第51話 秘密作戦1
文字数 2,056文字
私は、ガハル司令に会いにいった。
目的は、もちろん脱出兵の救出だった。
しかし、知らぬ存ぜぬと突き通し話にならなかった。
ただ私が、ことの真相を知っていたのには驚愕 して黙り込んでいた。
その結果、東方と西方に逃れた兵の処罰は回避することに成功した。
無念だったが、今の私ではこれが精一杯だった。
『脱出兵のみなさん、ごめんなさいね。あなた方はガフェイの命令を守り立派に戦った英雄です。トート神はすべてを知っておられますから、天に還ったあとは安心してください』
そう心の中で伝える他なかった。
*
『何故、姫があのことを知っているのだ! 折角、全員の口封じができたと思ったのに‥‥またアモン王子の能力か? いやしかし自分で見てきたような話しぶりだったな。今までのようにアモン王子から聞いた感じの話し方ではなかった』
ガハルは、困惑していた。
『あの髪の色の変化に何か関連があるのか? あの姫には何か特殊な能力が備わったのか? 今の王家の連中は今までの奴らとは何かが違う』
そう思えた。
『だが東方、西方の脱出兵への処罰なしと引き換えに、真相を口外しないと約束させた。あの姫の性格だ、こちらが約束を反故にしない限り守るだろう。幸い東方と西方の脱出兵は真相を知らない。戦力には違いがないし、戦い慣れている連中だ。生かしておくのも大事だ』
『ファーレンもクルツも東方、西方とに散らして姫と距離を置かせることもできた。まぁ、ここが引きどころだな』
そう自分を納得させた。
*
アチ地区を占領されてから更に時が立ち、オリハルコン歴1592年となっていた。
バレンスタインは自室で1人焦っていた。
『折角、選挙で勝利したというのに、その後敗戦続きでアソ地区を失ってしまった。これでは支持率が落ちてしまう。いや実際に急下降しているのだ。なんとか打破せねばならぬ』
『ガハルまで手をこまねいており、攻めても勝算がないと来ている。この事態はマズイ。人口的にはアソ地区で暮らしている国民は少ないため首都に避難させたが、何か手はないものか』
懸命に知恵を絞ってもアイデアが浮かんでこない。焦るばかりだ。
そこに、通信が入った。
マシュロンからだ。
「マシュロンか、なんの用だ?」
「はい。実はご相談、ご許可をいただきたく、そちらに伺いたいのですがよろしいでしょうか?」
「うむ。構わぬぞ。すぐに来い」
「ありがとうございます。早速、向かいます」
そういって通信が切れた。
10分ほど待つと、ドアをノックする音が聞こえた。
「マシュロン殿がおいでになりました」
護衛兵が、そう伝えてくる。
「うむ。先ほど聞いておる。通せ」
「はい。かしこまりました」
そしてドアが開き、マシュロンが入ってきた。
「意外に早く到着したな。で、急な用というのはなんだ?」
「はい。実験のご許可を頂きたく参りました」
「今度はなんの実験なのだ?」
今は、そんな悠長な話をしているときではないのだと心の中では怒っていた。
「2年前に、かの大規模実験を東の大陸で行いたいとお話したことを覚えておいででございますか?」
「そのことか。覚えておるぞ。予定では1年後といっておったがな」
「実験や開発に思ったよりお時間がかかってしまい申し訳ございません」
「まぁ良い。中途半端なものを開発しても仕方がないからな。それで続きを言え」
「現在、アチ地区を巨人族に占拠されている事態でございます」
キッとバレンスタインは、マシュロンを睨 む。
「嫌味ではございません。聞くにガハル軍最高司令官もどう取り戻すか作戦がないとのこと」
更に、バレンスタインの眼光が鋭くなる。
「ですので、打開策を持ってきました」
その瞬間、バレンスタインは椅子から勢いよく立ち上がった。
『そういう相談だったのか!』
急いで冷静を装い質問する
「それで、その打開策とはなんだ。説明しろ」
マシュロンは、それ来たと満面の笑顔で説明始めた。
*
説明を聞き終えると思わず顔を前に突き出しながら、
「!! そんなことが可能なのか?」
「はい。可能です」
「素晴らしい! よくやったぞ」
「はい。ありがとうございます」
そして、言葉を続ける。
「まだ実験のデータを元にした試作段階の兵器でございますので威力は、まだ想定の力はだせません。風向きや風の強さを計算すれば局地的になら効果を発揮できると考えております。しかし残念ではございますが軍用に転用している試作飛行船も1隻犠牲にしなくてはなりません」
「なに? 飛行船を1隻犠牲にするだと! 試作船にどれだけ予算をつぎ込んだことか分かっていっているのか!!」
喜びがガッカリ感に変わった。
「はい承知しております。ですが、今の状況を打開できるのならお安いのではないでしょうか? 何と言っても我が軍の戦死者もかなり少なくて済みます」
「うーーーむ。しばし待て」
しばらく頭の中で思考を巡らせた。
10分ほど計算し結果を出した。
「良し! 許可する。で、いつ頃可能なのだ?」
「はい。1ヶ月先には可能です」
自信満々にマシュロンは答えた。
目的は、もちろん脱出兵の救出だった。
しかし、知らぬ存ぜぬと突き通し話にならなかった。
