第42話 敗走
文字数 2,102文字
クルツたちは砦まで到着すると門を閉ざし、砦の上から状況を観察していた。
『あの人数では、あっという間に全滅だろう。仕方がない。彼らを救いに行けば、全員が危うくなる』
そう思うとともに、不安にもなる。
『もし俺の直感が外れていたら勇敢な彼らを見捨て、総攻撃のチャンスの逃したことになる』
嫌な汗が頭から流れてくる。
『いや今までの戦場経験からくる直感だ。自分を信じよう』
無理やりでも、その思考を断った。
*
そうして30分が経過すると、砂塵が舞い敵が突進してくるのが見えた。
「これは! やっぱり罠だったか!」
自分の直感に感謝した。
敵の数が増えている。
しかもクロスボウ部隊が倍増している。
片手武器部隊も増えているようだ。
『なんてことだ! 砦での防御戦とはいえ、これだけの敵数を相手には勝てん』
冷や汗がでる。
砦上にいる各隊長の顔が青くなっているのが判る。
『ダメだ。ここで戦っても被害者がでるだけだ。どうする‥‥』
クルツは心の中で、
『ファーレン元司令官ならどうする』
と考えた。
ファーレン元司令官は武人で勇気もあり尊敬すべき上官だった。
今、ここに居ないことがなんと心もとないことだろう。
『罰則は覚悟の上だ。武人としての務めに専念しよう』
心を決めた。
「各隊に告ぐ! 砦での防御戦を想定していたが、敵の増援が多すぎる! このままでは全滅するだけだ。第2拠点まで全員撤退だ! クローン兵は連れていけない。悪いが時間稼ぎをしてもらうぞ」
続けて、
「飛行船にできるだけ乗船し撤退せよ。乗れない者は我がアチ地区駐屯部隊についてきてくれ」
即行動に移す。
「クローン兵。城門の内側に集結。敵が門を破ったら、そこで反撃せよ」
と申し訳ない気持ちを抱えながら命令を下す。
「了解しました」
と返事がくる。
『これは辛いな。ラムディア姫がいたら、きっと怒るだろうな』
つい勝利の女神の悠然たる姿が頭に浮かんできた。
*
撤退開始後、30分ほどすると後方から”ドォォォーーーン”と音がした。
『門が破られたか。しかし奴らも追撃してこないだろう』
予想通り追撃はなかった。
『しかし拠点を占領されてしまった。奴らは、あそこを拠点に内側に攻めてくることができるようになってしまった』
救いはアトランティスの兵の被害が最小限に食い止めれたことだ。
*
それから1時間と半刻ほどすると第2拠点に到着した。
しばらくは少ない駐屯部隊しかいなかったが、現在は多数の兵士でいっぱいだ。
早速、通信室に赴 むいた。
『首都ポンティスにいるガハル最高司令官に直接報告せねば』
「ガハルだ。飛行船から通信があり状況は把握している」
「左様でございますか、申し訳ございません。私の判断で拠点を奪われることになりました」
と武人らしく素直に詫びた。
「私が思うに、砦で持久戦に持ち込み、その間に増援を待つという手があったのではないか? みすみす巨人どもに拠点を明け渡すのは早計だと思うがクルツは、どう思う?」
と責めてきた。
『実戦経験もない、前線を知らない奴が言いそうなことだ。ガハル司令官を高く認識し過ぎていたな』
と上官の無知に腹が立った。
「勿論、そう考えました。ですが敵の数が多すぎ、また強敵のクロスボウ部隊、片手武器部隊の増援数が多く、全滅すると判断しクローン兵の時間稼ぎをしてもらい何とか撤退した次第です」
と答えた。
「増援部隊の一部が敵が引いたときに攻撃に移った聞いている。お前は見捨てて逃げ出したのだな?」
怒気のこもった声が聞こえた。
「彼らは私の命令を無視しました。命令違反は軍法会議ものです。そこは責められることではございません」
と反論するな否や
「なんと弱虫な奴だ。お前を拠点司令に昇格させたのが間違いだった。即刻、首都の我が元まで来い!」
と言ってきた。
「は! しかし今は、それどころではありません。いつ巨人どもが、この第2拠点に侵攻してくるのか分からない状況です」
と意見する。
「そんな心配はいらん。援軍の中に、俺の甥がいるのだ。甥に司令官をさせ、俺が指揮する。即刻、首都まで来い!」
まったく聞く耳を持たない。
「貴重な飛行船を1隻でも使用するのは問題です。更に撤退が必要になった場合に、1隻分の兵士が逃げれず死ぬことになります!」
と食い下がる。
「ええい! 聞き分けのない奴だ。これは命令だ! 飛行船はお前が首都に到着したら即引き返せばよいだけだ。わかったな!」
と言って通信を一方的に切られた。
クルツの後任で副拠点司令になったラーゼに向かって、
「ラーゼ、すまない。こうなってしまった。ガハル司令官には逆らえない。あとは頼む」
「はい。お任せください。私はクルツ司令の命令が間違っていたとは思いません。クルツ司令は冷静に最善の手を打たれました」
と答えてくれた。
「ありがとう。しかし、この事態にみんなを置いて首都に行くなど武人として自分が許せない」
と本音をこぼす。
「ちゃんと理解しております。拠点駐屯部隊の全員は、理解できます。ですから首都へお急ぎください」
そういって送りだしてくれた。
クルツは無念の思いで飛行船に乗り首都へ向かった。
