第15話 終わらない夜

文字数 5,298文字

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——魔が差した。それはつまり、相手を()(かも)だと刹那的(せつなてき)に判断したということだ。()だ幼く怖いもの知らずだった俺が(ひと)(たたず)む女性軍人から窃盗を働こうと目論(もくろ)んだように、伯母さん(あのひと)もまた(いや)しく育った俺を壮大な本懐(ほんかい)を果たすための一道具として利用しようとしたんだ。

——本当は身内の縁を切った以上、再会など望んでいなかったのかもしれない。でも裏を返せば、

(つか)うことが出来(でき)たとも言えるんじゃないのか。もしかしたら(かも)だと見做(みな)したのはリオの方で、リオに執着していた俺は(かも)が背負った(ねぎ)に過ぎなかったのかもしれないけど。


——当時『(かげ)の部隊』では5年後に向けて優秀な人材を——主にラ・クリマスの悪魔に

出来(でき)

厄災の被害者を集めていた。悪魔と対峙(たいじ)することを踏まえれば、身体能力に()けた者は(なお)貴重だった。

——スラム街で幾度(いくど)と窃盗を(こな)俊敏(しゅんびん)さと、目的のために手段を(いと)わない執念深さを持つ孤児を買おうとして魔が差した。…そう考えるのが一番自然なことだ。


『これからは自由に生きろ。…それがおまえの両親の願いでもあったのだからな。』


『それがおまえに対する報奨(ほうしょう)か、せめてもの贖罪(しょくざい)だったのかは知らないがな。』


——でもそれならどうして、餞別(せんべつ)(おく)るような真似(まね)をしたんだ? あのとき俺が左の瞳について()かなくとも、元帥(げんすい)には切ったはずの縁を(さら)すよう依頼済みだったってことじゃないか。

——悪魔と対峙(たいじ)し続けるなかで、俺は何度も死にかけた。部隊員同士で協力するよう言われたことは何度かあったけど、役割としては他の連中と何ら変わらない、代わりが()く道具でしかなかった。偶々(たまたま)俺が生き延びたから、仕方なくそうしたとでもいうのか?


——本当に俺に生き(なが)らえて欲しかったのなら、最初からディヴィルガムなんて(たく)さず後方支援にでも押し込めておけばよかったじゃないか。そうして知らないうちに(すべ)ての悪魔を『封印』して、何も知り得ないまま部隊から解放すればよかったじゃないか。こんなにも色んなものを背負わせて…何食(なにく)わぬ顔で生きられるわけがないじゃないか。


『ちゃんと私の命に、意味を見出して……。前を向いて、最後までしっかり生きるのよ……!』


『……ほな、後のことは……頼んだわ…。』


——ステラ先生、今の俺は先生が願ったように生きられているのかな。リヴィアさん、俺は貴女(あなた)(たく)された通りに役目を果たせたのかな。伯母さん(あのひと)(いだ)いていた本懐(ほんかい)は聞き出せたけど、結局それだけで(すべ)て終わってしまった。

——本当に伯母さん(あのひと)が厄災のない世界を実現させたのなら、それはそれで犠牲にした命に意味が付されたと言えるのかもしれない。でも俺の中では、何も変わっていないままだ。(むし)ろずっと面影(おもかげ)(まと)わりついて、何度も何度も意味を問い(ただ)されているような気さえする。


——あの2人だけじゃない…リリアン・ヴァニタスという若き海賊の女首領も、名前も知らないままの白髪(はくはつ)の修道女も、正体を(さら)して言葉を交わしたわけじゃないのに、()(そば)で俺が生きる行く末を監視しているように思えてしまう。

——伯母さん(あのひと)対峙(たいじ)していたイリア・ピオニー隊長も、俺を篭絡(ろうらく)してきたロキシーという使用人も、ピナスというラピス・ルプスの民の少女も…直接手を掛けたわけじゃないのに、これまで任務で出会った悪魔の『宿主』が(みな)(こぞ)って俺のことを試すように見つめているのが(わか)る。

——あの7つの色の眼差(まなざ)しが呪いのように脳裏(のうり)に焼き付いて離れない。俺はもう人として可笑(おか)しくなっているのかもしれないけど、可笑(おか)しいの一言で片付けるべきではないとも思う。


『…神様に怒られて……当たり前だよね。』


——昔は積み重ねた軽犯罪が暴かれることを、あんなに恐れていたんだけどな。他人(ひと)の命を奪っても大義のために正当化されることに甘んじて、(かこ)けて、リオが(のこ)した言葉すらいつの間にか忘れてしまっていた。俺が(あやま)ちを犯さなければ、リオが悪魔の標的になることはなかったかもしれないのに、その責任すら復讐(ふくしゅう)を掲げて(おお)い隠していた。