ただ私が、ことの真相を知っていたのには
その結果、東方と西方に逃れた兵の処罰は回避することに成功した。
無念だったが、今の私ではこれが精一杯だった。
『脱出兵のみなさん、ごめんなさいね。あなた方はガフェイの命令を守り立派に戦った英雄です。トート神はすべてを知っておられますから、天に還ったあとは安心してください』
そう心の中で伝える他なかった。
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『何故、姫があのことを知っているのだ! 折角、全員の口封じができたと思ったのに‥‥またアモン王子の能力か? いやしかし自分で見てきたような話しぶりだったな。今までのようにアモン王子から聞いた感じの話し方ではなかった』
ガハルは、困惑していた。
『あの髪の色の変化に何か関連があるのか? あの姫には何か特殊な能力が備わったのか? 今の王家の連中は今までの奴らとは何かが違う』
そう思えた。
『だが東方、西方の脱出兵への処罰なしと引き換えに、真相を口外しないと約束させた。あの姫の性格だ、こちらが約束を反故にしない限り守るだろう。幸い東方と西方の脱出兵は真相を知らない。戦力には違いがないし、戦い慣れている連中だ。生かしておくのも大事だ』
『ファーレンもクルツも東方、西方とに散らして姫と距離を置かせることもできた。まぁ、ここが引きどころだな』
そう自分を納得させた。
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アチ地区を占領されてから更に時が立ち、オリハルコン歴1592年となっていた。
バレンスタインは自室で1人焦っていた。
『折角、選挙で勝利したというのに、その後敗戦続きでアソ地区を失ってしまった。これでは支持率が落ちてしまう。いや実際に急下降しているのだ。なんとか打破せねばならぬ』
『ガハルまで手をこまねいており、攻めても勝算がないと来ている。この事態はマズイ。人口的にはアソ地区で暮らしている国民は少ないため首都に避難させたが、何か手はないものか』
懸命に知恵を絞ってもアイデアが浮かんでこない。焦るばかりだ。
そこに、通信が入った。
マシュロンからだ。
「マシュロンか、なんの用だ?」
「はい。実はご相談、ご許可をいただきたく、そちらに伺いたいのですがよろしいでしょうか?」
「うむ。構わぬぞ。すぐに来い」
「ありがとうございます。早速、向かいます」
そういって通信が切れた。
10分ほど待つと、ドアをノックする音が聞こえた。
「マシュロン殿がおいでになりました」
護衛兵が、そう伝えてくる。
「うむ。先ほど聞いておる。通せ」
「はい。かしこまりました」
そしてドアが開き、マシュロンが入ってきた。
「意外に早く到着したな。で、急な用というのはなんだ?」
「はい。実験のご許可を頂きたく参りました」
「今度はなんの実験なのだ?」
今は、そんな悠長な話をしているときではないのだと心の中では怒っていた。
「2年前に、かの大規模実験を東の大陸で行いたいとお話したことを覚えておいででございますか?」
「そのことか。覚えておるぞ。予定では1年後といっておったがな」
「実験や開発に思ったよりお時間がかかってしまい申し訳ございません」
「まぁ良い。中途半端なものを開発しても仕方がないからな。それで続きを言え」
「現在、アチ地区を巨人族に占拠されている事態でございます」
キッとバレンスタインは、マシュロンを
「嫌味ではございません。聞くにガハル軍最高司令官もどう取り戻すか作戦がないとのこと」
更に、バレンスタインの眼光が鋭くなる。
「ですので、打開策を持ってきました」
その瞬間、バレンスタインは椅子から勢いよく立ち上がった。
『そういう相談だったのか!』
急いで冷静を装い質問する
「それで、その打開策とはなんだ。説明しろ」
マシュロンは、それ来たと満面の笑顔で説明始めた。
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説明を聞き終えると思わず顔を前に突き出しながら、
「!! そんなことが可能なのか?」
「はい。可能です」
「素晴らしい! よくやったぞ」
「はい。ありがとうございます」
そして、言葉を続ける。
「まだ実験のデータを元にした試作段階の兵器でございますので威力は、まだ想定の力はだせません。風向きや風の強さを計算すれば局地的になら効果を発揮できると考えております。しかし残念ではございますが軍用に転用している試作飛行船も1隻犠牲にしなくてはなりません」
「なに? 飛行船を1隻犠牲にするだと! 試作船にどれだけ予算をつぎ込んだことか分かっていっているのか!!」
喜びがガッカリ感に変わった。
「はい承知しております。ですが、今の状況を打開できるのならお安いのではないでしょうか? 何と言っても我が軍の戦死者もかなり少なくて済みます」
「うーーーむ。しばし待て」
しばらく頭の中で思考を巡らせた。
10分ほど計算し結果を出した。
「良し! 許可する。で、いつ頃可能なのだ?」
「はい。1ヶ月先には可能です」
自信満々にマシュロンは答えた。