戦することすら承服しかねているように聞こえた。

 復讐(ふくしゅう)を果たすには(すさ)まじいほどに気の遠くなる話であることは理解していたが、カリムは(むし)ろ反発するようにルーシーへ()らい付き続けていた。


「あなたの部下になれれば…部下として悪魔を探し続ければ、いつかは復讐(ふくしゅう)を果たせると考えていいんですよね?」


「そんな保証はどこにもないし、そんな動機で軍人を志願されても迷惑なだけだ。」


「じゃあどうしてあなたは唯一悪魔と戦える武器を持っていて、厄災に捕らわれた俺にあんなに的確な指示を出せたんですか!? いくらあなたが優秀な軍人でも、そんなに重要な武器を好き勝手に持ち歩いていいはずがない。悪魔がこの国を揺るがすのなら、大陸軍で対策していないはずがない。組織のことはよく知らないけど…ちゃんと悪魔と戦うための部隊みたいなものがあるんじゃないんですか!?」


 カリムは(まく)し立てるうちに自然と椅子から起立していたが、否定される間を与えぬよう続け様に言葉を吐き出した。


「俺は小さい頃の記憶が無くて、両親の名前も顔も思い出せなくて、色んな所を(ひと)り転々としなくちゃならなくて…どうして生きてるのか、何のために生きてるのか(わか)らない(から)っぽな日々を送っていたんです。でも似たような境遇で、俺以上に身体が弱い子の世話をするようになって…初めて家族のような関係を持てた気がしていたんです。あの子のために尽くすことが、俺の(すべ)てだったんです。」

「その想いが空回りして(あやま)ちも沢山(たくさん)犯したけれど、それを(つぐな)ったうえで、将来的に俺を悪魔と戦わせてください。大切な家族の無念を晴らす機会を、俺にください。どうか…お願いします!!」


 経験したことがないほどに顔が紅潮(こうちょう)し、全身は発熱したかのように湧き立っていた。ここまで感情を大袈裟に吐露(とそ)したことはなく、反動で口元が(かす)かに震えていた。


——無様(ぶざま)(すが)り付こうとしているのは(わか)ってる。でもリオを失って、昔のように何の理由も感じられない(から)っぽの毎日が戻って来るのは嫌だ。理不尽な現実を大人しく受け入れるのが嫌だ。だからどんなに(みじ)めで失礼でも、ここで手を振り払われるわけにはいかない…!



 (しばら)くの間心臓の高鳴る音だけが反響し、カリムは再び机に頭を突き付けながらルーシーの返事を待っていた。


「1つ勘違いしているようだが…おまえがこの街で繰り返した窃盗は何ら捜査すらされていない。私への未遂(みすい)も所持金と引き換えに不問になっている。(ゆえ)に何も(つぐな)いを立てる必要はない。まぁ、罪の意識を(かえり)みることは人として正しいことではあるがな。」


 カリムが再び目を丸くして身体を起こすと、ルーシーは(すで)に立ち上がり退室しようと背中を向けていた。
 そしてカリムが慌てて追い(すが)ろうと動き出すのを察すると、振り向き(ざま)黄金色(こがねいろ)の冷ややかな視線を寄越(よこ)しながら言い放った。


「おまえが自己満足ではなく、他人(ひと)の為に悪魔と対峙(たいじ)すると言うのであれば、そのための組織に加わるがいい。だが、子供だからといって容赦はしない。戦力として期待出来(でき)なければ、早々に切り捨てるだろう。それでも覚悟があるのなら、これから詳しいことを説明してやる…付いてこい。」
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登場人物紹介

【ドール】齢19の修道女。

▶ラ・クリマス大陸北西部にあるディレクト州の歴史ある街ディレクタティオで暮らしており、グレーダン教の総本山であるディレクタティオ大聖堂に連なる修道院に属している。