——(たと)え誰にも(とが)められなくとも、命を奪った他人(ひと)から(うら)まれていなくとも、創世の神は俺に当然の(ごと)く隕石のような重荷を科しているんだ。どれだけ大義名分が果たされても神の前に道理などなく、俺の中で何一つ清算されることなく『(いまし)め』が続いているんだ。


『君が伝承の悪魔に(とら)われず、(すこ)やかな生涯を送れる未来を願っている。』


——あれは伯母さん(あのひと)()てた文面だけど、俺が生きていればきっと同じ言葉を(おく)ったんだろうな。知り得なかったとはいえ俺は父親の…いや両親の願いに(こた)えることが出来(でき)なかった。

——これほどの重荷を背負って、どうやって(すこ)やかに生きればいいんだ。どう生きれば正しいと(ゆる)してもらえるんだ。素顔を知らない両親までもが俺のことを遠くから見つめていると思うと、益々(ますます)動き出せなくなってくるじゃないか。


貴方(あなた)が責任を感じることなんてない。…全部悪魔が悪いんだから。』


——…そういう風に考えられたら、どれだけ楽だろうな。悪魔が『宿主』を狂わせて破滅的な運命を(もたら)したというなら、その考えは正しい。でもその悪魔が『封印』という名目のために意図的に、組織的に顕現させられたものだと知ったら、サキナは同じような答えをするのかな。

——この息詰まるような思いを全部ぶち()けたら、あの日の夜みたいに少しは気が楽になるのかな。やっぱり最後にもう1度、あいつに会うべきなんじゃ……。




 そのとき、階下から警鐘(けいしょう)のような音がけたたましく鳴り響き、重苦しい思考に(おちい)っていたカリムは驚きのあまり腰かけていたベッドから滑り落ちた。

 
 小刻みに鳴り続けるその根源を探して恐る恐る階下へと下りると、居間に設置されている電話器に着信が来ていることが(わか)った。

 時刻はもうすぐ0時になろうというところであり、カリムはほぼ空き家同然であったはずのこの家に電話が掛かってくることに盛大な不信感を(いだ)いた。だがそれが必然である可能性を考えると、意を決して受話器を取った。


「カリム、夜分(やぶん)遅くに申し訳ない。」


 世間の連絡手段は(いま)風蜂鳥(かぜはちどり)による文通が主流であり、それよりも早く意思疎通(いしそつう)出来(でき)る電話という新しい文明にカリムが触れた経験はほぼ皆無(かいむ)だった。

 それでも見様見真似(みようみまね)で応答した相手の低く響くような声音は(まぎ)れもなくジオラス・ピオニー元帥(げんすい)のものであり、予想通りだったとはいえ背筋には緊張が(はし)っていた。


「今、俺はソリス港に来ている。2時間ほど前に不可解な現象が起きたと報告を受けてな。壊月彗星(かいげつすいせい)が見える空模様であったにも(かかわ)らず、突然雷を(ともな)うような竜巻が一時的に発生したらしい。実際、周辺家屋(かおく)や貿易倉庫にその影響とみられる被害が少なからず生じている。」


 カリムは少し前に遠くの空から雷鳴が響いていたことを思い出しつつ、危惧(きぐ)していた最悪の状況が現実になりつつあることを察して、ジオラスが寄越す要件を固唾(かたず)を呑んで聞き続けていた。


「ディヴィルガムはまだ手元にあるな。悪いがそれを持って至急『(かげ)の部隊』本部に(おもむ)いてほしい。送迎の自動車がもうじきそちらに着くはずだ。私は()だソリス港周辺で『宿主』と(おぼ)しき不審人物がいないか軍を出動させ警戒に当たっているが、今後何処(どこ)で何が起こるか想定が難しい。一連の事情を知るおまえには、もう少しだけ部隊に協力してもらいたい…別荘の件は一旦保留で構わないからな。」


「…承知致しました。」


 そうして口早(くちばや)に通話が切れると、受話器を()てる耳元では高鳴る動悸(どうき)が反響していた。

 カリムは机の上に放置したままの古びた杖を手に取ると、先端に着装されている何の変哲(へんてつ)もない(にぶ)黒色(こくしょく)(かたまり)(うつ)ろな瞳で見つめた。


