第12話 復讐のその先

文字数 5,149文字


『『強欲の悪魔』についておまえに今更説明する必要はないかもしれないが、部隊共通の理解として聞いてもらいたい。悪徳に定義される『強欲』とは、生命活力という現実に他人(ひと)から奪うことが出来(でき)ないものを欲して生き(なが)らえようとすることだ。とはいえ老衰への忌避(きひ)が根源となるわけではない。障害や虚弱を負ったり重い病に罹患(りかん)するなどの背景から人並みの人生を(こいねが)うような、子供を含む若年層に悪魔が顕現する事例が多いとされている。』

『その悪徳は植物の(つる)を模して青白く具現化し、他人(ひと)を捕らえて生命活力を吸い上げ続ける。『強欲の悪魔』が引き起こす厄災とは、(おびただ)しく発生する(つる)による無思慮で無差別な蹂躙(じゅうりん)だ。』

『留意すべきは、その(つる)があくまで魔力の具現化であるために火を()べても有効打には成り得ず、かえって捕らわれた者に被害が及びかねないということだ。被災者は生命活力を奪われるとはいえ、(ただ)ちに死に至るわけではない。(むし)ろ他の厄災と比べても死に至る犠牲者は圧倒的に少ない。『強欲』の悪徳の本質は不特定多数への執着であり、拒絶ではないからだ。』


(ゆえ)に理論上は、7体の悪魔の中でも最も寿命の長い厄災だと言える。だが記録上では何日も続いたなどという事例はない。ここからは推測でしかないが、恐らく不特定多数から無差別に吸い上げる生命活力を制御し続けること自体が至難の(わざ)なのではないかと考えている…その(うつわ)が人の身体として未熟であれば尚更(なおさら)にな。』

『『強欲の悪魔』にどのように立ち向かうべきかは厄災の規模にも()るが、被災者が人質(ひとじち)同然となる以上は手荒な真似(まね)出来(でき)ない。…いや、『宿主』の受け答え次第だが、その状態を逆手(さかて)に取るという手もあるかもしれないな。』



——ラ・クリマス大陸暦999年6月27日 深夜1時頃 カリタス州グリセーオ西端・駅前集落近郊


 前日の夕刻に『強欲の悪魔』を封印したカリムとサキナは、翌朝(はつ)の蒸気機関車で首都ヴィルトスに戻るために最寄りの集落を訪れていた。
 拠点としていたラヴォリオ州クィンクの大陸軍駐屯地(ちゅうとんち)まで馬を走らせるには時間的にも都合が悪かったため、別の部隊員に馬を預けて宿泊の宛を探し求めていた。

 だが民間の宿はいずれも厄災が起きたグリセーオの街を前に足止めされていた商人らを中心に埋まっていて空きがなく、2人は集落近郊のサルス川の(ほとり)で野宿を()いられていた。


 今宵(こよい)また一段と大きく迫る壊月彗星(かいげつすいせい)静寂(せいじゃく)を照らすなか、カリムが(うずくま)る背後ではサキナが小さな寝息を立てていた。
 交代で眠りに就くことを決めた上で、『強欲の悪魔』に拘束され活力を奪われていたサキナを先に休ませていた。

 その間カリムは周囲の警戒に当たりながらも、淡い萌黄色(もえぎいろ)の光を凍結保存した封瓶を(うつ)ろな表情で見つめていた。
 因縁である『強欲の悪魔』を『封印』出来(でき)たにも(かかわ)らず、内心の(よど)みは()けるどころかかえって(かさ)増していた。



 グリセーオで厄災が発生したという報告を聞いたのは、クィンクに到着してから2回目の朝であった。サキナと共に現地へ向かう手段は馬しかなく、到着した頃には(すで)に昼を過ぎていた。

 5年前よりも発展し拡大していたはずのグリセーオの街は一面青白い(つる)で埋め尽くされており、カリムは当時と比較にならない規模で厄災が再来した現実に思わず怖気立(おじけだ)った。
 それでも積年の本懐(ほんかい)であった『強欲の悪魔』の『封印』を今日こそ果たすべく、意を決して街に降り立とうとしていた。


 周辺一帯は大陸軍による厳戒(げんかい)態勢が敷かれ、厄災の性質に(かんが)みて合図が出るまで待機が命ぜられており、その信号弾は査察隊に(ふん)したカリムの拳銃に仕込まれていた。

 丘の上から見下ろす街は不気味なほどに沈黙していて、住民は余さず(つる)に呑み込まれたのか一切の人影が見当たらず、厄災も発達することなく静かに(うごめ)いているように(うかが)えた。

