第12話 匣と楔

文字数 5,273文字

 カリムがアーレアの地下空間で凍死しかけたサキナを救おうと訴えかけた情けなく(すが)り付くような言葉は、ラ・クリマスの悪魔を(すべ)て『封印』する前に思い(とど)まるために(こいねが)ったものであった。

 だが(すべ)ての『封印』はその後数時間とも経たずして成し()げられ、半日も経たずしてカリムはこの暗闇に身を投じていた。
 その間目紛(めまぐ)るしく変わりゆく事態に押し流されたことで、眠ったまま保護されたサキナとは手が届かないほどに離れてしまったように思えていた。


「心配じゃないと言えば嘘になります…でも今こうして『(かげ)の部隊』から(そむ)くように独断で行動していることもあって、もう本部には戻り(づら)いですし…元々あの人とはその場限りの関係だったというか……。」


『カリム様。お言葉ですが「その場限りの関係」などという言い回しを軽率(けいそつ)にするべきではございません。それは私のような下賤(げせん)な者との(やま)しい間柄(あいだがら)に対し形容すべきでございます。』


 しどろもどろに答えていたところをロキシーに鋭く(いさ)められたカリムは、迂闊(うかつ)な表現に気付き慌てて訂正しようと口走った。


「ああいや、別にそういう意味合いで言ったわけじゃ……。」


勿論(もちろん)承知しております。ですが、カリム様にとってはもうその御方(おかた)が薄からぬ存在になっていることは私でも(わか)ります。何か気迷いを抱えておられるのでしたら、尚更(なおさら)もう一度お会いするべきかと存じます。』


「…(たと)え、相手が自分を必要としていると思っていなくても?」


『それは少なくとも私にとっては、贅沢(ぜいたく)な悩みだと思います。』


 弱腰を突き放すようなロキシーの返答に、カリムはそれきり何も言い返せなくなった。死人である彼女にそのような台詞(せりふ)を吐かれては身も(ふた)も無いと思いつつも、いつまでも愚図(ぐず)ついた感情を引き()るべきでないことは心の中で明らかであった。

 蒸気機関車の屋根の上で決裂して以来サキナと向き合うことを恐れている自分が、菫色(すみれいろ)(もや)から容易(たやす)見透(みす)かされているような奇妙な感覚を味わっていた。
 他方で、何故(なぜ)ロキシーが執拗(しつよう)に私情に踏み込んで来るのか疑問を(いだ)いていた。


——もし仮に俺が誰かと交際でもしていると知れば、それこそ『淫蕩(いんとう)の悪魔』が首を絞めてしまうんじゃないのか。消滅する前にけじめを付けるつもりなのだとしても、自棄(やけ)になっていないといいんだが……。


『…出過ぎた真似(まね)を、失礼いたしました。それでは、2つ目の質問をさせていただきます。』


 カリムは憂慮(ゆうりょ)しながら菫色(すみれいろ)(もや)追随(ついずい)していたが、ロキシーは()慳貪(けんどん)な追及を(みずか)ら片付けて話題を転換してきた。


『カリム様は…「普遍的な愛情」とはどういうことだと思われますか。』




 だが2つ目の問いは打って変わって極端に抽象的なものであり、カリムは思わず小首を(かし)げた。一方のロキシーも言葉足らずを(さと)ったのか、数秒の間の後に遠慮がちな補足を加えた。


『あ、その…これはですね、私が生前お会いしたドランジア議長様より拝聴した表現の一部なのです。』


「…ドランジア…議長から!?」


『議長の姉夫婦様は日頃から父君(ちちぎみ)より国益に貢献するよう厳しく説伏(せっぷく)を受ける一方で、その御子息(ごしそく)には家柄(いえがら)(とら)われず望むまま自由に生きて欲しいと言い聞かせておられたそうです。議長様はそこに「普遍的な愛情」があり、温かく(まばゆ)いものであったと表されておりました。』

『反面、それを語る口振りはどこか(わび)しそうで、「普遍的な愛情」はもう存在していないのではと邪推したことを覚えております。思い返せば議長様も、蛇のような黄金色(こがねいろ)の瞳を光らせる御仁(ごじん)でした。その愛情を注がれていた御子息(ごしそく)というのは…カリム様のことだったのですね。』


 記憶をなぞりながら語り掛ける菫色(すみれいろ)(もや)の背後で、カリムは伯母(おば)であるルーシー・ドランジアが赤の他人にそのような過去を語っていたことに動揺していた。