——伯母さん(あのひと)が失敗したのかは(わか)らない。7体の悪魔の魔力を集約するような真似(まね)をして、どうなるかなんて結局誰にも(わか)らなかったんじゃないか。

——そうして伯母さん(あのひと)行方(ゆくえ)(くら)ました以上、残された人達で後始末をするしかないんだ。1人、また1人と誰かの人生を犠牲にしながら、それと到底釣り合わない自分の命を()り減らして死ぬまで厄災と戦い続けるしかないんだ。


 カリムは宿命づけられた杖を力強く握り締めると、()ても立ってもいられなくなって住宅の外に出た。間もなく日付が変わる頃だというのに、眠気(ねむけ)(まった)く感じずいつまでも起きていられるような気がしていた。

 ひんやりとした深夜の空気が出迎えるなかしっかりと玄関を施錠し、送迎のため来訪する自動車を少しでも早く見つけようと歩き出そうとした。



 だがそのとき、カリムの頭上から叩き付けるような風圧が降りかかった。

 そして反射的に身構えた目の前には、体長3メートルはあろうかという青白く揺らめく怪鳥が舞い降りた。その無機質な造形と犇々(ひしひし)と伝わる威圧感から、カリムはそれが何たるかを迷わず断定した。


——『貪食(どんしょく)の悪魔』…! どうして、いきなり俺の前に!?


 突如(とつじょ)立ち(ふさ)がった厄災を前に——あまりにも早すぎる悪魔の再来に、カリムの脳内では様々な憶測が飛び交った。


——伯母さん(あのひと)目論見(もくろみ)が失敗して、悪魔が彼方此方(あちこち)で反発を起こしているとでもいうのか!? 創世の神の怒りを(つい)に買ったとでもいうのか!?

——それとも『(かげ)の部隊』で別に何か(くわだ)てている黒幕がいる可能性が…? いや、そんなことを考えている場合じゃない。いつも支給されてた封瓶はないけど、戦わなくちゃならない…!


 だが(にら)みを()かせるカリムに対し、青白い怪鳥はじっと(たたず)んだまま時折(ときおり)翼や尾を震わせていた。

 よく見るとその輪郭(りんかく)はやや(おぼろ)げで、体躯(たいく)の割には(いささ)脆弱(ぜいじゃく)そうな印象を受けていた。
 何より敵愾心(てきがいしん)が散漫であり、こちらの素性(すじょう)(うかが)うような視線を向けていたので、カリムはつい3日前に邂逅(かいこう)したピナスと呼ばれた『宿主』のことを不図(ふと)思い起こした。


——確かあいつは、目的を果たしたらまた相手をしてやるようなことを言っていた…ディヴィルガムに何か因縁があるような奴だった。もしかしたら本当に『貪食(どんしょく)の悪魔』は『封印』されていなくて、生き延びていた可能性があるのか? それでディヴィルガムの在処(ありか)(さが)してここに来たっていうのか?

——でもこの鳥からは全然戦意を感じない。あの見下すような、圧倒するような視線を感じない。何が目的なんだ? 何か俺に伝えたいことでもあるっていうのか? もし、戦うことが目的じゃないとしたら……。


「おまえは……ピナスなのか?」


 気付けばカリムは、目の前の怪鳥に向かって問いかけていた。

 特段反応はなく、そもそも『宿主』本体でない

蒼獣(そうじゅう)である可能性もあったが、カリムは構うことなく真っ()ぐに語り掛け続けた。どこか遠くの空で、また雷鳴のような音が(とどろ)いていた。


「知っているのなら、教えてくれ。おまえに何が起こったのか。この世界で今何が起こっているのか。…そのうえで俺が、何をすべきなのか。」



 すると青白い怪鳥は再び羽搏(はばた)き始め、周囲に生い茂る雑草や木々を(ざわ)めかせた。
 その風圧に(あお)られないようカリムは反射的に身を地に()せたが、旋回(せんかい)するように飛び掛かってきた怪鳥はそのカリムの背中を巨大な足で(つか)むと、壊月彗星(かいげつすいせい)(まばゆ)い夜空へ一気に飛翔した。

 カリムはその信じられない事実に加え、経験したことのない重力感と吹き付ける冷たい空気に激しく動揺しつつ、ディヴィルガムを落とさないよう両腕で必死に()きかかえた。
 いつ地面に叩きつけられるか(わか)らない恐怖に(おのの)き、一瞬でも心を許し油断を招いたことを後悔した。


