第39話 選挙-共和・民主政治-

文字数 1,308文字

 (ラムディア)も7月になり18歳になった。
 今年は、5年に一度の選挙を迎えることとなった。
 王族の私たちには選挙権はないため、アトランティスの国民の総意を確認する行事としか見ていなかった。

 しかし、今回はお父様(アカシック王)がアトランティスの滅亡を回避するための活動を開始した後の初めての選挙のため、今まで以上に注目していた。
 国民も同様に、その結果がどうなるのかを非常に気にしていた。

 今までの絶対的な支持を集めてきた”科学共和党”が政権を維持するか、トート神の教えを中心に据える”黄金のシャチ党”の支持がどれだけ伸びるのか、他の野党も様々な政策を発表し支持を伸ばそうとしていた。

 共和・民主政治が始まって以来、様々な政党が与党になったりしたが余りに短期であると政策の実現が短期的な視野でしか作成されない小規模なものになるため5年ごとに改正されていた。
 勿論、その間に国民の支持が低下すれば国民による政権交代運動が起こり、選挙を前倒しにできる制度があった。
 それは政策に噓偽りがあり、国民の信頼を失った政府は政権を維持できなくなるといったセーフティーガード制度が設けられていたのだ。

 1人1票が原則だが、そうすると富裕層が絶対的に数が少なくなり不利になるため納税額によって1人で複数の票を保持できるようになっていた。
 そうしないと経営者層の声は小さくなり、圧倒的多数の労働者の意見ばかり反映してしまうためだ。
 これはトート神が、時の王にトート神の声を聴く能力がない場合には共和・民主政治を代理として国を運営していくために考えられた制度でもあった。
 トート神は、繁栄の神でもあるのだ。

 選挙期間中は各家庭のスクリーンでは各党の党首が政策について討論するのを観ることができた。
 少数であろうが、すべての党首が発言できる。
 そして公平性を保つため司会者は一切、「どの党が有利」などの発言が禁止されていた。
 各党の政策を比較する表で説明するのみに徹していた。
 これもトート神の知恵であった。



 2ヶ月間の選挙運動が終わり、無事に公平な選挙が行われた。
 結果は、大多数の支持で与党の”科学共和党”が勝利した。
 ”黄金のシャチ党”も、お父様の活動が功を奏したのか、支持率が約5倍の35%にまで上昇した。
 それは、喜ぶべき結果だ。

 しかし、私は思う。
 本来は、時の王がトート神の声を聴く能力がない場合の一時的回避措置であった共和・民主政治制度なのだ。
 だから現王、つまりお父様のようにトート神の声を聴く能力がある場合は、王制政治にならなくてはならないのだが、能力のない王が3代続いた際に共和・民主政治が固定化されてしまったのだ。
 その際に、王家は”国家の象徴”という地位になってしまった。

『お父様が現代のアトランティスを直接治めることができれば、滅亡からアトランティスを救うのも容易(たやす)いはずであったのに‥‥』
 正直、やるせない気持ちでいっぱいだった。

『でも”黄金のシャチ党”が躍進したのは大きな成果であったし、国民も目覚め始めている証拠でもある。今後もお父様を支え続け、科学技術が発展し繁栄あるアトランティスを未来永劫残したい!』
 改めてそう心に刻んだ。
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登場人物紹介

アトランティス王家最後の第二王女で、本作の主人公

ラムディア・ラァ・アトランティック

「皆さま、どうかアトランティスの悲劇を現文明で繰り返さないようお願いします」

アカシック王

アトランティス滅亡を防ぐため降臨した救世主(メシア)

「愛とは奪うものではなく与えるものである。爽やかに吹き渡る風のように」

「創造神は人に完全なる自由を与えた。しかし自由には責任が伴うのだ」

後世、イエス・キリストとして降臨する。

アモン(第一王子)

アカシック王の後継者。

アカシック王の第一子。

性格は温厚で優しく、遠視や未来を視る能力を持つ。

重要な役割を負うことになる。

ラファティア(第一王女)

アカシック王の2番目の子で、巫女を務める。

能力が高く結界の守護者。

性格は早くに亡くなった母のように母性の高く思いやりに満ちている。

アーク(第二王子)

アカシック王の3番目の子で、近衛隊長を務める。

性格は正義感が強いが、気性が少し荒い。

曲がったことが嫌い。

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