第33話 変化
文字数 2,197文字
翌朝、いつものように水晶神殿へトート神への祈りを捧げに行った。
ラファティア姉さまは、すでに祈りを捧げていた。
また結界の監視、ほころびの修復と目に見えない聖務を担っていらっしゃる。
トート神への祈りが終わると、ラファティア姉さまに話しかけた。
「ラファ姉さま‥‥実は昨夜、自室に戻って鏡を見ましたら私の髪の色がほんの少しピンク色に変化していました。これは守護天使と接触したからでしょうか?」
「実はね、昨日私も気づいでビックリしたのだけど、守護天使とお話できるようになったらといって、そのような変化が起こるとは私も知らないのよ。不思議ね」
「そうなのですか‥‥」
『ラファ姉さまにもお解りにならないことなのね』
とビックリした。
「でもね。悪いことではないわよ。それくらいは解るわ。安心なさい。ラムには何か特別なものがあるのかもね」
と母性に満ちた慈愛の表情でそういってくださった。
「さぁ。ラム、一緒にお食事に行きましょう」
と一緒に王城に向かった。
*
「おい! ラム、どうしたんだその髪の色は?」
早速、アーク兄さまが質問してきた。
昨日のことを説明し、ラファティア姉さまにも解らないことだと説明した。
「ラファ姉さまにも解らないことなのですか?」
「そうなのよ。でも悪いことではないのは解るから安心して」
と私へおっしゃった言葉を、アーク兄さまにも話された。
アモン兄さまも深慮深い表情で、私の髪を眺めていた。
「私にも解らないな。でもラファがいうように悪いことではないのは同感だ」
そうおっしゃってくれた。
お父様は、何もおっしゃらなかった。
すべてお見通しと確信していたが、それでも何もおっしゃらないので大丈夫なのだと思えた。
*
午前は修練場で剣の鍛錬、指導にあたる。
到着すると、早々に私の髪の色の変化に皆が気づき質問攻めにあった。
事情を説明し、何故かは解らないけど悪いことではないと付け加えた。
コリンが、
「でも、そのピンクかかった煌 びやかなゴールド、姫様にとてもお似合いで凄く綺麗です!」
と言ってくれた。
皆も、同感ですと声をかけてくれた。
「ありがとう。素直に喜んでおくわね」
と皆に整列するように促した。
「私は本日、ユリスの隊を指導するわよ。覚悟なさい」
と言って、それぞれの修練場所に散っていった。
*
そして昼食を済ませると、水晶神殿での精神修行に入る。
「ラム、今日はあなたは空中に浮いていて、真下には綺麗で大きな満月があるの。そのようにイメージして瞑想してみて」
「はい!」
早速、開始した。
そのような修行を忍耐強く続け、また1ヶ月が経過しお父様のご法話の日を迎えた。
*
いつも通りにお父様とアモン兄さまが檀上にあがる。
広場には、2万5千人が集まっていた。
『本日も、先月から5千人も増えたわ。きっとお父様が、アトランティスの未来を救ってくださる』
と強く想った。
「アトランティスの皆よ。本日も忙しい中、私の話を聞きにきてくれてありがとう」
本当に、いつまで経っても謙虚なお父様であった。
「本日は魂の話をしたいと思う。以前より、人は天から降りてきて肉体に宿り、そして天に還っていくのだと話をしていた」
会場を一回り眺めて、
「現在、政府が研究開発し一般家庭にも売られているクローンについて、ちゃんと話をしなくてはならないときだと思うので、その話をしたい」
会場が騒 めきだす。
以前、私たち家族にだけ話をしてくださった内容を明らかにされた。
「皆、落ち着いて聞いて欲しい。今の科学力があれば、肉体は人類でも遺伝子情報から生成することは可能である」
会場が静かになった。
「しかし魂は、心は人では創造できないのだ。よって、クローンの中身は人ではない!」
再び会場が驚きに満ちる。
「魂は天からしか宿らないのだ。今、彼らが造ったクローンの中身は、動物の魂や他の世界 からの魂が宿っているに過ぎないことも知って欲しいのだ」
とハッキリとおっしゃった。
「科学の発展、発明によって家事の負担がへるのは良いことだと思う。しかし人工的に造られた者とは言え、生物を小間使いのようにして堕落することは人として誤っている!」
会場がシーンと静まり返った。
「それが戦場であってもだ。確かにアトランティスの軍人の被害は減る。しかし自らの国を自分たちで守らなければなんとする」
そう! 真に言霊と言うべきか心に直接響く声だった。
そのとき、最前列に近い場所で1人の少年が急に倒れた。
これだけの人数だ。
これまでも、こうしたことは何度もあり、救護班が急いで治療にあたっていた。
今回も、いつも通りに救護班が駆けつける。
そのとき、お父様が檀上から降り少年の元に向かっていったのだ。
急いで私も護衛のためお父様の元へ駆けつける。
お父様が救護班に対し、
「この子の状況は急を要するが、今の医療技術では治すことはできない。だから、私に任せたまえ」
と言って、少年から離れさせた。
少年の母が泣きながら、
「王様! なんと尊いのでしょう。ありがとございます」
頭を地面にこすりつけひれ伏す。
「顔を上げたまえ。大丈夫だ」
と母親を優しく諭 す。
私もこの親子には見覚えがあった。
お父様のご法話を最初から欠かさず、拝聴しに来ていた親子だ。