 身近な親子の関係を(うらや)み惜しむような面影(おもかげ)は、ルーシーとの関わりの中で一度たりとも垣間見(かいまみ)たことがなかった。
 あくまでロキシーの言葉通りに捉えたとしても、それが本心なのか美化された逸話(いつわ)なのかまるで判別しようがなかった。


「…どうして伯母さん(あのひと)はロキシーさんに、その話を…?」


『申し訳ございませんが、あのとき多弁にお話しされていたうちの一部ですので、詳細な脈絡までは(おぼ)えておりません。ただ、使用人としてしか生き方を見出(みいだ)せなかった私に、人生における可能性の1つを示唆(しさ)してくださったのだろうと思っています。…(もっと)もそれは同時に、私に悪魔を顕現させるための心理的な誘導だったのかもしれませんが。』


「人生における…可能性の1つ……?」


『カリム様は、幼少の頃の記憶がないと(おっしゃ)っていましたが…失礼ですが、ご両親のことも(おぼ)えておられないのでしょうか。』


「…はい。」


『そうですか…。私も(およ)そ家庭と呼べる環境で育ったわけではないので、何を申し上げたところで無用の長物(ちょうぶつ)になりかねないものと存じます。ですが僭越(せんえつ)ながら1つ進言させていただけるのであれば…カリム様の将来には沢山(たくさん)の可能性、選択肢があるということです。』

『カリム様は今でこそ使命と覚悟を胸に邁進(まいしん)しておられますが、どのような境遇を(いだ)いていたとしても、本当に大切なものを見出(みいだ)(いと)しいものを追い求める権利があるのです。私はそれが

こそが…「普遍的な愛情」なのだと思います。』


 口調では(かしこ)まりながらも、ロキシーはカリムを奮い立たせるような提言を示した。

 だがその主張はかえってカリムが背負い込む様々な想いに余計な重みを与え、表情を苦々しく(ゆが)ませた。


「もう持ち腐れてますよ、そんなもの…大体、許してくれる人なんて俺にはいません。」


『いいえ、カリム様。他でもない貴方様(あなたさま)が自分自身を許すのです。愛する人を見つけ、尚且(なおか)つ自分を愛してください。そうでなければ大切なものを見出(みいだ)せないどころか…(すで)に抱えている大事なものでさえ、容易(たやす)く失ってしまいかねないのです。』


「…それは…一体どういう……!?」




 カリムが更に問い返そうと一歩を踏み出したその時、当然にあると思っていた段差が突如(とつじょ)平坦(へいたん)になっており、着地した足裏から不意打ちのようにこそばゆい反動が返ってきた。


 驚きのあまり周囲を見遣(みや)ると、息詰まるように思えた氷壁がなくなっており、(つい)に暗闇に放り出されたような錯覚に(おちい)っていた。
 落ち着けるように目を凝らすと、そこは分厚い氷で造られた半球状の空間であり、湿り気を残す柔らかな足元の質感は湖底に到達した何よりの証拠であると判明した。

 その広大さに対して菫色(すみれいろ)(もや)が照らす範囲はあまりにも心許(こころもと)なかったが、カリムは冷たい暗闇の奥に(かす)かだが何か浮かんでいるような輪郭(りんかく)を視界に捉えた。


「あそこに何かが…いる…?」


『お待ちください…カリム様。』


 だが近付こうと慎重に踏み出そうとした次の一歩を、ロキシーが()かさず制した。

 満を持して伯母(おば)相見(あいまみ)えるときが来たのだと(はや)る気負いを()がれたカリムだったが、不服を覚えながら(かたわ)らを振り向くと、菫色(すみれいろ)(もや)が強風に(あお)られる篝火(かがりび)のように荒々しく揺らめいていた。


「ロキシーさん!? 大丈夫なんですか!? …あれは、ドランジア議長で間違いないんですよね!?」


『大丈夫…です……魔素(まそ)奔流(ほんりゅう)が激しく…吹き飛ばされそうですが……。』


 カリムには何の音も風圧も感じられないものの、ディヴィルガムを通じて届くロキシーの返事には砂嵐のような雑音が断続的に入り混じっており、奇妙な現象に狼狽(うろた)えがらも隕石に意識を集中させて彼女の声を聞こうと努めた。


『申し訳ございませんが…私には(まぶ)すぎて…はっきりとした素性(すじょう)を捉え切れません……ですが…その周囲は高密度の魔力で堅く…球体状に閉ざされています……。』

『…あれが恐らく…リヴィア様の(おっしゃ)っていた……「魔力の(はこ)」…恐らく生身のカリム様が踏み込めば……(たちま)ち圧死するか()しくは…窒息(ちっそく)するでしょう……。』