 (ゆえ)に途中の下り坂で倒れている1人の女性をカリムが発見したとき、近付こうと前のめりになった肩をサキナに強く(つか)まれた。


「待って。こんなに厄災と近いのに、捕らわれずに行き倒れてるなんて可笑(おか)しい。もしかしたら『宿主』かもしれない。」


 だがその風貌(ふうぼう)に見覚えがあったカリムは、警告を強引に振り払ってサキナを鋭く(にら)み返した。


「そんなの確かめないと(わか)らないだろ。あの人は…俺の恩師なんだよ。」



 意固地(いこじ)になって丘の上に建つ無人の小屋で女性を介抱するも、本心ではサキナと同じ疑心を(ぬぐ)い切れずにいた。
 (したた)かな彼女は『強欲の悪魔』を宿すには程遠い性分(しょうぶん)だと本心の片隅が主張しており、何よりリオの次に親しかった存在が同じ悪魔に(おびや)かされている現実を受け入れたくなかった。

 だが意識を取り戻したステラ・アヴァリーの瞳が萌黄色(もえぎいろ)に染まっていることが(わか)ると、(はかな)い希望が(つい)えたカリムは(ふさ)ぎ込むように小屋から脱出していた。
 
 サキナはその蒼白(そうはく)な表情を尻目に、紫紺(しこん)のローブと白い仮面を身に付けながら淡々と言い聞かせた。


「今回

悪魔の相手は私がする…それでいい?」


 カリムはその宣告に、(くら)眼差(まなざ)しを()せながら黙って(うなず)いた。

 サキナとは依然として真面(まとも)な会話を交わしておらず、互いに身の上話など知る(よし)もなかったが、彼女が心証を察して無慈悲に踏み込んだことには密かな感謝を寄せていた。
 単に『淫蕩(いんとう)の悪魔』に続く成果を上げたかっただけなのかもしれないが、逡巡(しゅんじゅん)を隠し切れないカリムには当て付けを(こぼ)す余裕もなかった。

 ステラは瞳の色を(のぞ)けば、5年前から少し大人びただけで何も変わらないお節介(せっかい)な『お姉ちゃん』であった。
 (ゆえ)にほんの数分間の再会など無理矢理にでも記憶から抹消して、何の別れも告げず音信不通であったままの自分へ歪曲(わいきょく)したいと切望した。

 だがそのような卑劣(ひれつ)な願い事は、背後から響いた盛大な破砕音と共に(たちま)(ひしゃ)げることとなった。




『もし貴方(あなた)他人(ひと)の言いなりになって(とが)められることのない殺しを繰り返す空っぽの人間に成り下がっているのなら、これ以上の慈悲なんてあげないんだから。』

貴方(あなた)は自分の憎悪(ぞうお)を晴らすためと言いながら、何の面識すらない人の命を奪っている。悪魔が顕現したならその命を奪われても仕方がないって、一方的な正義感を(かこ)けているだけじゃない。』

貴方(あなた)は私みたいに悪魔が顕現した人に、大陸の平和を実現するため犠牲になってくれるよう一度でも懇願(こんがん)したことがあったの?』

貴方(あなた)がやっていることは(ただ)

わ。他人(ひと)の命も、()してや自分の命すら(かえり)みることのない破滅的な所業よ。』



 静寂(せいじゃく)に包まれた深夜に、カリムの沈鬱(ちんうつ)な心ではステラが下した数々の糾弾(きゅうだん)が反響していた。

 ステラの思想は悪魔が顕現したことで、多少なりとも助長や偏重(へんちょう)が生じていたものとカリムは推察していた。
 だがあの(うごめ)(つる)(おり)の中で並べ立てられた言葉には確かに彼女の本心が——真摯(しんし)に向き合い(たしな)めたいという強固な意志が刻み込まれており、今でも(つる)(ごと)くカリムに絡んで締め付けていた。


——俺は見知らぬ他人(ひと)の命を、悪魔の『封印』という大義と価値を比較して(おとし)めていた。その大義すら、命を奪うという事実を責任転嫁(てんか)するための口実でしかない。でもステラ先生は、そんな思考に甘んじていた俺を(ゆる)そうとしなかった。

——先生は悪魔に殺されてなんかいなかった。(むし)ろ多くの人を生かそうとしていた。それが『強欲』だと(いまし)められるのなら、俺は一体何なんだ。都合よく他人(ひと)の命を奪うことの方が、よっぽど『強欲』なんじゃないのか。