『あの人数では、あっという間に全滅だろう。仕方がない。彼らを救いに行けば、全員が危うくなる』
そう思うとともに、不安にもなる。
『もし俺の直感が外れていたら勇敢な彼らを見捨て、総攻撃のチャンスの逃したことになる』
嫌な汗が頭から流れてくる。
『いや今までの戦場経験からくる直感だ。自分を信じよう』
無理やりでも、その思考を断った。
*
そうして30分が経過すると、砂塵が舞い敵が突進してくるのが見えた。
「これは! やっぱり罠だったか!」
自分の直感に感謝した。
敵の数が増えている。
しかもクロスボウ部隊が倍増している。
片手武器部隊も増えているようだ。
『なんてことだ! 砦での防御戦とはいえ、これだけの敵数を相手には勝てん』
冷や汗がでる。
砦上にいる各隊長の顔が青くなっているのが判る。
『ダメだ。ここで戦っても被害者がでるだけだ。どうする‥‥』
クルツは心の中で、
『ファーレン元司令官ならどうする』
と考えた。
ファーレン元司令官は武人で勇気もあり尊敬すべき上官だった。
今、ここに居ないことがなんと心もとないことだろう。
『罰則は覚悟の上だ。武人としての務めに専念しよう』
心を決めた。
「各隊に告ぐ! 砦での防御戦を想定していたが、敵の増援が多すぎる! このままでは全滅するだけだ。第2拠点まで全員撤退だ! クローン兵は連れていけない。悪いが時間稼ぎをしてもらうぞ」
続けて、
「飛行船にできるだけ乗船し撤退せよ。乗れない者は我がアチ地区駐屯部隊についてきてくれ」
即行動に移す。
「クローン兵。城門の内側に集結。敵が門を破ったら、そこで反撃せよ」
と申し訳ない気持ちを抱えながら命令を下す。
「了解しました」
と返事がくる。
『これは辛いな。ラムディア姫がいたら、きっと怒るだろうな』
つい勝利の女神の悠然たる姿が頭に浮かんできた。
*
撤退開始後、30分ほどすると後方から”ドォォォーーーン”と音がした。
『門が破られたか。しかし奴らも追撃してこないだろう』
予想通り追撃はなかった。
『しかし拠点を占領されてしまった。奴らは、あそこを拠点に内側に攻めてくることができるようになってしまった』
救いはアトランティスの兵の被害が最小限に食い止めれたことだ。
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それから1時間と半刻ほどすると第2拠点に到着した。
しばらくは少ない駐屯部隊しかいなかったが、現在は多数の兵士でいっぱいだ。
早速、通信室に
『首都ポンティスにいるガハル最高司令官に直接報告せねば』
「ガハルだ。飛行船から通信があり状況は把握している」
「左様でございますか、申し訳ございません。私の判断で拠点を奪われることになりました」
と武人らしく素直に詫びた。
「私が思うに、砦で持久戦に持ち込み、その間に増援を待つという手があったのではないか? みすみす巨人どもに拠点を明け渡すのは早計だと思うがクルツは、どう思う?」
と責めてきた。
『実戦経験もない、前線を知らない奴が言いそうなことだ。ガハル司令官を高く認識し過ぎていたな』
と上官の無知に腹が立った。
「勿論、そう考えました。ですが敵の数が多すぎ、また強敵のクロスボウ部隊、片手武器部隊の増援数が多く、全滅すると判断しクローン兵の時間稼ぎをしてもらい何とか撤退した次第です」
と答えた。
「増援部隊の一部が敵が引いたときに攻撃に移った聞いている。お前は見捨てて逃げ出したのだな?」
怒気のこもった声が聞こえた。
「彼らは私の命令を無視しました。命令違反は軍法会議ものです。そこは責められることではございません」
と反論するな否や
「なんと弱虫な奴だ。お前を拠点司令に昇格させたのが間違いだった。即刻、首都の我が元まで来い!」
と言ってきた。
「は! しかし今は、それどころではありません。いつ巨人どもが、この第2拠点に侵攻してくるのか分からない状況です」
と意見する。
「そんな心配はいらん。援軍の中に、俺の甥がいるのだ。甥に司令官をさせ、俺が指揮する。即刻、首都まで来い!」
まったく聞く耳を持たない。
「貴重な飛行船を1隻でも使用するのは問題です。更に撤退が必要になった場合に、1隻分の兵士が逃げれず死ぬことになります!」
と食い下がる。
「ええい! 聞き分けのない奴だ。これは命令だ! 飛行船はお前が首都に到着したら即引き返せばよいだけだ。わかったな!」
と言って通信を一方的に切られた。
クルツの後任で副拠点司令になったラーゼに向かって、
「ラーゼ、すまない。こうなってしまった。ガハル司令官には逆らえない。あとは頼む」
「はい。お任せください。私はクルツ司令の命令が間違っていたとは思いません。クルツ司令は冷静に最善の手を打たれました」
と答えてくれた。
「ありがとう。しかし、この事態にみんなを置いて首都に行くなど武人として自分が許せない」
と本音をこぼす。
「ちゃんと理解しております。拠点駐屯部隊の全員は、理解できます。ですから首都へお急ぎください」
そういって送りだしてくれた。
クルツは無念の思いで飛行船に乗り首都へ向かった。