 カリムは前もってクランメから、予想されるルーシーの変異状況について聞かされていた。

 (すなわ)ち、現状は湖底の水圧を相殺(そうさい)するような高圧の隔壁を生成維持しているが、氷結で(おお)い尽くすことでそれを一時的に解除出来(でき)ると思われること。
 それでも(なお)ルーシー自身を半永久的に保存し続けるため、(みずか)らを閉じ込める高密度の魔力の(から)が存在し得ること。

 いずれにせよ、ディヴィルガムによる思念の接触は魔力の圧迫により遮断(しゃだん)される可能性が高いこと。
 実際にこれらは(ほとん)ど的を射ており、カリムは徐々に心臓の鼓動が(たかぶ)っていくのを感じ取っていた。


——確かにリヴィアさんの言っていた通り、他の『宿主』達のように意識を(つな)げることは難しいみたいだ。でもこの暗闇の中で、確かに

。つまり、手段としては間違っていないということだ。そしてこの最後の壁を打破するには……!


「ロキシーさん…お願いしてもいいですか…!?」


 カリムは今にも(まと)まりが()き乱されそうな菫色(すみれいろ)(もや)に杖の先端を傾けながら遠慮がちに、それでいて()き込むように催促した。


(かしこ)まりました…カリム様……ですが……その前に…最期(さいご)にもう1つだけ……。』


「もう1つ……何ですか!?」


 雑音で途切(とぎ)れる台詞(せりふ)()き返したつもりだったが、ロキシーはその応答を(もっ)て同意と受け取ったのか、菫色(すみれいろ)(もや)(あお)られる(まま)棚引(たなび)かせ、カリムの足元から胴体にかけて巻き付くように(まと)わり付かせた。

 そうして唐突(とうとつ)に身体を()い上がってきた(もや)は、(またた)く間にカリムの顔面を(おお)い尽くした。


「……!!?」


 呼吸を(ふさ)がれたわけではなかったが、カリムは反射的に(まぶた)を閉じて息を止めていた。
 (かつ)て虚を突く接吻(せっぷん)と共に毒を流し込まれたことを想起させ、身構えるように全身が硬直していた。

 それでもロキシーが何のつもりで絡み付いてきたのか想像するには(やす)く、『最期(さいご)のもう1つ』が指すことに察しがついていた。


『…カリム様……貴方様(あなたさま)と出会えて……最期(さいご)に…貴方様(あなたさま)のお力に…なれて……嬉しかったです……。』


『…それでは……行って参ります……!』





——やっぱり、何の(ぬく)もりも心地良さも感じない。空気の(かたまり)抱擁(ほうよう)するような、(むな)し過ぎる離別だわ。


——でも、それで構わない…あの御方(おかた)が私を信じてくださったから、私は最期(さいご)まで力を振り絞ろうと思える。最後にして最大の奉仕を務めることが出来(でき)るのだから。



 空虚な接吻(せっぷん)を終えたロキシーは影の青年から離れると、氷結に閉じられた真白(ましろ)の空間で(まばゆ)く輝く『魔力の(はこ)』を振り返り、そこに止め()無く流れ込む金色の粒子の柱を息苦しそうに見上げた。

 氷の天井を()り抜けて侵入する魔素(まそ)奔流(ほんりゅう)は、魔力の(かたまり)であるロキシー自身も()(さら)おうと半球状の空間で新たな気流を生み出しつつあった。
 少しでも気を抜けば(たちま)ち身体は吹き飛ばされて原型を失い、拡散して奔流(ほんりゅう)に呑み込まれる(おそれ)があった。


『単純な話、それでも構へん。(きみ)の持つ毒は魔素(まそ)自体を汚染させるんや。そうして人体の細胞を(おか)すように、魔力の(かたまり)であるうちらにも同じような危害を加えることが出来(でき)る…ステラがそうして伏せったようにな。』

『つまり最終的にロキシー、(きみ)自身が毒を(はら)魔素(まそ)としてドランジアに取り込まれれば、「魔力の(はこ)」を内側から破壊することが出来(でき)ると考えられる。…いや、それが奴の防壁を打ち砕く唯一の方法やとうちは結論付けた。』


——リヴィア様はそう(おっしゃ)って私に大役を(たく)してくださった。でも如何(いか)に私自身が毒の役割を果たすとはいえ、この激しい気流に呑まれて()()りになったら、毒自体が希薄(きはく)になって思うような結果を出せなくなるかもしれない。

——挑戦出来(でき)るのは1回限り。それなら、私は……!



