第68話 交流
文字数 2,487文字
妙なことに巨人族のギランに格納庫ではあるけど乗船してもらい再び飛行船は空に向かって浮かびだした。
ラグナロク王の命令書を携えて。
「ギラン殿、狭い中で申し訳ありませんが我慢してください」
コミュニケーションをとろうと私も格納庫に乗ったのだ。
「うむ。思ったよりは広い。だから大丈夫だ」
「あなたも急なことで、しかもお一人で敵国の飛行船に乗るのは、さぞご不安なことでしょう。あなたの身の保証は私が命を懸けてお守りしますので、ご安心ください」
「かたじけない。しかくお主も‥いや失礼。王女も大胆なことをなさる」
「私は平和を望んでいるだけです。巨人族のためなど崇高なことは申しません。でもこの戦はいつか、誰かが止めなければなりません」
「そのようなことは考えたことがなかった。一度、王女の国の領土で食糧生産をしたが、やはり我が国とは比較にならないほど成長が早く本国に送ることができ豊かになった。その味が忘れなれないのだ」
「失礼ですが初めてグリーンラッド国に参りましたが、上空から見る風景は思いの外、肥沃 で平和な風景が広がっていました」
「軍人と民間人では使うからな。確かに自国でも自給自足はなんとかできているが、不作の年は苦しいのだ」
「お気持ちはわかりますが、だからといって平和に暮らしているアトランティスに侵攻してくるのは、どうかと思いますよ」
「‥‥王女は俺が怖くはないのか? 武器も携帯せずに一緒に格納庫に乗り込むなど無謀だぞ」
「私はラグナロク王を信じました。だから、その配下の方が姑息な手段をするとは思えません」
「本当に肝が据わっているのだな」
「とは言いましたが、ちゃんと計算していますよ。この情勢の中、私を殺害や捕虜にしたら、アトランティスからの宣戦布告を招きます。それこそグリーンラッド国の危機です」
「ふふふ。なかなかの者だな。しかも剣の腕もたつ」
「そうでしたね。私が戦っているのをご覧になられていたのですものね。お褒めいただいて嬉しいです」
「ゴルン隊長は腕利きの者でな。片手武器部隊を提案したのは私なのだよ。頭の固い連中は耳を貸さなかったが、まずは試しとゴルン隊長が提案に賛同してくれてな‥‥だから私も戦場を見に行っていたのだよ」
「そうだったのですか! 正直、片手武器部隊は我が国を翻弄 しましたよ。でも私はあなたの戦友の仇なのですね」
「そうだが軍人なのだ、戦場で死ぬのは覚悟の上だ。王女に恨みは抱いていない」
「ありがとう。ふふっ、でも変な感じですね。こうして普通に話ができるのに今まで戦ばかりしていたのですから」
「個人としてはだ。国対国となれば別だ。我らが好戦的なのは承知だが、我らとて生きるために必死であるのだ」
「だから和平協定は、お互いに理があるのです」
「アトランティスには、あの強力な武器がある。あれを使われたら、今回の対策でも通るかどうか分からないが、賭けて仕掛けたのだ」
「あの兵器をもう二度と使わせてはならないのです!」
「王女が真剣なのは、もう理解している。ラグナロク王さえ説き伏せたのだからな」
「どういたしまして」
とウィンクしてみせた。
「アトランティスの北方にはいつ到着する予定なのだ?」
「夜は飛べませんから、明後日 の夕方には到着できると考えています。但し、天候次第です」
「太陽の力を使っているのだったな。それならば我が軍が到着するのを先回りはできそうであるな」
「ええ。1日雨で飛べなくてもなんとか間に合います」
「承知した」
「ギラン殿は、お食事はどうされるのですか? 一応、私たちの食糧もありますけどギラン殿のお腹を満たすほどの量はご用意できません」
「今更、それを言うか? はっはっは。心配無用、しっかり持参してきているぞ」
「それは失礼しました。正直、そこまで考える余裕はありませんでしたので」
「それにしてはラグナロク王を前に、堂々としておったぞ」
「あれは開き直りです。それに信念と熱意です」