貴方(あなた)がこの大陸から厄災を永遠に消し去ったとして、その活躍は世間一般に称賛されるものなの? 私を含めた(いく)つもの命の上に成り立つ貴方(あなた)の人生は、どれほど素晴らしいものになる予定なの?』


——(たと)え大義を果たしても世間は気付かないし、犠牲になった『宿主』の存在も有耶無耶(うやむや)()き消されていくだろう。でも

、きっといつまでも消えない。

——(いく)つもの他人(ひと)の人生を終わらせた上で、俺の人生に相応の価値を見出(みいだ)せるかどうかなんて想像も出来(でき)ない。それが出来(でき)ない奴には、どんな大義名分であれ他人(ひと)の命を奪う権利なんてない。『罪』って、こういうことを指すんだろうな…。



「…交代よ。まさか寝てるんじゃないでしょうね。」


 不意に肩を無造作(むぞうさ)に揺さぶられ、悄然(しょうぜん)としていたカリムは上擦(うわず)った声音で相槌(あいづち)を打った。
 気付けば見張りを交代する時間が近付いており、サキナは着実に覚醒(かくせい)していた。

 だが一方のカリムは異様に重たい腰を上げられず、封瓶の中で凍り付く萌黄色(もえぎいろ)の輝きから一向に目を放せられなかった。

 その様子を見兼ねたサキナはカリムの左側に座ると、(おもむろ)に切り出してきた。


「ねぇ、その……リオは、どんな子だったの。」


 思わぬ問いかけにカリムは目を(みは)ったが、サキナもまたどこか思い詰めたような表情をしていた。声音も張っておらず穏やかな印象を(いだ)いたので、カリムもまた落ち着いて(こた)えようと努めた。


「あんたと同じ栗色の髪と鈍色(にびいろ)の瞳をしてて、(ほが)らかだけど()が強くて甘えん坊で…孤児院に迎えられたのは7年くらい前だった。ちょうどそこのサルス川に流れ着いていたところを保護されたらしくて…。」


「そう。…あの子は助かって、貴方(あなた)に大切にされていたのね。」


「…? ……どうしてそうなる?」


「この前、見てしまったから。貴方(あなた)の首に掛けられている銀色の札を。」


 その台詞(せりふ)が、セントラムで毒に(おか)され身包(みぐる)みを()がされていた自分を連れ戻したときを指していることに気付くと、カリムは思わず苦笑いを浮かべた。一方のサキナは表情を変えることなく語り続けた。


「確かに私には、リオナという名の妹がいた。このサルス川の上流、カリタスとディレクトの境目辺りにあった小さな集落で生まれ育った。でも7年前に『貪食(どんしょく)の悪魔』に襲われて、リオは私が(かば)った拍子(ひょうし)に増水していたサルス川に滑落(かつらく)して、成す(すべ)なく流されてしまった。」

「故郷も滅ぼされて何もかもを失った私は、当時()け付けた大陸軍の隊員…今のドランジア議長に直訴(じきそ)して『(かげ)の部隊』に所属させてもらった。私から(すべ)てを奪った『貪食(どんしょく)の悪魔』を滅ぼすことだけを考えて生きてきたけど、ずっと(むな)しくて、(すさ)んだ毎日だった。」

「でもリオが生きていたと知って…少しでも幸せな日々を過ごせていたことが(わか)って、昨日はほんの(わず)かだけど(むく)われた気がした。」


 カリムは唐突(とうとつ)に身の上を明かすサキナを唖然(あぜん)として見遣(みや)りつつも、(ささ)やかに感謝を伝えられたような気がして、慌てて訂正しようと口走った。


「違う、俺は…確かに孤児院でリオの面倒を見ていたけど、それは川に流された影響で虚弱体質になっていたからなんだ。そんなリオを元気付けようと、街で窃盗を繰り返してまで食糧を買い与えて…きっとそれが(あだ)になって『強欲の悪魔』を呼び寄せてしまったんだ。俺は結局、リオを大切に出来(でき)なかった。だから何も感謝される資格なんて…。」