 リリアンが消滅したことで、ロキシーの衣類は再び生地(きじ)の薄いベビードールのみに戻っていた。他に(まと)うものはリリアンへの罪悪感しかなく、今この瞬間まで重く()し掛かっていた。

 だが覚悟を決めたロキシーはそれを振り払い、唯一身に付けていた薄い布切れを()ぎ取って両手で丸めるように圧縮すると、そこに生み出せる限りの毒素を染み込ませた。

 
 生前襲撃者からカリムを(かば)おうとした際、無意識に作り出していた酸のような高濃縮の毒であった。元より布切れは吸湿性のある素材ではなかったが、魔力で再現されていたその生地(きじ)(おの)ずと劇毒の(かたまり)へと変貌(へんぼう)していた。

 ロキシーはそれを胸元に開いた拳大(こぶしだい)(あな)に押し込み両手で(ふさ)ぐと、愈々(いよいよ)上昇気流に身を預けるように浮かび上がり、空間の中心に渦巻く魔素(まそ)奔流(ほんりゅう)へと一思(ひとおも)いに飛び込んだ。


 ()ぐさま全身が(よじ)れて(こそ)がれるような壮絶なうねりに(とら)われ、脳内が激しく揺さぶられて何もかもが(わか)らなくなった。

 だがその最中(さなか)でも、胸元に抱えた劇毒の(かたまり)だけは『魔力の(はこ)』に届くまで消え去ることのないよう必死で抑え込みつつ、只管(ひたすら)にカリムへ思いを()せた。
 
 2人きりになっても一定の距離を保ちつつ、服従でも恋慕(れんぼ)でもない、ただ将来の幸せを願う気持ちを『淫蕩(いんとう)』の代わりに埋め尽くして、満たして、想いを()げるための(くさび)になろうとしていた。


——これが私の…生きた意味……刹那(せつな)でも愛した人に…尽くした…確かな(あかし)……!


——あの御方(おかた)の…未来のために……この毒を…力を…絶対に…ぶつけてみせる……!!
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登場人物紹介

【ドール】齢19の修道女。

▶ラ・クリマス大陸北西部にあるディレクト州の歴史ある街ディレクタティオで暮らしており、グレーダン教の総本山であるディレクタティオ大聖堂に連なる修道院に属している。