「それを自分で言うのか? 面白い王女だな」
「褒めてくださったと受け取っておきますわ」
こうして順調に東の大陸の海岸線沿いを南下していったが、1日雨に見舞われてしまい。海岸線に着陸し乗り過ごした。
その際、一度下船して気分転換を図った。
「俺は、陸の中に入り食糧を探してくる。そう遠くまでいかないが、置いていくなよ」
そうギランが言うと、
「なんたる無礼な!」
とカイオンが怒り出した。
それを手で制して、
「大丈夫ですよ! ちゃんと待ってますからお気をつけて」
そういって送り出した。
*
「姫様! あの巨人と格納庫で一緒に過ごすなど私は大反対だったのです」
カイオンは私に矛先を向けてきた。
「ごめんなさいね。でもね、私も巨人族の方とゆっくりと話したかったの。こんな機会はなかなか訪れないでしょ?」
「そうですが、私が格納庫にご一緒にと申し出てもお断りなさいましたし危険すぎます」
「だからね。説明したじゃない。私を殺害や捕虜にしたらグリーンラッド国が不利になるだけだって」
「そうでございますが、アーク王子の代わりに護衛としてついてきながら、私めはなんのお役にも立てておりません」
「そんなことないわ。敵国に少数で行くのですから、心強かったですよ。同行してくれて、ありがとう」
「いえ、ついムキになってしまいました。ご無礼をお許しください」
「気にしてないわ」
そう言ってから皆を見回し、
「皆も、私のこの無謀な賭けに命を捨てる覚悟でついてきてくれて御礼を言います。ありがとう」
「勿体ないお言葉でございます。ご一緒できて光栄であります」
ライゼンがそう答えた。
「私も、なかなか面白い体験ができました。それなりに楽しんでおりますのでお気遣いなく」
イーシュナが返事をする。
「まったくラム様と言ったら、本当に言い出したら聞く耳を持ちませんな。昔っから全然変わりませぬ」
珍しく頭を抱えながらシルバーが愚痴をこぼした。
しばらくして、ギランが沢山の果物を持って戻ってきた。
「なかなか大量だったぞ。皆で食べようぞ」
と私たちにも分けてくれた。
こうして1日を地上で過ごし、翌日朝から再び南下を開始した。
ラグナロク王の命令書を携えて。
「ギラン殿、狭い中で申し訳ありませんが我慢してください」
コミュニケーションをとろうと私も格納庫に乗ったのだ。
「うむ。思ったよりは広い。だから大丈夫だ」
「あなたも急なことで、しかもお一人で敵国の飛行船に乗るのは、さぞご不安なことでしょう。あなたの身の保証は私が命を懸けてお守りしますので、ご安心ください」
「かたじけない。しかくお主も‥いや失礼。王女も大胆なことをなさる」
「私は平和を望んでいるだけです。巨人族のためなど崇高なことは申しません。でもこの戦はいつか、誰かが止めなければなりません」
「そのようなことは考えたことがなかった。一度、王女の国の領土で食糧生産をしたが、やはり我が国とは比較にならないほど成長が早く本国に送ることができ豊かになった。その味が忘れなれないのだ」
「失礼ですが初めてグリーンラッド国に参りましたが、上空から見る風景は思いの外、
「軍人と民間人では使うからな。確かに自国でも自給自足はなんとかできているが、不作の年は苦しいのだ」
「お気持ちはわかりますが、だからといって平和に暮らしているアトランティスに侵攻してくるのは、どうかと思いますよ」
「‥‥王女は俺が怖くはないのか? 武器も携帯せずに一緒に格納庫に乗り込むなど無謀だぞ」
「私はラグナロク王を信じました。だから、その配下の方が姑息な手段をするとは思えません」
「本当に肝が据わっているのだな」
「とは言いましたが、ちゃんと計算していますよ。この情勢の中、私を殺害や捕虜にしたら、アトランティスからの宣戦布告を招きます。それこそグリーンラッド国の危機です」
「ふふふ。なかなかの者だな。しかも剣の腕もたつ」
「そうでしたね。私が戦っているのをご覧になられていたのですものね。お褒めいただいて嬉しいです」
