第50話 真相
文字数 2,192文字
北方の国、グリーンラッド。
ラグナロクは有頂天になっていた。
それもそのはず、アトランティスと戦争を始めて以来、初めてアトランティス大陸の北方を領土に治めることに成功したのだから当然であった。
「トールよ! でかした! アトランティス大陸は暖かいからな作物が良く育つ。食糧も本土へ持ってくることができるようになったぞ」
「光栄にございます。これも2段階攻撃を思いつかれたラグナロク王のお陰でございます」
トールは、大はしゃぎになりそうな自分を制し必死に理性を保っていた。
「北方から南へは山越えせねばならぬ。容易には攻められん」
「その通りでございます」
「しばらくは砦を強化し、食糧の増産に努めるのだ。他の地区へ攻めるのはそれからでも遅くはない」
「はい」
「西方は赤色人種のいる大陸があるからな。手薄な東方を次のターゲートにするぞ」
「流石、ラグナロク王でございます」
*
そして、アトランティスの首都ポンティス。
ガハル軍最高司令官は愕然としていた。
「な‥‥なんだと! ガフェイが戦死しただと!」
「残念ながら、確実な報告でございます」
「よくも! よくも俺の可愛い甥を殺したな! 巨人ども、この恨み絶対に晴らしてらるからな」
怒りに燃えるガハルの姿があった。
「司令官、実は脱出してきた兵の報告では‥‥」
「なんだ? まだあるのか?」
「誠に申し上げずらいのですが、お耳を失礼いたします」
そう言うとガハルの横に移動し、耳へ小声で報告した。
奇跡的に最後まで戦い、脱出してこれた兵が語った真相を伝えた。
「なんだと!」
「そのように報告が上がっております。もちろん他言無用と戒厳令を引いてございます」
「そうか、うむ。良くやった」
「その者たちを全員、命令違反者として独房へ放り込め! 真相が漏れては困る。わかったな!」
「は‥‥はい! かしこまりました」
「そのまま軍法会議にかけ、奴らには意見を許さず死刑とするのだ。良いな」
「はい。そのようにいたします。ご安心を」
「なら良い。直ぐに行動に移せ!」
「は、はい!」
と言いながら走り去っていった。
『なんという醜態。絶対に真実を漏らしてはならない。だが巨人ども絶対に復讐してやるぞ』
怒り狂うガハルの歯からは血が滲 み出ていた。
*
「なんですって! アチ地区が陥落したというのですか?」
私は、その報告に我を失った。
「アトランティスの兵は? どうなったのですか?」
「はい。全滅したとの報告を受けております」
「なんて事態に‥‥」
アチ地区の知った兵たちの顔が浮かび涙が流れ出る。
「ガハル軍最高司令官の甥にあたるガフェイ司令も戦死したとのことです」
「そうですか‥‥ガハルも無念でしょうね。ラーゼは、どうなったのですか? 本来なら彼がアチ地区の司令官になるべき人材でした」
「お亡くなりになられたと報告があがっております」
「‥‥そうですか。報告ありがとう」
「はい。それでは失礼いたします」
そう言って報告に来た者は去っていった。
私は、その足で水晶神殿に向かった。
『私にできることは彼らの冥福を祈ることしかできない‥‥でも、せめて祈って上げたい』
そう思った。
水晶神殿に着くや否や、精神統一をしトート神に英霊の冥福を祈った。
後ろからラファティア姉さまが声をかけてくる。
「アチ地区が陥落したそうね」
「はい。私も先ほど聞いたばかりです」
「大変な事態になったわね」
「それもありますが、アトランティス軍はほぼ全滅だとお聞きし居ても立っても居られず、こうして祈りに参りました」
「そうですね。私も冥福を一緒に祈るわ」
そうして、ラファティア姉さまと一緒に再び、冥福を祈った。
*
祈りが終わり、
「ラファ姉さま、カルディアと話してきます」
「わかったわ。私は職務に戻るわね」
「はい」
そう返事をして、精神統一し心のチャンネルを合わせる。
「ラムディア。無念だね」
カルディアの声が聞こえる。
「はい。カルディアにお願いがあるのです!」
「なに? ってもう心の中で想っていることが伝わってきてるから分かってしまったけどね。少し待っていて天上界で聞いてくるから」
「はい。お待ちします」
この頃には、もう様付けは止めていた。
やっと呼び捨てに慣れたところだった。
天上界とは時間の流れが違うため、1分ほどでカルディアが帰ってきた。
「話をするより、私の得た情報、情景をラムディアにもダイレクトに伝えるわ」
「よろしくお願いします」
というと心の中に、戦場の初めから最後までのすべてが伝わってきた。
「あぁぁ、なんてことを‥‥ラーゼ‥‥さぞかし無念でしたでしょう。あなたは英雄です。そうですか駐屯部隊の兵は東方と西方に逃れたのですね。ファーレンとクルツが匿っているのですか。よかったわ」
「立派な武人でしたね」
カルディアが言う。
「はい。誇り高き武人でした。彼のような兵、いえ人こそ生き残って欲しかったです」
「そうね」
「しかしガフェイは逆に、なんてことを仕出かしたのでしょう。兵を見殺しにして自分だけ逃げようとしたなんて‥‥」
「この件は脱出者に戒厳令がでています。そしてガハルはこの真相が漏れないように知った者すべてを逮捕、監禁し死刑にするつもりです」
「なんですって!!」
思わず感情を制御できず、カルディアとの交信が途絶してしまった。
