第70話 停戦に向けて

文字数 1,884文字

「ガハルでございます。姫様、今度は何用でございますか? しかも戦直前のアチ地区の拠点からの通信とは驚きました」

 こうしてガハルへの説得を開始した。
 まだ和平協定の話はしなかったけど。



「話は理解しました。巨人族が攻撃開始しなければ、お受けします。ですが、停戦期間の1ヶ月の間にどうするのですか?」

「それは、まず巨人族を止めるのに成功したら私がバレスタイン宰相とガハル軍最高司令官に直接、ご説明します」

「‥‥かしこまりました。お待ちしております」
 そうして通信を終えた。

「と言うことでガハルの許可は取ったわよ。クラウド、これでいい?」

「はい! 充分でございます。それでは早速、各隊長を招集しますので、先ほどの部屋でお待ちくださいませ」

「わかったわ。よろしくお願いします」
 そう言って別れた。



 それから約半刻が過ぎると、ボーツが迎えに来た。
「姫様、準備ができましたので、おいでくださいませ」

「お願いします」
 感情を表に出さず、そのままついていった。
『性に合わないとはこういうことね。身体が拒否反応しているわ』
 と我慢が必要だった。

 作戦会議室に入るや否や、
「ラムディア王女。ようこそアチ地区へおいでくださいました」
 と一斉に声がかかった。
 その中には昔、アチ地区での戦で一緒に戦った者も多数いた。
 それを見てホッとした。
『良かったわ。顔見知りが思いの外、多くて』

「では、私から今回の件を説明する。衝撃を受けると思うが、落ち着いて冷静に聞いて欲しい」
 そう言ってクラウドが説明を始めた。

 どよめきが起こる。
 会議室中が、興奮と熱気に包まれる。

 クラウドが視線で合図してくれたので、
「質問があれば、私から答えます。遠慮なく聞いて頂戴」
 そう発言したが、意外にも質問はなかった。
 余りに急で衝撃的過ぎたためかも知れないけれど。

「ないようですね。それでは私の客人のギランを連れてきます。絶対に危害を加えてはなりません。私とラグナロク王との盟約です」

「はい。かしこまりました」
 と一同が返事をした。

「とは言ったけど5mもありますから1階で良い部屋はありませんか? 出入りできるところが必要です」

 クラウドが、
「捕虜用に新設した部屋がございます。質素ですが、巨人用に造ってあります」

「それでは案内して、それからその部屋に私が案内するわ」

 そうして部屋を確認し、これならば失礼ではないと判断しギランを迎えに行った。



 私だけ、飛行船の乗り込みベール機長に、
「説得できたから、ギランを拠点の部屋に案内したいの。格納庫を開けていただけるかしら」

「もちろんでございます」

 早速、下船して格納庫前に待機する。
 外から、
「ギラン殿。説得に成功しましたので、今から部屋に案内します。格納庫を開きますのでご注意ください」
 そう伝えた。

 格納庫が開き、ギランが下船してきた。
 周りに集まった兵士が、驚きの声を発する。
 既に各部隊長から、「攻撃するな」と命令が下っていたため、混乱は最小限で済んだ。

「ふぅぅぅ。やっと地上に降りられた」
 開放感からかギランが、そう話す。

「長い時間、お待たせしました。私についてきてください」

「承知した」
 そう言って、部屋に案内した。

「巨人用の部屋があるなど驚いた」

「実は捕虜にした巨人用の部屋だそうです。でも、私が失礼のない部屋と確認してから迎えに来ましたので安心してください」

「うむ。アトランティスはともかく、この一行の者は信じるさ」

「ありがとう」

「ライゼン、カイオン。悪いけど、ギランの護衛をしてあげて」
 そう命じた。

「しかし姫様の護衛で私はついて参りました」
 カイオンが反論する。

「心配してくれて感謝するわ。でもね、ここはアトランティスのアチ地区なのよ。それにシルバーとイーシュナも一緒だから大丈夫よ。だからお願いします」

「‥‥はい。かしこまりました」
 渋々受け入れてくれた。
 そう言いつつも、ライゼンとカイオンも果物を分けてもらったことがキッカケで話をするようになっていたので敵意は既にない。

「見込みだと明日、巨人族の兵はやってくるわ。その時は、ご一緒しますのでギラン殿、よろしくお願いしますね」

「うむ。そのために来たのだからな」
 そうギランが返事をしたあと、視線を合わせた。
 その視線には互いの信頼関係が築かれていることが確認できた。

「あなたは、私の客人として扱うように命令していますからリラックスして過ごしてください。ライゼンとカイオンが護衛しますから安心して疲れもとってくださいね」

「かたじけない。ありがたく思う」

 こうして、翌日の朝を迎えることになった。
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登場人物紹介

アトランティス王家最後の第二王女で、本作の主人公

ラムディア・ラァ・アトランティック

「皆さま、どうかアトランティスの悲劇を現文明で繰り返さないようお願いします」

アカシック王

アトランティス滅亡を防ぐため降臨した救世主(メシア)

「愛とは奪うものではなく与えるものである。爽やかに吹き渡る風のように」

「創造神は人に完全なる自由を与えた。しかし自由には責任が伴うのだ」

後世、イエス・キリストとして降臨する。

アモン(第一王子)

アカシック王の後継者。

アカシック王の第一子。

性格は温厚で優しく、遠視や未来を視る能力を持つ。

重要な役割を負うことになる。

ラファティア(第一王女)

アカシック王の2番目の子で、巫女を務める。

能力が高く結界の守護者。

性格は早くに亡くなった母のように母性の高く思いやりに満ちている。

アーク(第二王子)

アカシック王の3番目の子で、近衛隊長を務める。

性格は正義感が強いが、気性が少し荒い。

曲がったことが嫌い。

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