第14話 それぞれの思惑
文字数 1,839文字
ここは政府宮の一室。
メンバーは今回も、
宰相のバレスタイン
軍の最高司令官のガハル
王家顧問ゴーラン
科学主任のマシュロン
だ。
「あの姫様は大活躍して無事に帰還したそうだな」
「は! バレスタイン様。その通りでございます」
「まぁ良い、今はな。それよりガハルよ。巨人族が少数だが珍しい装備で攻めてきたそうではないか」
「はい。そう報告を聞いております」
「苦戦したと聞いているが、今後は大丈夫なのか?」
「姫様の行った銃剣モードでの牽制射撃が有効だと分かりましたので対策は練れます。念のため、牽制攻撃専門の部隊を作ります」
「そうか、わかった。次にマシュロンよ。例のクローンの方の状況はどうだ? あれが実戦配備でき兵士の代わりに戦闘させれば国民の犠牲者は減り、我が政府への信頼・支持が更に強くなるだろう」
「はい。実は、クローンを造ることには成功しました。大規模に製造する工場も建設中です」
「そうか! それは良い話だ!」
しかし、マシュロンの顔色がおかしい。
「ん? どうしたのだ? 何か問題があるのか?」
「はい、宰相。実は実験で先に造ったクローン10体に対し教育を施しているのですが、外見は元になった者と変わりがないのですが、どうも様子がおかしく‥‥四本足で歩く者もいました。あと知性が低いのです。あれでは単純労働はさせれても、自己判断の必要な戦闘は無理です」
「なんだとぉぉぉ!」
と怒りの声が部屋中に響く。
「こう言っては何ですが、外見は人間でも中身が動物としか思えません」
「お前は何を言っているのだ! 科学者であろう! 魂など存在せん! トート神の教えなど迷信だ。この世は物質世界なのだぞ、そんな目に見えないものなど信じられるか!!」
「そうは言いましても事実、知性が低いのは間違いないのです」
バレスタインは、しばし沈黙し、
「マシュロンよ。研究を深めよ! 知性が高くなるようにするのだ。わかったか!」
「は! 最善を尽くします」
「それでは今日は解散としよう。マシュロン、何か進展があったら直ぐに報告をよこせ」
「かしこまりました」
***
ここはアトランティスより北方の巨人族の国、グリーンラッド。
王城の一室。
巨人族のラグナロク王
将軍トール
そしてあの夜に北方へ消えていった巨人のギランが集まっていた。
「ギランからの報告は聞いている。お前の提案も聞いた。片手武器の部隊を増やせというものだな」
「はい。その通りでございます」
トールが、
「我が一族は力が全てだ。そんな小賢しいことなどしたくないぞ。両手で思いっ切り武器を叩きつければ、アトランティスの小人など粉砕できるわ」
と即否定する。
しかし、ラグナロク王は冷静だった。
「だが結果が出ている。今回はギランの勝手な判断であったが、ゴルン隊長が同調してな。それに最近、負け続きではないか。トール、良いか。次は全員とは言わないが、片手武器の兵士比率を高くし大部隊で攻めるぞ」
「ははぁ」
と土下座をしてトールは命令を受けた。
その目は悔しそうに、ギランを見つめていた。
***
またも場面は変わり、ここはアトランティスの西方大陸にある国。
レッドキャニオン国。
赤色 人種の国である。
「我が先祖が、ムーの避難者共を受け入れずアトランティスに渡らせてしまったことで、アトランティスは一気に発展し科学技術も、我が国とは比較にならないほど離されてしまった。飛行船に潜水艇だ? 祖先の無能ものめ」
とテスタロッサ王が悔しそうに叫んでいた。
将軍のバーン、科学技術長のゴーテスは沈黙して王が鎮まるのを待つしかなかった。
「まぁ、アトランティス人はグリーンラッドの巨人族との交戦で、我が国に対して敵対していないのが幸いだ。巨人族もこの大陸に上陸はしても東北地帯は誰も住んでいないからな。我が国に攻めてくることは、奴らには不可能なのだ。このまま巨人族とアトランティスが共倒れになってくれるのが一番良い」
と冷静になり始めた。
「ゴーテスよ。アトランティスが我が国をいつ狙ってくるやも知れぬ。科学技術の発展は急務だ。頼むぞ!」
「は! 身命に代えても!!」
「バーン。今は戦がないが油断せず兵を訓練するのだぞ」
片膝をついて、
「王よ。かしこまりました」
と即答した。
『幸い我が国は、作物も豊かで国民も安心して暮らしている。この平和は守らなくてはならない。だから国を守るため軍隊は当然必要だ。そして強い軍隊、兵器があれば抑止力になる』