 だが(するど)いはずの鉤爪(かぎづめ)(むし)ろ優しくカリムを包み込み、怪鳥は高速ながらも安定した飛行を続けていた。
 そして視界にまた一瞬(くら)むような光が点滅し、直後にはっきりと身を震わせるような雷鳴が聞こえたので、カリムは強張(こわば)りながらも(こうべ)を上げた。

 飛行方向の先では(あお)い炎が広く高く燃え盛り、その上空に黒い雲が生じて雷撃が幾重(いくえ)にも降り注いでいた。
 近付くに連れて暴れるような向かい風が吹き付けてきたが、怪鳥は高度を落としつつ更に加速していた。

 (まさ)しく厄災の渦中(かちゅう)に突撃しようとしているのだと察したカリムの口元からは、自然と苦笑いが(こぼ)れた。


——あの広大な廃墟の影は、ついこの前蹂躙(じゅうりん)されたばかりのトレラントだ。お(あつら)え向きに『(かげ)の部隊』本部の近所で盛大に厄災が起きている。まさか都合よく、多分自動車に送迎されるよりも早く到着するとは思わなかったけど…これは同時に複数の悪魔と戦えってことなのか?

——この鳥は単にその戦場に俺を招待しただけなのか? まるで悪魔を『封印』して回った俺への復讐(ふくしゅう)(くわだ)てているみたいじゃないか。それが俺にとって…最後に待ち受けていた運命ってやつなのか。


 青白い怪鳥はあっという間に付近の野原に下降すると、カリムを放ることも押し付けることもせず適度な高さで解放して飛び去った。
 
 ()かさずカリムが身を起こすと、怪鳥は()き上がる蒼炎(そうえん)の影に隠れるように姿を消していた。間近に(せま)蒼炎(そうえん)を前に、カリムはディヴィルガムを掲げて臨戦(りんせん)態勢に入った。


——悪魔の炎を切り裂く感覚はちゃんと(おぼ)えてる。誰の仕業(しわざ)か知らないけど、悪魔なら何度でも(たお)してやるよ。…それが俺に

生き方である以上は。
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登場人物紹介

【ドール】齢19の修道女。

▶ラ・クリマス大陸北西部にあるディレクト州の歴史ある街ディレクタティオで暮らしており、グレーダン教の総本山であるディレクタティオ大聖堂に連なる修道院に属している。