▶生まれつきの白髪が忌み嫌われ、赤子の頃に大聖堂に託された孤児だった。

▶対人関係が希薄なため幼い頃から本の虫であり、好奇心が旺盛。

▶その性格が災いしてか、あることをきっかけに異端者、廻者として糾弾されることになり、その理不尽な仕打ちを機にラ・クリマスの悪魔を顕現させてしまう。

【死神】ドールの命を狙い対峙する謎めいた人物。

▶グレーダン教徒に似た紫紺のローブを纏い、真っ白で無機質な仮面を着けている。

▶グレーダン教に代々継承されてきた司教杖に似た、武器と言い難い杖を構える。

▶その先端に着装された黒い鉱石からは、悪魔を脅かす不思議な力が醸し出されている。

▶「死神」という名称は、ドールが便宜上付与したものにすぎない。

【ネリネ・エクレット】齢16の貴族令嬢。

▶大陸南東部ヒュミリア州、2大交易都市の1つであるメンシスを治める領主ホリー・エクレットの1人娘。

▶穏やかで物腰柔らかな性格だが、箱入り故に世間知らずである。艶のある金髪の持ち主。

▶だが突如メンシスを襲った猛烈な竜巻で被災し、親も家も失う。

▶街の再建を大陸軍に任せて親戚の元へ身を寄せることになるが、その言動はまるで別人になったようであった。

【カリム】大陸議会の事務官を名乗る青年。

▶年齢はネリネと同じくらいと思われ、左目を前髪で隠しており陰気そうな印象である。

▶身に付けている赤を基調としたシャツと議会所属を表すバッジを留めた黒地のチョッキは所定の制服のようなもの。

▶馬車に乗りメンシスを去るネリネに随行し、竜巻被害について聴取しようとする。

▶大陸北東部の孤児院の出身で、過去に何か苦い経験をしているようである。

【リリアン・ヴァニタス】ヴァニタス海賊団の若き首領。

▶巻き毛の金髪が特徴で、体術では随一の戦闘力を持つ。

▶急逝した父の遺言により、齢16にして首領の座を継承しているが、経験が乏しく未熟であるため、父の右腕であった幹部ローレンの助力を得ながら海賊団を存続させている。

▶海賊団はアルケン商会という善良な団体を騙る裏で、密輸品などの取引を働いていた。

【ロキシー・アルクリス】齢17の女使用人。

▶大陸中央部プディシティア州にあるセントラム農業盆地の領主クレオーメ・フォンス伯爵の別邸に仕える。

▶物心ついた頃から母レピアと共に別邸に棲み込みで従事しており、あまり外界との接触がない。

▶長い藍色の髪をしており、やや陰鬱な印象とは裏腹に齢離れした恵体の持ち主。

▶使用人長でもあるレピアとともに好からぬ秘密を抱えており、大陸軍側からの詮索を敬遠している。

【ルーシー・ドランジア】大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長。

▶すらりとした上背に長い黒髪を湛え、銀縁の眼鏡の奥に黄金色の瞳を覗かせる齢28の女性。

▶メンシス港の機能停止を受け、セントラムの生産品の出荷計画などを見直すべく部隊を牽引しフォンス邸別邸を訪れるが、密かに別の目的も念頭にあるらしくロキシーに探りを入れる。

▶飄々として掴みどころのない性格。身内も大陸議会の関係者であるらしい。

【ステラ・アヴァリー】齢24の孤児院管理人。

▶大陸北東部カリタス州の新興都市グリセーオで大陸軍が設立し運営を委託するジェルメナ孤児院に従事している。

▶領主キーウィ―・アヴァリーの1人娘であり、2年前に母から管理人の立場を継承している。

▶赤みがかった茶髪を三つ編みで束ねている。世話焼きで責任感や正義感が強い。

▶過去に厄災を経験して以来、1人でも多くの親なき子の命を護りたいと身を粉にして働いているが、結果としてこれ以上収容できないほどの孤児を拾ってしまい、食糧などの遣り繰りに頭を悩ませている。

【リオ】かつてジェルメナ孤児院で暮らしていた少女。

▶物語開始時点から7年前、グリセーオ西端を流れる川に独り漂着していたところを救助されたが、虚弱体質に陥っていたためジェルメナ孤児院に引き取られ静養することになる。

▶救助以前の記憶をほとんど引き出すことが叶わず、当時は齢7,8程度と推測されていた。

▶2年後に『強欲の悪魔』を顕現させてしまい、命を落としている。栗毛と鈍色の瞳が特徴。

【ピナス・ベル】伝説の瑠璃銀狼の血を引くラピス・ルプスの民の少女。

▶外見は齢12,3ほどだが、人間と比べて齢を重ねる間隔が緩やかで、既に30年生きている。

▶大陸北部アヴスティナ連峰の中腹にあるクラウザという集落で同胞と共に密かに暮らしている。

▶とある目的を果たすため『貪食の悪魔』を宿して鳥の姿となり、大陸西部へ向かっている。

▶7年前のとある出来事で人間側との軋轢を経験し、その際に『貪食の悪魔』を宿した母を失っているほか、サキナとも面識をもっている。

【オドラ―・ベル】ピナスの祖父であり、クラウザの集落を束ねる長老。

▶齢200を超え、ラピス・ルプスの民の特徴である銀色の毛並みは灰色にくすみ、全身毛むくじゃらである。

▶大陸の人間が内戦時代を経て現代に至るまでの歴史だけでなく、千年前から続く厄災についても口伝により知識を蓄えている。

▶人間と対立する気はないが、緩やかに数を減らしてく一族の行く末を憂い、『貪食の悪魔』を同胞から生み出さぬためにも、人間の手を借りてでも種を存続させるべきか思案している。

【クランメ・リヴィア】齢28の博物館職員兼調査研究員

▶大陸西部グラティア州、首都ヴィルトス近郊のアーレア国立自然科学博物館に従事している。

▶やや小柄で、分厚い眼鏡と象牙色の髪が特徴。大陸南西部ミーティス州の農村出身で、独特な訛りで喋る。

▶ルーシーとはグラティア学術院で同期生の関係だが、当時はあまり好ましい印象を抱いていなかった。

▶ラ・クリマスの悪魔の『封印』に関わるとある仕事を引き受けている。

【イリア・ピオニー】齢26にして大陸平和維持軍 国土開発支援部隊の隊長を務める軍人。

▶桃色がかった金髪と強い正義感の持ち主。国の平和のため心身を尽くそうとする厳格な性格。

▶現代に至る国内軍事を統括し続けた由緒あるピオニー家の娘。父ジオラスは元帥の地位にあり、2人の兄も同じく軍人である。

▶十代のころに出会ったルーシーの理想に感銘を受け、励まされたことでその背中を追い続けている。

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