第10話 辛勝

文字数 1,325文字

 シャルムの元に着くと、シャレムの上半身をそっと抱え声を掛けた。
「ううう‥‥」
 とうめき声が出る。

「良かった。生きていて」
 と涙が出てきた。
 シャレムの様子を見ると盾攻撃を、瞬間に盾で受けたようで左腕が骨折しているようだった。
『凄まじい攻撃力だわ』

「シルバー、シャレムは怪我はしているけど無事よ。それよりファーレン隊を助けてあげて」

「かしこまりました」
 と走っていった。

「シャレム。また意識を失ったのね。でも息はしているから大丈夫。本当に良かった。ごめんなさい」

 その時、シャレム隊の一人が様子を見に来たらしく、こちらに向かってくるのが見えた。

「あなたは、確かリョーカね。こちらに来て!」

「あ! はい!」
 と急いで駆けてきた。

「シャレムを連れて引いて! お願いね」

「え? 姫様は?」

「私は、まだ引けない。シャレムを任せたわよ」

 と走り出していた。



 流石にシルバーのようにはもう戦えない。
 剣の柄を90度曲げ銃剣モードに切り替え、遠距離で巨人の意表を突きファーレン隊が攻撃できるようにするだけしかできない。

 剣先を巨人に向けると、光のスコープが浮かぶ。
 狙いを定めて打つ。
 当たるが、ここからではまるでダメージはない。
 当たり前だ、目の前にいても切り傷程度にしかならないのだから。
 しかし、狙い通りに攻撃に隙ができた。
 兵は、その瞬間を見逃さず攻撃を加えていく。

 バッテリーパックを交換しつつ、銃光で兵の攻撃する隙を作っていく。
 巨人どもは隊の長だったのか、私を狙った奴が倒されたことによって動揺している様子。
 そして、残り4人も倒すことができた。
 兵にも死者はでていないものの、怪我人は多く出ているようだ。



 前線のファーレンに通信で、
「こちらは5人とも倒したわ。そちらは?」

「ひ‥‥姫様、何故にそこにおられるのですか!!」

「そんなことは、今はどうでもいいの。前線はどうなの?」

「は! 死者が数人でてしまいましたが、勝利は確実になった状況です」

「そう。それはよかったわ。そちらには行けないけど頑張ってください」

「はい。勝利の女神にそういって頂けたなら、絶対に負けません!」

『私のことを言っているのよね?』
 とは思ったが、それ以上言わなかった。



 シルバーを含め、ラーゼたちファーレン配下の20人もヘトヘトになっていた。
 盾持ちは、今後の脅威になると感じた。

「ファーレン。盾持ちには今後、対策が必要だわ。巨人族にその脅威が伝わらないように、一兵足りとも逃さないで」

「はい。かしこまりました」



 夕刻、戦は終わった。
 こちらの被害は少ないが辛勝だったと言えよう。
『敵を全滅させたから、盾持ち作戦の功は伝わらないわよね‥‥』

 そして北方(アチ地区)拠点への撤退が開始された。



 誰も気づいていなかったが、伏兵の着岸した()側ではなく反対側に小型の舟が一隻着岸していたのだ。

『ゴルン隊長が亡くなったか。惜しい人材を失ってしまったが、やはり盾持ちはアトランティス人には有利になるようだ。まったく軍に奴らは力推しだけしか能がない奴ばかりで「両手武器での戦闘こそ我らが巨人族の戦い方だ」などほざいていたが、これで聞く耳を持つだろう』

 夜になると、舟は離岸に北方へ消えていった。
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登場人物紹介

アトランティス王家最後の第二王女で、本作の主人公

ラムディア・ラァ・アトランティック

「皆さま、どうかアトランティスの悲劇を現文明で繰り返さないようお願いします」

アカシック王

アトランティス滅亡を防ぐため降臨した救世主(メシア)

「愛とは奪うものではなく与えるものである。爽やかに吹き渡る風のように」

「創造神は人に完全なる自由を与えた。しかし自由には責任が伴うのだ」

後世、イエス・キリストとして降臨する。

アモン(第一王子)

アカシック王の後継者。

アカシック王の第一子。

性格は温厚で優しく、遠視や未来を視る能力を持つ。

重要な役割を負うことになる。

ラファティア(第一王女)

アカシック王の2番目の子で、巫女を務める。

能力が高く結界の守護者。

性格は早くに亡くなった母のように母性の高く思いやりに満ちている。

アーク(第二王子)

アカシック王の3番目の子で、近衛隊長を務める。

性格は正義感が強いが、気性が少し荒い。

曲がったことが嫌い。

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