貴方(あなた)が責任を感じることなんてない。…全部悪魔が悪いんだから。悪魔さえいなければ、誰も悲しい思いなんてしなかったはずだから。」



 まるで励ますような口振りだったが、サキナの鈍色(にびいろ)の瞳は壊月彗星(かいげつすいせい)が照らす(かげ)で揺らめいているように見えた。

 一方のカリムも、悪魔のことを(つか)い方次第だというステラの主張が尾を引いて、その言葉を額面通りに受け取ることが出来(でき)ずにいた。


「俺もリオの命を(おびや)かした『強欲の悪魔』に復讐(ふくしゅう)したくて、偶然出会ったドランジア議長を頼って生きてきた。その復讐(ふくしゅう)は昨日果たせた…けど、何も(むく)われた気がしないんだ。親しかった人を犠牲にしたことを差し引いても、(すべ)てを悪魔に帰責することはどこか違う気がして…。」


「そう? 私には(わか)らない。…多分、私の中では()だ何も終わってないからだと思うけど。」


 カリムは曖昧(あいまい)(しぼ)んでいく台詞(せりふ)をサキナに容赦なく切り捨てられたものの、いつも通りの冷めた調子にかえって安堵(あんど)した。


——これは俺にしか(わか)らない、俺だけが考えていくべきことだ。他人(ひと)に意見を求めるようなことじゃない。


「…だよな。悪い、そろそろ寝る。」



 いい加減睡眠をとろうと、カリムは会話を切り上げて(いく)らか軽くなった腰を上げ、封瓶をサキナに任せて寝床(ねどこ)へ移動しようとした。

 するとサキナが、その背中を追うように声を掛けた。


「…ねぇ、カリム。『貪食(どんしょく)の悪魔』と対峙(たいじ)するときは、ちゃんと援護してよ。」


 カリムは初めて名前を呼ばれたことに仰天しながら振り返ったが、サキナは明後日(あさって)の方向を(なが)めたままであった。
 他意などないと思いつつも、少なくとも今日明日の自分がすべきことが見えた気がして、彼女の(ささ)やかな気遣(きづか)いに感謝すべきだと判断した。


「…残りの悪魔を(すべ)て『封印』するまで任務が終わらないことくらい(わか)ってるよ、サキナ。」


 そして静かに言い残して簡易式の寝袋に(くる)まると、あっという間に深い眠りへと(いざな)われていった。
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登場人物紹介

【ドール】齢19の修道女。

▶ラ・クリマス大陸北西部にあるディレクト州の歴史ある街ディレクタティオで暮らしており、グレーダン教の総本山であるディレクタティオ大聖堂に連なる修道院に属している。

