第61話 巨人族の反撃
文字数 2,393文字
バレンスタインが激怒していた。
「あのペテン王め! 国民に秘密兵器の内容を暴露し、反政府の運動開始を指示したぞ。おいゴーラン、わかっておるのか!」
「しかし王の説法の場を許しているのはバレンスタイン宰相でございますし、止めることは既に無理な状況でございます」
ゴーランは必至に申し出る。
「うぬぬぬぬぬ。あのスッカスカの会場で気晴らししておったのに、今では会場に入れぬ者が多く抽選で会場に入れる者を決めておる状況だ。これだけの支持があるものを強制的に止めさせては、それこそ政府への不信感が強まる」
「そうでございます。しかしながらアチ地区を奪還したことにより、政権への支持率は上昇しました。黄金のシャチ党の支持率を抑えてかかっているくらいです。会場がいっぱいでも、国民の支持は宰相の方が勝っているのです」
怒りを鎮めようと懸命だ。
「しかし前回の説法後、黄金のシャチ党から秘密兵器の件の開示要求を突き出されたぞ。あれだけ軍の目撃者がいるのだ。隠しきれん!」
バレンスタインは怒りと混乱とごちゃまぜになった感情を必死に抑えようとした。
「政権への支持率は盤石ですし、こうなったら開き直って公表してはいかがですか? 」
「なんだと!」
バレンタインは怒りが治まらない。
「兵器の内容は知られてしまいました。情報開示を拒否すれば、それこそ国民に疑念を抱かせます。ならば開示して、この兵器によりアチ地区は軽傷者がでたのみで奪還できた。軍人の家族の方々とっても大変良いことである。更には巨人族も肝を冷やしたのか、あれから攻めてくる気配がなくなったと功績を高々に宣伝すべきです」
ゴーランは必死に説得した。
「そうだな。冷静さが欠けていた。すまぬ」
「いえ! 勿体ないお言葉でございます」
「使用した兵器はまだ開発途中であったため、敢えて公表しなかったことにより国民の皆様にはご心配をおかけし申し訳なかった。とすれば良いか?」
「それがよろしいかと存じます」
ゴーランは心底、ホッとした。
「それならできるだけ早い方が良いな。軍事機密なのだから開示情報は簡素なものでよいだろう。早速、用意させるとするぞ。そうだな3日後には公表できるであろう」
こうして3日後、政府の緊急放送として各家庭のスクリーンでバレンスタイン宰相と軍最高司令官ガハルが、直接説明した。
もちろん、軍事機密として詳細は説明できないとしたが、アカシック王の法話通りの内容を素直に認めた形となった。
それは国民に受け入れられ、支持が低下することはなかった。
*
そんなことはつゆ知らず2ヶ月の間、巨人族はラグナロク王の命に従い侵攻準備を整え、侵攻を開始した。
その報は、アトランティスへもたらされた。
「は! 巨人どもめ、とうとう我慢できなくなって攻めてきたか!」
ガハルが唸 る。
「折角、国民に巨人族がおののいて侵攻しなこなくなったと公表したのに、攻めてきよって! 痛い目に合わせてやるぞ」
バレンスタインも怒っていた。
*
その報は王家にも届いた。
『なんですって! あんな酷い目にあったのに、また巨人族が侵攻してくるなんて‥‥バカね』
もう居ても立ってもいられなかった。
お父様のところに向かった。
「ラムディア。そんなに急いでどうしたのだ?」
本当は私の言いたいことをご存じであろうと思いはしたけれど、敢えて申し出た。
「お父様! 巨人族の侵攻を食い止めたく存じます」
「どうするのだ?」
「はい! 私がグリーンラッド国に赴 き、ラグナロク王に直訴して参ります!!」
絶対に譲りませんとの意思を込めてお父様を見つめ続けた。
「なんとも困った子だな。命の補償はないのだぞ。殺されなくとも捕虜になる可能性も高い。それでも行くと言うのか?」