きっとトート神への信仰も純粋なのだろう。
少年は右足がなかった。
だから、余計印象に残っていた。
ラファティア姉さまは、すでに祈りを捧げていた。
また結界の監視、ほころびの修復と目に見えない聖務を担っていらっしゃる。
トート神への祈りが終わると、ラファティア姉さまに話しかけた。
「ラファ姉さま‥‥実は昨夜、自室に戻って鏡を見ましたら私の髪の色がほんの少しピンク色に変化していました。これは守護天使と接触したからでしょうか?」
「実はね、昨日私も気づいでビックリしたのだけど、守護天使とお話できるようになったらといって、そのような変化が起こるとは私も知らないのよ。不思議ね」
「そうなのですか‥‥」
『ラファ姉さまにもお解りにならないことなのね』
とビックリした。
「でもね。悪いことではないわよ。それくらいは解るわ。安心なさい。ラムには何か特別なものがあるのかもね」
と母性に満ちた慈愛の表情でそういってくださった。
「さぁ。ラム、一緒にお食事に行きましょう」
と一緒に王城に向かった。
*
「おい! ラム、どうしたんだその髪の色は?」
早速、アーク兄さまが質問してきた。
昨日のことを説明し、ラファティア姉さまにも解らないことだと説明した。
「ラファ姉さまにも解らないことなのですか?」
「そうなのよ。でも悪いことではないのは解るから安心して」
と私へおっしゃった言葉を、アーク兄さまにも話された。
アモン兄さまも深慮深い表情で、私の髪を眺めていた。
「私にも解らないな。でもラファがいうように悪いことではないのは同感だ」
そうおっしゃってくれた。
お父様は、何もおっしゃらなかった。
すべてお見通しと確信していたが、それでも何もおっしゃらないので大丈夫なのだと思えた。
*
午前は修練場で剣の鍛錬、指導にあたる。
到着すると、早々に私の髪の色の変化に皆が気づき質問攻めにあった。
事情を説明し、何故かは解らないけど悪いことではないと付け加えた。
コリンが、
「でも、そのピンクかかった
と言ってくれた。
皆も、同感ですと声をかけてくれた。
「ありがとう。素直に喜んでおくわね」
と皆に整列するように促した。
「私は本日、ユリスの隊を指導するわよ。覚悟なさい」
と言って、それぞれの修練場所に散っていった。
*
そして昼食を済ませると、水晶神殿での精神修行に入る。
「ラム、今日はあなたは空中に浮いていて、真下には綺麗で大きな満月があるの。そのようにイメージして瞑想してみて」
「はい!」
早速、開始した。
そのような修行を忍耐強く続け、また1ヶ月が経過しお父様のご法話の日を迎えた。
*
いつも通りにお父様とアモン兄さまが檀上にあがる。
広場には、2万5千人が集まっていた。
『本日も、先月から5千人も増えたわ。きっとお父様が、アトランティスの未来を救ってくださる』
と強く想った。
「アトランティスの皆よ。本日も忙しい中、私の話を聞きにきてくれてありがとう」
本当に、いつまで経っても謙虚なお父様であった。
「本日は魂の話をしたいと思う。以前より、人は天から降りてきて肉体に宿り、そして天に還っていくのだと話をしていた」
会場を一回り眺めて、
「現在、政府が研究開発し一般家庭にも売られているクローンについて、ちゃんと話をしなくてはならないときだと思うので、その話をしたい」
会場が
以前、私たち家族にだけ話をしてくださった内容を明らかにされた。
「皆、落ち着いて聞いて欲しい。今の科学力があれば、肉体は人類でも遺伝子情報から生成することは可能である」
会場が静かになった。
「しかし魂は、心は人では創造できないのだ。よって、クローンの中身は人ではない!」
再び会場が驚きに満ちる。
「魂は天からしか宿らないのだ。今、彼らが造ったクローンの中身は、動物の魂や他の
とハッキリとおっしゃった。
「科学の発展、発明によって家事の負担がへるのは良いことだと思う。しかし人工的に造られた者とは言え、生物を小間使いのようにして堕落することは人として誤っている!」
会場がシーンと静まり返った。
「それが戦場であってもだ。確かにアトランティスの軍人の被害は減る。しかし自らの国を自分たちで守らなければなんとする」
そう! 真に言霊と言うべきか心に直接響く声だった。
そのとき、最前列に近い場所で1人の少年が急に倒れた。
これだけの人数だ。
これまでも、こうしたことは何度もあり、救護班が急いで治療にあたっていた。
今回も、いつも通りに救護班が駆けつける。
そのとき、お父様が檀上から降り少年の元に向かっていったのだ。
急いで私も護衛のためお父様の元へ駆けつける。
お父様が救護班に対し、
「この子の状況は急を要するが、今の医療技術では治すことはできない。だから、私に任せたまえ」
と言って、少年から離れさせた。
少年の母が泣きながら、
「王様! なんと尊いのでしょう。ありがとございます」
頭を地面にこすりつけひれ伏す。
「顔を上げたまえ。大丈夫だ」
と母親を優しく
私もこの親子には見覚えがあった。
お父様のご法話を最初から欠かさず、拝聴しに来ていた親子だ。
きっとトート神への信仰も純粋なのだろう。
少年は右足がなかった。
だから、余計印象に残っていた。