第7話 初陣前

文字数 1,847文字

 大陸の北方(アチ地区)の拠点には、13時ごろ到着した。
 下船すると早速昼食となったが、シャレム隊のみんなの食欲が落ちていた。

「みんな。私たちは後方支援、戦前は出ません。戦場の雰囲気を肌で感じ巨人族をその目で見てくるのです。だから安心して食事をとりなさい」
 と優しく声をかけた。

「は、はい!」
 と返事は良いものの、気分が一気に変わるものではない」

 拠点での建物の一室を私は与えられた。
 隊のみんなは2人で1室だったが、これは仕方がない。
 男性は大部屋だったり4人部屋なのだから、十分に配慮がなされていた。

 夜になり作戦会議が行われた。
 私はシャレムを同行させ、シルバーと共に参加した。

 すると戦慣れしたがっしりとした男が近づいてきた。
「姫様。私は、今回の作戦の司令官のファーレンと申します。どうぞよろしくお願いします」

「ファーレン。ありがとう。お荷物になってしまうけど、どうかよろしくお願いいたします」

「勿体ないお言葉、光栄に存じます。姫様の隊は後方支援ですが、私の配下の20人を護衛につけさせれていただきます。何が起こるかわからないのが戦場でございますので、油断なされぬようお願い申し上げます」

「ありがとう。私とシャレム隊で16人。あとシルバー‥‥は大丈夫ね」
 とシルバーに視線を送ると、うなづいてくれた。
「みな修練では優秀だけど実戦経験がない。しかも5mもの巨人相手ですので助かります」

「巨人族の武器は斧や槍、こん棒となり盾は持っていません。一部には短い斧と盾をもった者もおりますが数は少ないです。当然ながら力は、アトランティス人とは比較にならなうほど強く、そして装備している甲冑が硬く、関節や首、腕や足など肌の出ているとことを狙うしかございません」

「アトランティスの銃剣のビームでは怪我は負わせることはできますが、致命傷は与えられません。ですので剣をもって戦うしかございません。巨人1体につき3人で戦うことを基本としておりますが、姫様方は5人で1チームとしてください。
 また銃剣のバッテリーは多数用意してございますが、交換に時間を要しますので、あまり頼らないようにしてください。あと一番肝心なのですが、危ないときには迷わず逃げてください。私の配下が戦っている間に逃げてください。これはお約束です」

「ファーレン。よくわかったわ。私も初めての戦場ですので素直に従います」

「そうしてくださると助かります。姫様は国民にも人気を高いですので万が一のことがあれば、私はアトランティスに住めなくなってしまいます」
 と半分冗談のように言ってきた。

「巨人族のこの侵攻ペースから上陸は明後日の昼前になると思います。それまでは武具の手入れ、落ち着かないのであれば修練していただいても結構です」

「あとの作戦等については、こちらで行いますので姫様とシャレム様はどうぞ、お帰りくださいませ。シルバー様には残っていただきとうございます」

「承知した」
 とシルバーが答える。

「それでは、お先に失礼しますね。皆さん、よろしくお願いします」
 とお辞儀をしてシャレムと共にその場を辞した。



「ラムディア様。5人で1チームですと我が隊は3チームとなりますが、姫様は私の隊に入ってください」

「シャレム、ありがとう。私はシルバーと2人で組むわ」

「え? ファーレン殿も3人で1チームとおっしゃていたではありませんか!?」

「確かに私は実践経験はないけれど、私の腕は知っているでしょ? それにシルバーと一緒よ。大丈夫」

「先ほど『私も初めての戦場ですので素直に従います』とおっしゃっていましたよね?」

「それは危なくなったら、ファーレン隊に任せて逃げるって話の方ね」
 とウインクしてみせた。

「ラムディア様ったら‥‥せめて我が隊がお近くにおります」

「元々、私たちはほぼ近場にしかいないのよ。シャレム、貴方には隊のみんなのことを守って欲しいの。誰一人怪我もなく帰れるように守ってあげて、逃げるときも卒先(そつせん)して逃げてね。私はシルバーと動くから」

「はい。かしこまりました。でも、その言い方ですとシルバー殿と戦う気満々に聞こえますが‥‥」

「え? そんなことは全然ないわよ」
 とケロっと返事を返したが、ため息が聞こえてきた。

「隊の編成は、シャレムに任せるわね」

「かしこまりました」

「さー、今日は早く寝ましょう」

「そういっておいて姫様だけ起きていそうな感じですね」

「姫様はやめてって言っているのに‥‥ワザとね」
 シャレムは何も答えず、お返しとばかりにウインクだけしてきた。
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登場人物紹介

アトランティス王家最後の第二王女で、本作の主人公

ラムディア・ラァ・アトランティック

「皆さま、どうかアトランティスの悲劇を現文明で繰り返さないようお願いします」

アカシック王

アトランティス滅亡を防ぐため降臨した救世主(メシア)

「愛とは奪うものではなく与えるものである。爽やかに吹き渡る風のように」

「創造神は人に完全なる自由を与えた。しかし自由には責任が伴うのだ」

後世、イエス・キリストとして降臨する。

アモン(第一王子)

アカシック王の後継者。

アカシック王の第一子。

性格は温厚で優しく、遠視や未来を視る能力を持つ。

重要な役割を負うことになる。

ラファティア(第一王女)

アカシック王の2番目の子で、巫女を務める。

能力が高く結界の守護者。

性格は早くに亡くなった母のように母性の高く思いやりに満ちている。

アーク(第二王子)

アカシック王の3番目の子で、近衛隊長を務める。

性格は正義感が強いが、気性が少し荒い。

曲がったことが嫌い。

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