「はい! 決意は揺るぎません。巨人族とて愚かではありません。完成したあの兵器がある以上、どうしようもない戦力差がつきました。その状況で王家の私を処刑なり捕虜にすれば、アトランティス軍の宣戦布告を招きます。それくらいラグナロク王は判断できるはず」
「我が娘ながら、命知らずの無鉄砲で驚かされるな」
「ラグナロク王を説得し和平への道を開きたく思います。アトランティス側が有利な状況ですから、アトランティスから和平交渉を提案すれば受けると考えます。どうかご許可をくださいませ! そのためには今回の侵攻をとりやめ、引き揚げさせる命令をラグナロク王にして頂かなくてはなりません」
深くお辞儀をして懇願 した。
お父様は、黙って聞いている。
「アトランティスに、もうあの兵器を使わせないためでございます。お父様のおっしゃったように巨人族の長所、アトランティスの長所、そして互いの短所を補い合い、ともに発展していくことができます。食糧とて援助なり貿易が可能になります。巨人族にとっても悪い話ではありません。きっと説得してみせます」
そうお話したらお父様が痛い一言をおっしゃった。
「ラムディアがラグナロク王を説得できたとして、アトランティス政府はどうするのだ? 政府がグリーンラッド国に手を差し伸べるか? 説得はどうするか?」
『!!』
言葉につまった。反論できない。
「であろう? ラムディアの想いは解かる。成功すれば滅亡阻止としては、良い手ではある。が難解すぎるのだ」
「そ‥‥それでも! まずは巨人族の侵攻を止めなければ話になりません。行かせてください!!」
もう精神論だけになってしまったが、なにかしなくてはいられなかった。
例え死ぬことになろうとも‥‥
お父様は、短時間その場で瞑想した後、
「いいだろう。私も親書を用意する。危険度が高いため最小限の人数しか連れていけないぞ」
私は、はっと顔を上げ、お父様を見つめた。
お父様の目は慈愛に満ち満ちていた。
「ありがとうございます。身命を賭してラグナロク王を説得して参ります」
そうお答えし、水晶神殿へ向かった。
「あのペテン王め! 国民に秘密兵器の内容を暴露し、反政府の運動開始を指示したぞ。おいゴーラン、わかっておるのか!」
「しかし王の説法の場を許しているのはバレンスタイン宰相でございますし、止めることは既に無理な状況でございます」
ゴーランは必至に申し出る。
「うぬぬぬぬぬ。あのスッカスカの会場で気晴らししておったのに、今では会場に入れぬ者が多く抽選で会場に入れる者を決めておる状況だ。これだけの支持があるものを強制的に止めさせては、それこそ政府への不信感が強まる」
「そうでございます。しかしながらアチ地区を奪還したことにより、政権への支持率は上昇しました。黄金のシャチ党の支持率を抑えてかかっているくらいです。会場がいっぱいでも、国民の支持は宰相の方が勝っているのです」
怒りを鎮めようと懸命だ。
「しかし前回の説法後、黄金のシャチ党から秘密兵器の件の開示要求を突き出されたぞ。あれだけ軍の目撃者がいるのだ。隠しきれん!」
バレンスタインは怒りと混乱とごちゃまぜになった感情を必死に抑えようとした。
「政権への支持率は盤石ですし、こうなったら開き直って公表してはいかがですか? 」
「なんだと!」
バレンタインは怒りが治まらない。
「兵器の内容は知られてしまいました。情報開示を拒否すれば、それこそ国民に疑念を抱かせます。ならば開示して、この兵器によりアチ地区は軽傷者がでたのみで奪還できた。軍人の家族の方々とっても大変良いことである。更には巨人族も肝を冷やしたのか、あれから攻めてくる気配がなくなったと功績を高々に宣伝すべきです」
ゴーランは必死に説得した。
「そうだな。冷静さが欠けていた。すまぬ」
「いえ! 勿体ないお言葉でございます」
「使用した兵器はまだ開発途中であったため、敢えて公表しなかったことにより国民の皆様にはご心配をおかけし申し訳なかった。とすれば良いか?」