もう一度、心を落ち着かせカルディアとの交信を計るが心が乱れてできなかった。
ラグナロクは有頂天になっていた。
それもそのはず、アトランティスと戦争を始めて以来、初めてアトランティス大陸の北方を領土に治めることに成功したのだから当然であった。
「トールよ! でかした! アトランティス大陸は暖かいからな作物が良く育つ。食糧も本土へ持ってくることができるようになったぞ」
「光栄にございます。これも2段階攻撃を思いつかれたラグナロク王のお陰でございます」
トールは、大はしゃぎになりそうな自分を制し必死に理性を保っていた。
「北方から南へは山越えせねばならぬ。容易には攻められん」
「その通りでございます」
「しばらくは砦を強化し、食糧の増産に努めるのだ。他の地区へ攻めるのはそれからでも遅くはない」
「はい」
「西方は赤色人種のいる大陸があるからな。手薄な東方を次のターゲートにするぞ」
「流石、ラグナロク王でございます」
*
そして、アトランティスの首都ポンティス。
ガハル軍最高司令官は愕然としていた。
「な‥‥なんだと! ガフェイが戦死しただと!」
「残念ながら、確実な報告でございます」
「よくも! よくも俺の可愛い甥を殺したな! 巨人ども、この恨み絶対に晴らしてらるからな」
怒りに燃えるガハルの姿があった。
「司令官、実は脱出してきた兵の報告では‥‥」
「なんだ? まだあるのか?」
「誠に申し上げずらいのですが、お耳を失礼いたします」
そう言うとガハルの横に移動し、耳へ小声で報告した。
奇跡的に最後まで戦い、脱出してこれた兵が語った真相を伝えた。
「なんだと!」
「そのように報告が上がっております。もちろん他言無用と戒厳令を引いてございます」
「そうか、うむ。良くやった」
「その者たちを全員、命令違反者として独房へ放り込め! 真相が漏れては困る。わかったな!」
「は‥‥はい! かしこまりました」
「そのまま軍法会議にかけ、奴らには意見を許さず死刑とするのだ。良いな」
「はい。そのようにいたします。ご安心を」
「なら良い。直ぐに行動に移せ!」
「は、はい!」
と言いながら走り去っていった。
『なんという醜態。絶対に真実を漏らしてはならない。だが巨人ども絶対に復讐してやるぞ』
怒り狂うガハルの歯からは血が
*
「なんですって! アチ地区が陥落したというのですか?」
私は、その報告に我を失った。
「アトランティスの兵は? どうなったのですか?」
「はい。全滅したとの報告を受けております」
「なんて事態に‥‥」
アチ地区の知った兵たちの顔が浮かび涙が流れ出る。
「ガハル軍最高司令官の甥にあたるガフェイ司令も戦死したとのことです」
「そうですか‥‥ガハルも無念でしょうね。ラーゼは、どうなったのですか? 本来なら彼がアチ地区の司令官になるべき人材でした」
「お亡くなりになられたと報告があがっております」
「‥‥そうですか。報告ありがとう」
「はい。それでは失礼いたします」
そう言って報告に来た者は去っていった。
私は、その足で水晶神殿に向かった。
『私にできることは彼らの冥福を祈ることしかできない‥‥でも、せめて祈って上げたい』
そう思った。
水晶神殿に着くや否や、精神統一をしトート神に英霊の冥福を祈った。
後ろからラファティア姉さまが声をかけてくる。
「アチ地区が陥落したそうね」
「はい。私も先ほど聞いたばかりです」
「大変な事態になったわね」
「それもありますが、アトランティス軍はほぼ全滅だとお聞きし居ても立っても居られず、こうして祈りに参りました」
「そうですね。私も冥福を一緒に祈るわ」
そうして、ラファティア姉さまと一緒に再び、冥福を祈った。
*
祈りが終わり、
「ラファ姉さま、カルディアと話してきます」
「わかったわ。私は職務に戻るわね」
「はい」
そう返事をして、精神統一し心のチャンネルを合わせる。
「ラムディア。無念だね」
カルディアの声が聞こえる。
「はい。カルディアにお願いがあるのです!」
「なに? ってもう心の中で想っていることが伝わってきてるから分かってしまったけどね。少し待っていて天上界で聞いてくるから」
「はい。お待ちします」
この頃には、もう様付けは止めていた。
やっと呼び捨てに慣れたところだった。
天上界とは時間の流れが違うため、1分ほどでカルディアが帰ってきた。
「話をするより、私の得た情報、情景をラムディアにもダイレクトに伝えるわ」
「よろしくお願いします」
というと心の中に、戦場の初めから最後までのすべてが伝わってきた。
「あぁぁ、なんてことを‥‥ラーゼ‥‥さぞかし無念でしたでしょう。あなたは英雄です。そうですか駐屯部隊の兵は東方と西方に逃れたのですね。ファーレンとクルツが匿っているのですか。よかったわ」
「立派な武人でしたね」
カルディアが言う。
「はい。誇り高き武人でした。彼のような兵、いえ人こそ生き残って欲しかったです」
「そうね」
「しかしガフェイは逆に、なんてことを仕出かしたのでしょう。兵を見殺しにして自分だけ逃げようとしたなんて‥‥」
「この件は脱出者に戒厳令がでています。そしてガハルはこの真相が漏れないように知った者すべてを逮捕、監禁し死刑にするつもりです」
「なんですって!!」
思わず感情を制御できず、カルディアとの交信が途絶してしまった。
もう一度、心を落ち着かせカルディアとの交信を計るが心が乱れてできなかった。