▶生まれつきの白髪が忌み嫌われ、赤子の頃に大聖堂に託された孤児だった。

▶対人関係が希薄なため幼い頃から本の虫であり、好奇心が旺盛。

▶その性格が災いしてか、あることをきっかけに異端者、廻者として糾弾されることになり、その理不尽な仕打ちを機にラ・クリマスの悪魔を顕現させてしまう。

【死神】ドールの命を狙い対峙する謎めいた人物。

▶グレーダン教徒に似た紫紺のローブを纏い、真っ白で無機質な仮面を着けている。

▶グレーダン教に代々継承されてきた司教杖に似た、武器と言い難い杖を構える。

▶その先端に着装された黒い鉱石からは、悪魔を脅かす不思議な力が醸し出されている。

▶「死神」という名称は、ドールが便宜上付与したものにすぎない。

【ネリネ・エクレット】齢16の貴族令嬢。

▶大陸南東部ヒュミリア州、2大交易都市の1つであるメンシスを治める領主ホリー・エクレットの1人娘。

▶穏やかで物腰柔らかな性格だが、箱入り故に世間知らずである。艶のある金髪の持ち主。

▶だが突如メンシスを襲った猛烈な竜巻で被災し、親も家も失う。

▶街の再建を大陸軍に任せて親戚の元へ身を寄せることになるが、その言動はまるで別人になったようであった。

【カリム】大陸議会の事務官を名乗る青年。

▶年齢はネリネと同じくらいと思われ、左目を前髪で隠しており陰気そうな印象である。

▶身に付けている赤を基調としたシャツと議会所属を表すバッジを留めた黒地のチョッキは所定の制服のようなもの。

▶馬車に乗りメンシスを去るネリネに随行し、竜巻被害について聴取しようとする。

▶大陸北東部の孤児院の出身で、過去に何か苦い経験をしているようである。

【リリアン・ヴァニタス】ヴァニタス海賊団の若き首領。

▶巻き毛の金髪が特徴で、体術では随一の戦闘力を持つ。

▶急逝した父の遺言により、齢16にして首領の座を継承しているが、経験が乏しく未熟であるため、父の右腕であった幹部ローレンの助力を得ながら海賊団を存続させている。

▶海賊団はアルケン商会という善良な団体を騙る裏で、密輸品などの取引を働いていた。

【ロキシー・アルクリス】齢17の女使用人。

▶大陸中央部プディシティア州にあるセントラム農業盆地の領主クレオーメ・フォンス伯爵の別邸に仕える。

▶物心ついた頃から母レピアと共に別邸に棲み込みで従事しており、あまり外界との接触がない。

▶長い藍色の髪をしており、やや陰鬱な印象とは裏腹に齢離れした恵体の持ち主。

▶使用人長でもあるレピアとともに好からぬ秘密を抱えており、大陸軍側からの詮索を敬遠している。

【ルーシー・ドランジア】大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長。

▶すらりとした上背に長い黒髪を湛え、銀縁の眼鏡の奥に黄金色の瞳を覗かせる齢28の女性。

▶メンシス港の機能停止を受け、セントラムの生産品の出荷計画などを見直すべく部隊を牽引しフォンス邸別邸を訪れるが、密かに別の目的も念頭にあるらしくロキシーに探りを入れる。

▶飄々として掴みどころのない性格。身内も大陸議会の関係者であるらしい。

【ステラ・アヴァリー】齢24の孤児院管理人。

▶大陸北東部カリタス州の新興都市グリセーオで大陸軍が設立し運営を委託するジェルメナ孤児院に従事している。

▶領主キーウィ―・アヴァリーの1人娘であり、2年前に母から管理人の立場を継承している。

▶赤みがかった茶髪を三つ編みで束ねている。世話焼きで責任感や正義感が強い。

▶過去に厄災を経験して以来、1人でも多くの親なき子の命を護りたいと身を粉にして働いているが、結果としてこれ以上収容できないほどの孤児を拾ってしまい、食糧などの遣り繰りに頭を悩ませている。

【リオ】かつてジェルメナ孤児院で暮らしていた少女。

▶物語開始時点から7年前、グリセーオ西端を流れる川に独り漂着していたところを救助されたが、虚弱体質に陥っていたためジェルメナ孤児院に引き取られ静養することになる。

▶救助以前の記憶をほとんど引き出すことが叶わず、当時は齢7,8程度と推測されていた。

▶2年後に『強欲の悪魔』を顕現させてしまい、命を落としている。栗毛と鈍色の瞳が特徴。

【ピナス・ベル】伝説の瑠璃銀狼の血を引くラピス・ルプスの民の少女。

▶外見は齢12,3ほどだが、人間と比べて齢を重ねる間隔が緩やかで、既に30年生きている。

▶大陸北部アヴスティナ連峰の中腹にあるクラウザという集落で同胞と共に密かに暮らしている。

▶とある目的を果たすため『貪食の悪魔』を宿して鳥の姿となり、大陸西部へ向かっている。

▶7年前のとある出来事で人間側との軋轢を経験し、その際に『貪食の悪魔』を宿した母を失っているほか、サキナとも面識をもっている。

【オドラ―・ベル】ピナスの祖父であり、クラウザの集落を束ねる長老。

▶齢200を超え、ラピス・ルプスの民の特徴である銀色の毛並みは灰色にくすみ、全身毛むくじゃらである。

▶大陸の人間が内戦時代を経て現代に至るまでの歴史だけでなく、千年前から続く厄災についても口伝により知識を蓄えている。

▶人間と対立する気はないが、緩やかに数を減らしてく一族の行く末を憂い、『貪食の悪魔』を同胞から生み出さぬためにも、人間の手を借りてでも種を存続させるべきか思案している。

【クランメ・リヴィア】齢28の博物館職員兼調査研究員

▶大陸西部グラティア州、首都ヴィルトス近郊のアーレア国立自然科学博物館に従事している。

▶やや小柄で、分厚い眼鏡と象牙色の髪が特徴。大陸南西部ミーティス州の農村出身で、独特な訛りで喋る。

▶ルーシーとはグラティア学術院で同期生の関係だが、当時はあまり好ましい印象を抱いていなかった。

▶ラ・クリマスの悪魔の『封印』に関わるとある仕事を引き受けている。

【イリア・ピオニー】齢26にして大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長を務める軍人。

▶桃色がかった金髪と強い正義感の持ち主。国の平和のため心身を尽くそうとする厳格な性格。

▶現代に至る国内軍事を統括し続けた由緒あるピオニー家の娘。父ジオラスは元帥の地位にあり、2人の兄も同じく軍人である。

▶十代のころに出会ったルーシーの理想に感銘を受け、励まされたことでその背中を追い続けている。

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