▶生まれつきの白髪が忌み嫌われ、赤子の頃に大聖堂に託された孤児だった。

▶対人関係が希薄なため幼い頃から本の虫であり、好奇心が旺盛。

▶その性格が災いしてか、あることをきっかけに異端者、廻者として糾弾されることになり、その理不尽な仕打ちを機にラ・クリマスの悪魔を顕現させてしまう。

【死神】ドールの命を狙い対峙する謎めいた人物。

▶グレーダン教徒に似た紫紺のローブを纏い、真っ白で無機質な仮面を着けている。

▶グレーダン教に代々継承されてきた司教杖に似た、武器と言い難い杖を構える。

▶その先端に着装された黒い鉱石からは、悪魔を脅かす不思議な力が醸し出されている。

▶「死神」という名称は、ドールが便宜上付与したものにすぎない。

【ネリネ・エクレット】齢16の貴族令嬢。

▶大陸南東部ヒュミリア州、2大交易都市の1つであるメンシスを治める領主ホリー・エクレットの1人娘。

▶穏やかで物腰柔らかな性格だが、箱入り故に世間知らずである。艶のある金髪の持ち主。

▶だが突如メンシスを襲った猛烈な竜巻で被災し、親も家も失う。

▶街の再建を大陸軍に任せて親戚の元へ身を寄せることになるが、その言動はまるで別人になったようであった。

【カリム】大陸議会の事務官を名乗る青年。

▶年齢はネリネと同じくらいと思われ、左目を前髪で隠しており陰気そうな印象である。

▶身に付けている赤を基調としたシャツと議会所属を表すバッジを留めた黒地のチョッキは所定の制服のようなもの。

▶馬車に乗りメンシスを去るネリネに随行し、竜巻被害について聴取しようとする。

▶大陸北東部の孤児院の出身で、過去に何か苦い経験をしているようである。

【リリアン・ヴァニタス】ヴァニタス海賊団の若き首領。

▶巻き毛の金髪が特徴で、体術では随一の戦闘力を持つ。

▶急逝した父の遺言により、齢16にして首領の座を継承しているが、経験が乏しく未熟であるため、父の右腕であった幹部ローレンの助力を得ながら海賊団を存続させている。

▶海賊団はアルケン商会という善良な団体を騙る裏で、密輸品などの取引を働いていた。

【ロキシー・アルクリス】齢17の女使用人。

▶大陸中央部プディシティア州にあるセントラム農業盆地の領主クレオーメ・フォンス伯爵の別邸に仕える。

▶物心ついた頃から母レピアと共に別邸に棲み込みで従事しており、あまり外界との接触がない。

▶長い藍色の髪をしており、やや陰鬱な印象とは裏腹に齢離れした恵体の持ち主。

▶使用人長でもあるレピアとともに好からぬ秘密を抱えており、大陸軍側からの詮索を敬遠している。

【ルーシー・ドランジア】大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長。

▶すらりとした上背に長い黒髪を湛え、銀縁の眼鏡の奥に黄金色の瞳を覗かせる齢28の女性。

▶メンシス港の機能停止を受け、セントラムの生産品の出荷計画などを見直すべく部隊を牽引しフォンス邸別邸を訪れるが、密かに別の目的も念頭にあるらしくロキシーに探りを入れる。

▶飄々として掴みどころのない性格。身内も大陸議会の関係者であるらしい。

【ステラ・アヴァリー】齢24の孤児院管理人。

▶大陸北東部カリタス州の新興都市グリセーオで大陸軍が設立し運営を委託するジェルメナ孤児院に従事している。

▶領主キーウィ―・アヴァリーの1人娘であり、2年前に母から管理人の立場を継承している。

▶赤みがかった茶髪を三つ編みで束ねている。世話焼きで責任感や正義感が強い。

▶過去に厄災を経験して以来、1人でも多くの親なき子の命を護りたいと身を粉にして働いているが、結果としてこれ以上収容できないほどの孤児を拾ってしまい、食糧などの遣り繰りに頭を悩ませている。

【リオ】かつてジェルメナ孤児院で暮らしていた少女。

▶物語開始時点から7年前、グリセーオ西端を流れる川に独り漂着していたところを救助されたが、虚弱体質に陥っていたためジェルメナ孤児院に引き取られ静養することになる。

▶救助以前の記憶をほとんど引き出すことが叶わず、当時は齢7,8程度と推測されていた。

▶2年後に『強欲の悪魔』を顕現させてしまい、命を落としている。栗毛と鈍色の瞳が特徴。

【ピナス・ベル】伝説の瑠璃銀狼の血を引くラピス・ルプスの民の少女。

▶外見は齢12,3ほどだが、人間と比べて齢を重ねる間隔が緩やかで、既に30年生きている。

▶大陸北部アヴスティナ連峰の中腹にあるクラウザという集落で同胞と共に密かに暮らしている。

▶とある目的を果たすため『貪食の悪魔』を宿して鳥の姿となり、大陸西部へ向かっている。

▶7年前のとある出来事で人間側との軋轢を経験し、その際に『貪食の悪魔』を宿した母を失っているほか、サキナとも面識をもっている。

【オドラ―・ベル】ピナスの祖父であり、クラウザの集落を束ねる長老。

▶齢200を超え、ラピス・ルプスの民の特徴である銀色の毛並みは灰色にくすみ、全身毛むくじゃらである。

▶大陸の人間が内戦時代を経て現代に至るまでの歴史だけでなく、千年前から続く厄災についても口伝により知識を蓄えている。

▶人間と対立する気はないが、緩やかに数を減らしてく一族の行く末を憂い、『貪食の悪魔』を同胞から生み出さぬためにも、人間の手を借りてでも種を存続させるべきか思案している。

【クランメ・リヴィア】齢28の博物館職員兼調査研究員

▶大陸西部グラティア州、首都ヴィルトス近郊のアーレア国立自然科学博物館に従事している。

▶やや小柄で、分厚い眼鏡と象牙色の髪が特徴。大陸南西部ミーティス州の農村出身で、独特な訛りで喋る。

▶ルーシーとはグラティア学術院で同期生の関係だが、当時はあまり好ましい印象を抱いていなかった。

▶ラ・クリマスの悪魔の『封印』に関わるとある仕事を引き受けている。

【イリア・ピオニー】齢26にして大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長を務める軍人。

▶桃色がかった金髪と強い正義感の持ち主。国の平和のため心身を尽くそうとする厳格な性格。

▶現代に至る国内軍事を統括し続けた由緒あるピオニー家の娘。父ジオラスは元帥の地位にあり、2人の兄も同じく軍人である。

▶十代のころに出会ったルーシーの理想に感銘を受け、励まされたことでその背中を追い続けている。

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