第11話 拠点への帰還

文字数 2,100文字

 アチ地区(北方)拠点に帰還後、直ぐに夜食となった。
 7人が亡くなっており、重傷者は5人とあとは軽傷多数であった。
 死者は、ピラミッド型の神殿に安置し明日、葬儀が行われる。

 私の配下は、シャレムの左腕の骨折。
 それだけで済んだのが幸いだった。
 拠点帰還後、即治療が行われ鎮痛剤で痛みが感じずに済んでいる。
 本人は、意外と元気であった。
 とても悔しそうだったけど‥‥

 シャレムには隊員が食事を運び、食べさせてあげていた。
 私は、隊のみんなと食事をしていたが、みな沈黙していた。
 シャレムほどの腕前で、ほとんど攻撃できず倒されてしまったことに脅威を感じているようだ。
 シルバーは、ファーレンたちと共にしている。

 食事が終わり、
「さぁ、みんな。今日は早く寝るのよ。わかった?」

「はい。姫様‥‥」
 と元気のない返事が返ってきた。

「明日、葬儀が終わったらポンティスに帰るから、みんな元気だしてね」
 と言って、私はシャレムのところに向かった。



 ドアをノックし、
「はい。どうぞ」
 と返事があったので、中に入った。

「あっ、ラムディア様! リョーカが戻ってとばかりと‥‥申し訳ございません」

「いいのよ。それよりちゃんと食事は喉を通った? 怪我は痛くない?」

「はい。リョーカが食べさせてくれましたので完食しました。怪我の方は鎮痛剤で痛みはありませんので大丈夫です」

「そう。本当に良かったわ」
 と安堵し、椅子に座った。

 しばらくするとシャレムから、
「あの攻撃で意識を失ってから、どうなったのでしょうか?」
 と聞いてきたので、説明してあげた。

「そうですか。申し訳ございません。戦力にならず、足を引っ張ってしまいました」

「そんなことはないわ。だってファーレン隊でも4:1のところを3:1で戦えたのですから、あなたがいなかったら2:1で戦わなくてはならなかったのよ。戦場に戻ってきてはダメって言っておいてなんだけど助かったわ」

「とんでもありません! あの巨人、ラムディア様を集中的に狙っていましたから、何とかお守りしたかったのですが、まさか盾で攻撃してくるとは予想できませんでした」

「これが実戦なのね。私もそう思ったわ」

「そうそう。あの巨人を倒したあと、私は銃剣モードで援護射撃をしてファーレン隊の支援に徹したのだけど、あれは功を奏したわ。全滅させたから片手斧と盾装備の有利さは巨人国にはグリーンラッド国には伝わらないとは思うけど、戦場で気がつかぬ間に逃げた兵もいるかも知れないから、帰国したら女性の近衛兵は銃剣での射撃の修練時間を増やそうと思うの」

「はい。私もそれが良いと思います。力では敵いませんが支援はできますから」

「明日、葬儀後にポンティスに帰るから、そこでまた治療してもらいましょうね。骨折だからしばらくは訓練はできないと思うけど、指導はできるし巨人との実戦闘の話はできると思うから参加はして欲しいの」

「かしこまりました。ダメって言われても参加するつもりでした」
 と笑っていた。

「しかしラムディア様も無茶し過ぎです! と言いたいですが救ってくださって、ありがとうございました。ラムディア様は本当にお強いのですね。あの後、シルバー様とお二人で巨人を倒したとお聞きして心底驚きました」

「なんとかね。巨人が功績に目がくらんで私にばかり執着したものだから、シルバーが攻撃する隙ができたのは幸いだったわ」

「それでもお怪我もなく、本当に尊敬します」

「あははは。恥かしいから、やめて。それでは行くね。シャレム、おやすみなさい」

「ラムディア様もおやすみなさい」



 その後、ファーレンとシルバーと合流して本日の話をした。

「全滅はさせたけど油断はできないから、グリーンラッド国が次は片手斧と盾部隊を増強している対策だけはしておかないといけないと思うの」

「は! 姫様のおっしゃる通りかと存じます。配下の者に聞くと、姫様が光銃で支援してくださったお陰で敵へ攻撃する隙が生まれたと聞き及んでおります」

「私も正直ヘトヘトだったから剣では戦えないと思って、せめてと思ってしたのだけど意外とうまくいったわね。目を狙って撃っていたの。当たらなくても充分効果があったみたい。でも偶然よ」

「いえ。素晴らしい思いつきです。前線にずっといると光銃は効かないと固定観念ができていました。今後は、兵にも銃剣モードでの射撃訓練をさせようと思います」

「そう! それ!! 私も同じことを考えていたの。私の隊、女性の近衛兵には同じ訓練をさせようと、先ほどシャレムと話をしたところなのよ」
 そしてチラっとシルバーを見た。

「ラム様の思うようになさってください」

「ありがとう」

 ファーレンから、
「姫様。明日の葬儀には出席くださるとお聞きしております。そこでおこがましいのですが、是非死者に姫様から弔いの言葉をかけてあげて欲しいのです」

「そのつもりよ。このアトランティスを護るために散った英霊を弔うのは私としても当然だと思っています」

「はっ! 恐れ入ります」

「それでは、今夜はこれで寝るわね。みんなも早く寝てね」

「かしこまりました」

 そう返事を聞くと、自室に戻ってそのまま眠りについた。
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登場人物紹介

アトランティス王家最後の第二王女で、本作の主人公

ラムディア・ラァ・アトランティック

「皆さま、どうかアトランティスの悲劇を現文明で繰り返さないようお願いします」

アカシック王

アトランティス滅亡を防ぐため降臨した救世主(メシア)

「愛とは奪うものではなく与えるものである。爽やかに吹き渡る風のように」

「創造神は人に完全なる自由を与えた。しかし自由には責任が伴うのだ」

後世、イエス・キリストとして降臨する。

アモン(第一王子)

アカシック王の後継者。

アカシック王の第一子。

性格は温厚で優しく、遠視や未来を視る能力を持つ。

重要な役割を負うことになる。

ラファティア(第一王女)

アカシック王の2番目の子で、巫女を務める。

能力が高く結界の守護者。

性格は早くに亡くなった母のように母性の高く思いやりに満ちている。

アーク(第二王子)

アカシック王の3番目の子で、近衛隊長を務める。

性格は正義感が強いが、気性が少し荒い。

曲がったことが嫌い。

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