▶生まれつきの白髪が忌み嫌われ、赤子の頃に大聖堂に託された孤児だった。

▶対人関係が希薄なため幼い頃から本の虫であり、好奇心が旺盛。

▶その性格が災いしてか、あることをきっかけに異端者、廻者として糾弾されることになり、その理不尽な仕打ちを機にラ・クリマスの悪魔を顕現させてしまう。

【死神】ドールの命を狙い対峙する謎めいた人物。

▶グレーダン教徒に似た紫紺のローブを纏い、真っ白で無機質な仮面を着けている。

▶グレーダン教に代々継承されてきた司教杖に似た、武器と言い難い杖を構える。

▶その先端に着装された黒い鉱石からは、悪魔を脅かす不思議な力が醸し出されている。

▶「死神」という名称は、ドールが便宜上付与したものにすぎない。

【ネリネ・エクレット】齢16の貴族令嬢。

▶大陸南東部ヒュミリア州、2大交易都市の1つであるメンシスを治める領主ホリー・エクレットの1人娘。

▶穏やかで物腰柔らかな性格だが、箱入り故に世間知らずである。艶のある金髪の持ち主。

▶だが突如メンシスを襲った猛烈な竜巻で被災し、親も家も失う。

▶街の再建を大陸軍に任せて親戚の元へ身を寄せることになるが、その言動はまるで別人になったようであった。

【カリム】大陸議会の事務官を名乗る青年。

▶年齢はネリネと同じくらいと思われ、左目を前髪で隠しており陰気そうな印象である。

▶身に付けている赤を基調としたシャツと議会所属を表すバッジを留めた黒地のチョッキは所定の制服のようなもの。

▶馬車に乗りメンシスを去るネリネに随行し、竜巻被害について聴取しようとする。

▶大陸北東部の孤児院の出身で、過去に何か苦い経験をしているようである。

【リリアン・ヴァニタス】ヴァニタス海賊団の若き首領。

▶巻き毛の金髪が特徴で、体術では随一の戦闘力を持つ。

▶急逝した父の遺言により、齢16にして首領の座を継承しているが、経験が乏しく未熟であるため、父の右腕であった幹部ローレンの助力を得ながら海賊団を存続させている。

▶海賊団はアルケン商会という善良な団体を騙る裏で、密輸品などの取引を働いていた。

【ロキシー・アルクリス】齢17の女使用人。

▶大陸中央部プディシティア州にあるセントラム農業盆地の領主クレオーメ・フォンス伯爵の別邸に仕える。

▶物心ついた頃から母レピアと共に別邸に棲み込みで従事しており、あまり外界との接触がない。

▶長い藍色の髪をしており、やや陰鬱な印象とは裏腹に齢離れした恵体の持ち主。

▶使用人長でもあるレピアとともに好からぬ秘密を抱えており、大陸軍側からの詮索を敬遠している。

【ルーシー・ドランジア】大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長。

▶すらりとした上背に長い黒髪を湛え、銀縁の眼鏡の奥に黄金色の瞳を覗かせる齢28の女性。

▶メンシス港の機能停止を受け、セントラムの生産品の出荷計画などを見直すべく部隊を牽引しフォンス邸別邸を訪れるが、密かに別の目的も念頭にあるらしくロキシーに探りを入れる。

▶飄々として掴みどころのない性格。身内も大陸議会の関係者であるらしい。

【ステラ・アヴァリー】齢24の孤児院管理人。

▶大陸北東部カリタス州の新興都市グリセーオで大陸軍が設立し運営を委託するジェルメナ孤児院に従事している。

▶領主キーウィ―・アヴァリーの1人娘であり、2年前に母から管理人の立場を継承している。

▶赤みがかった茶髪を三つ編みで束ねている。世話焼きで責任感や正義感が強い。

▶過去に厄災を経験して以来、1人でも多くの親なき子の命を護りたいと身を粉にして働いているが、結果としてこれ以上収容できないほどの孤児を拾ってしまい、食糧などの遣り繰りに頭を悩ませている。

【リオ】かつてジェルメナ孤児院で暮らしていた少女。

▶物語開始時点から7年前、グリセーオ西端を流れる川に独り漂着していたところを救助されたが、虚弱体質に陥っていたためジェルメナ孤児院に引き取られ静養することになる。

▶救助以前の記憶をほとんど引き出すことが叶わず、当時は齢7,8程度と推測されていた。

▶2年後に『強欲の悪魔』を顕現させてしまい、命を落としている。栗毛と鈍色の瞳が特徴。

【ピナス・ベル】伝説の瑠璃銀狼の血を引くラピス・ルプスの民の少女。

▶外見は齢12,3ほどだが、人間と比べて齢を重ねる間隔が緩やかで、既に30年生きている。

▶大陸北部アヴスティナ連峰の中腹にあるクラウザという集落で同胞と共に密かに暮らしている。

▶とある目的を果たすため『貪食の悪魔』を宿して鳥の姿となり、大陸西部へ向かっている。

▶7年前のとある出来事で人間側との軋轢を経験し、その際に『貪食の悪魔』を宿した母を失っているほか、サキナとも面識をもっている。

【オドラ―・ベル】ピナスの祖父であり、クラウザの集落を束ねる長老。

▶齢200を超え、ラピス・ルプスの民の特徴である銀色の毛並みは灰色にくすみ、全身毛むくじゃらである。

▶大陸の人間が内戦時代を経て現代に至るまでの歴史だけでなく、千年前から続く厄災についても口伝により知識を蓄えている。

▶人間と対立する気はないが、緩やかに数を減らしてく一族の行く末を憂い、『貪食の悪魔』を同胞から生み出さぬためにも、人間の手を借りてでも種を存続させるべきか思案している。

【クランメ・リヴィア】齢28の博物館職員兼調査研究員

▶大陸西部グラティア州、首都ヴィルトス近郊のアーレア国立自然科学博物館に従事している。

▶やや小柄で、分厚い眼鏡と象牙色の髪が特徴。大陸南西部ミーティス州の農村出身で、独特な訛りで喋る。

▶ルーシーとはグラティア学術院で同期生の関係だが、当時はあまり好ましい印象を抱いていなかった。

▶ラ・クリマスの悪魔の『封印』に関わるとある仕事を引き受けている。

【イリア・ピオニー】齢26にして大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長を務める軍人。

▶桃色がかった金髪と強い正義感の持ち主。国の平和のため心身を尽くそうとする厳格な性格。

▶現代に至る国内軍事を統括し続けた由緒あるピオニー家の娘。父ジオラスは元帥の地位にあり、2人の兄も同じく軍人である。

▶十代のころに出会ったルーシーの理想に感銘を受け、励まされたことでその背中を追い続けている。

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