「それがよろしいかと存じます」
ゴーランは心底、ホッとした。
「それならできるだけ早い方が良いな。軍事機密なのだから開示情報は簡素なものでよいだろう。早速、用意させるとするぞ。そうだな3日後には公表できるであろう」
こうして3日後、政府の緊急放送として各家庭のスクリーンでバレンスタイン宰相と軍最高司令官ガハルが、直接説明した。
もちろん、軍事機密として詳細は説明できないとしたが、アカシック王の法話通りの内容を素直に認めた形となった。
それは国民に受け入れられ、支持が低下することはなかった。
*
そんなことはつゆ知らず2ヶ月の間、巨人族はラグナロク王の命に従い侵攻準備を整え、侵攻を開始した。
その報は、アトランティスへもたらされた。
「は! 巨人どもめ、とうとう我慢できなくなって攻めてきたか!」
ガハルが
「折角、国民に巨人族がおののいて侵攻しなこなくなったと公表したのに、攻めてきよって! 痛い目に合わせてやるぞ」
バレンスタインも怒っていた。
*
その報は王家にも届いた。
『なんですって! あんな酷い目にあったのに、また巨人族が侵攻してくるなんて‥‥バカね』
もう居ても立ってもいられなかった。
お父様のところに向かった。
「ラムディア。そんなに急いでどうしたのだ?」
本当は私の言いたいことをご存じであろうと思いはしたけれど、敢えて申し出た。
「お父様! 巨人族の侵攻を食い止めたく存じます」
「どうするのだ?」
「はい! 私がグリーンラッド国に
絶対に譲りませんとの意思を込めてお父様を見つめ続けた。
「なんとも困った子だな。命の補償はないのだぞ。殺されなくとも捕虜になる可能性も高い。それでも行くと言うのか?」
「はい! 決意は揺るぎません。巨人族とて愚かではありません。完成したあの兵器がある以上、どうしようもない戦力差がつきました。その状況で王家の私を処刑なり捕虜にすれば、アトランティス軍の宣戦布告を招きます。それくらいラグナロク王は判断できるはず」
「我が娘ながら、命知らずの無鉄砲で驚かされるな」
「ラグナロク王を説得し和平への道を開きたく思います。アトランティス側が有利な状況ですから、アトランティスから和平交渉を提案すれば受けると考えます。どうかご許可をくださいませ! そのためには今回の侵攻をとりやめ、引き揚げさせる命令をラグナロク王にして頂かなくてはなりません」
深くお辞儀をして
お父様は、黙って聞いている。
「アトランティスに、もうあの兵器を使わせないためでございます。お父様のおっしゃったように巨人族の長所、アトランティスの長所、そして互いの短所を補い合い、ともに発展していくことができます。食糧とて援助なり貿易が可能になります。巨人族にとっても悪い話ではありません。きっと説得してみせます」
そうお話したらお父様が痛い一言をおっしゃった。
「ラムディアがラグナロク王を説得できたとして、アトランティス政府はどうするのだ? 政府がグリーンラッド国に手を差し伸べるか? 説得はどうするか?」
『!!』
言葉につまった。反論できない。
「であろう? ラムディアの想いは解かる。成功すれば滅亡阻止としては、良い手ではある。が難解すぎるのだ」
「そ‥‥それでも! まずは巨人族の侵攻を止めなければ話になりません。行かせてください!!」
もう精神論だけになってしまったが、なにかしなくてはいられなかった。
例え死ぬことになろうとも‥‥
お父様は、短時間その場で瞑想した後、
「いいだろう。私も親書を用意する。危険度が高いため最小限の人数しか連れていけないぞ」
私は、はっと顔を上げ、お父様を見つめた。
お父様の目は慈愛に満ち満ちていた。
「ありがとうございます。身命を賭してラグナロク王を説得して参ります」
そうお答えし、水晶神殿へ向かった。