そう王のテスタロッサは確信していた。
メンバーは今回も、
宰相のバレスタイン
軍の最高司令官のガハル
王家顧問ゴーラン
科学主任のマシュロン
だ。
「あの姫様は大活躍して無事に帰還したそうだな」
「は! バレスタイン様。その通りでございます」
「まぁ良い、今はな。それよりガハルよ。巨人族が少数だが珍しい装備で攻めてきたそうではないか」
「はい。そう報告を聞いております」
「苦戦したと聞いているが、今後は大丈夫なのか?」
「姫様の行った銃剣モードでの牽制射撃が有効だと分かりましたので対策は練れます。念のため、牽制攻撃専門の部隊を作ります」
「そうか、わかった。次にマシュロンよ。例のクローンの方の状況はどうだ? あれが実戦配備でき兵士の代わりに戦闘させれば国民の犠牲者は減り、我が政府への信頼・支持が更に強くなるだろう」
「はい。実は、クローンを造ることには成功しました。大規模に製造する工場も建設中です」
「そうか! それは良い話だ!」
しかし、マシュロンの顔色がおかしい。
「ん? どうしたのだ? 何か問題があるのか?」
「はい、宰相。実は実験で先に造ったクローン10体に対し教育を施しているのですが、外見は元になった者と変わりがないのですが、どうも様子がおかしく‥‥四本足で歩く者もいました。あと知性が低いのです。あれでは単純労働はさせれても、自己判断の必要な戦闘は無理です」
「なんだとぉぉぉ!」
と怒りの声が部屋中に響く。
「こう言っては何ですが、外見は人間でも中身が動物としか思えません」
「お前は何を言っているのだ! 科学者であろう! 魂など存在せん! トート神の教えなど迷信だ。この世は物質世界なのだぞ、そんな目に見えないものなど信じられるか!!」
「そうは言いましても事実、知性が低いのは間違いないのです」
バレスタインは、しばし沈黙し、
「マシュロンよ。研究を深めよ! 知性が高くなるようにするのだ。わかったか!」
「は! 最善を尽くします」
「それでは今日は解散としよう。マシュロン、何か進展があったら直ぐに報告をよこせ」
「かしこまりました」
***
ここはアトランティスより北方の巨人族の国、グリーンラッド。
王城の一室。
巨人族のラグナロク王
将軍トール
そしてあの夜に北方へ消えていった巨人のギランが集まっていた。
「ギランからの報告は聞いている。お前の提案も聞いた。片手武器の部隊を増やせというものだな」
「はい。その通りでございます」
トールが、
「我が一族は力が全てだ。そんな小賢しいことなどしたくないぞ。両手で思いっ切り武器を叩きつければ、アトランティスの小人など粉砕できるわ」
と即否定する。
しかし、ラグナロク王は冷静だった。
「だが結果が出ている。今回はギランの勝手な判断であったが、ゴルン隊長が同調してな。それに最近、負け続きではないか。トール、良いか。次は全員とは言わないが、片手武器の兵士比率を高くし大部隊で攻めるぞ」
「ははぁ」
と土下座をしてトールは命令を受けた。
その目は悔しそうに、ギランを見つめていた。
***
またも場面は変わり、ここはアトランティスの西方大陸にある国。
レッドキャニオン国。
「我が先祖が、ムーの避難者共を受け入れずアトランティスに渡らせてしまったことで、アトランティスは一気に発展し科学技術も、我が国とは比較にならないほど離されてしまった。飛行船に潜水艇だ? 祖先の無能ものめ」
とテスタロッサ王が悔しそうに叫んでいた。
将軍のバーン、科学技術長のゴーテスは沈黙して王が鎮まるのを待つしかなかった。
「まぁ、アトランティス人はグリーンラッドの巨人族との交戦で、我が国に対して敵対していないのが幸いだ。巨人族もこの大陸に上陸はしても東北地帯は誰も住んでいないからな。我が国に攻めてくることは、奴らには不可能なのだ。このまま巨人族とアトランティスが共倒れになってくれるのが一番良い」
と冷静になり始めた。
「ゴーテスよ。アトランティスが我が国をいつ狙ってくるやも知れぬ。科学技術の発展は急務だ。頼むぞ!」
「は! 身命に代えても!!」
「バーン。今は戦がないが油断せず兵を訓練するのだぞ」
片膝をついて、
「王よ。かしこまりました」
と即答した。
『幸い我が国は、作物も豊かで国民も安心して暮らしている。この平和は守らなくてはならない。だから国を守るため軍隊は当然必要だ。そして強い軍隊、兵器があれば抑止力になる』
そう王のテスタロッサは確信していた。