「ゴルン隊長は腕利きの者でな。片手武器部隊を提案したのは私なのだよ。頭の固い連中は耳を貸さなかったが、まずは試しとゴルン隊長が提案に賛同してくれてな‥‥だから私も戦場を見に行っていたのだよ」
「そうだったのですか! 正直、片手武器部隊は我が国を
「そうだが軍人なのだ、戦場で死ぬのは覚悟の上だ。王女に恨みは抱いていない」
「ありがとう。ふふっ、でも変な感じですね。こうして普通に話ができるのに今まで戦ばかりしていたのですから」
「個人としてはだ。国対国となれば別だ。我らが好戦的なのは承知だが、我らとて生きるために必死であるのだ」
「だから和平協定は、お互いに理があるのです」
「アトランティスには、あの強力な武器がある。あれを使われたら、今回の対策でも通るかどうか分からないが、賭けて仕掛けたのだ」
「あの兵器をもう二度と使わせてはならないのです!」
「王女が真剣なのは、もう理解している。ラグナロク王さえ説き伏せたのだからな」
「どういたしまして」
とウィンクしてみせた。
「アトランティスの北方にはいつ到着する予定なのだ?」
「夜は飛べませんから、
「太陽の力を使っているのだったな。それならば我が軍が到着するのを先回りはできそうであるな」
「ええ。1日雨で飛べなくてもなんとか間に合います」
「承知した」
「ギラン殿は、お食事はどうされるのですか? 一応、私たちの食糧もありますけどギラン殿のお腹を満たすほどの量はご用意できません」
「今更、それを言うか? はっはっは。心配無用、しっかり持参してきているぞ」
「それは失礼しました。正直、そこまで考える余裕はありませんでしたので」
「それにしてはラグナロク王を前に、堂々としておったぞ」
「あれは開き直りです。それに信念と熱意です」
「それを自分で言うのか? 面白い王女だな」
「褒めてくださったと受け取っておきますわ」
こうして順調に東の大陸の海岸線沿いを南下していったが、1日雨に見舞われてしまい。海岸線に着陸し乗り過ごした。
その際、一度下船して気分転換を図った。
「俺は、陸の中に入り食糧を探してくる。そう遠くまでいかないが、置いていくなよ」
そうギランが言うと、
「なんたる無礼な!」
とカイオンが怒り出した。
それを手で制して、
「大丈夫ですよ! ちゃんと待ってますからお気をつけて」
そういって送り出した。
*
「姫様! あの巨人と格納庫で一緒に過ごすなど私は大反対だったのです」
カイオンは私に矛先を向けてきた。
「ごめんなさいね。でもね、私も巨人族の方とゆっくりと話したかったの。こんな機会はなかなか訪れないでしょ?」
「そうですが、私が格納庫にご一緒にと申し出てもお断りなさいましたし危険すぎます」
「だからね。説明したじゃない。私を殺害や捕虜にしたらグリーンラッド国が不利になるだけだって」
「そうでございますが、アーク王子の代わりに護衛としてついてきながら、私めはなんのお役にも立てておりません」
「そんなことないわ。敵国に少数で行くのですから、心強かったですよ。同行してくれて、ありがとう」
「いえ、ついムキになってしまいました。ご無礼をお許しください」
「気にしてないわ」
そう言ってから皆を見回し、
「皆も、私のこの無謀な賭けに命を捨てる覚悟でついてきてくれて御礼を言います。ありがとう」
「勿体ないお言葉でございます。ご一緒できて光栄であります」
ライゼンがそう答えた。
「私も、なかなか面白い体験ができました。それなりに楽しんでおりますのでお気遣いなく」
イーシュナが返事をする。
「まったくラム様と言ったら、本当に言い出したら聞く耳を持ちませんな。昔っから全然変わりませぬ」
珍しく頭を抱えながらシルバーが愚痴をこぼした。
しばらくして、ギランが沢山の果物を持って戻ってきた。
「なかなか大量だったぞ。皆で食べようぞ」
と私たちにも分けてくれた。
こうして1日を地上で過ごし、翌日朝から再び南下を開始した。