第43話 北方拠点
文字数 2,346文字
ここはグリーンラッド王国(現グリーンランド)
ラグナロク王は上機嫌だった。
「我の作戦が上手くいったな。初めて拠点を占拠に成功したぞ」
「ははぁー、王の知恵にはかないません」
トール軍最高司令官は心から敬服していた。
「あのような作戦、王以外に思いつく者はございません」
と褒めたたえる。
「うむ。小人どもの拠点は小さすぎて使い物にならん。壊して我らの砦と築こうぞ。あちらは温かいからな作物も育てやすい。食糧も育てねばならぬ」
と命令した。
「はい。そのようにいたします」
「しばらくは砦建設に集中し防衛に徹する。小人どもは防衛は経験しているが、自分たちから攻めることを知らない。こちらの砦さえ建設してしまえが手もでまい」
と余裕であった。
「おっしゃる通りでございます」
トールは返事をする。
「砦を建設したのち更に内側へ攻めにいくぞ。しばらくは力を貯めておくのだ」
「ははぁーーー」
*
場面は変わり、西方のレッドキャニオン王国(現北アメリカ大陸、アメリカとカナダの中間にあたる)
「なに! 巨人族が、アトランティスの北拠点の奪取に成功しただと!」
テスタロッサは心底驚いた。
「あの頭でっかちの巨人に、そんな知恵があったとは‥‥油断ならんな。今まではアトランティスの動向のみ注意していたが、巨人族がアトランティスの北拠点からこちらに攻めてくるやも知れん」
「は! 警戒するよう駐屯部隊を編成し配置いたします」
バーン軍事司令官は即答した。
「しかし‥‥アトランティスが初めて敗退したな。巨人族、恐るべし。現王のラグナロクは今までの王と違うようだ。今後、認識を改めるとしよう」
テスタロッサは、素直に状況を認めた。
*
そして、アトランティス陣営。
「え? なんですって? アチ地区の拠点が占拠されて第2拠点にまで撤退したというの?」
報告を受け、私 は驚愕した。
「クルツは、どうなったの?」
報告にきた者に聞く。
「はい。ガハル最高司令官に首都の自分とところまで即刻来い! とご命令されたそうです」
「なんですって! 最前線の司令官を動かすなんて愚かな。後任は誰になったの? ラーゼ?」
「いえ。それがガハル最高司令官の甥のガフェイ様になられたとのことです」
「ろくに実戦経験や指揮経験もないのに血族を任命するなんて、今までは軍事においてはなかなかだと思っていたけれど小物だったのね」
ガッカリした。
「それでは私は戻ります」
「はい。報告ありがとう」
そう言って別れた。
『状況が知りたい!』
そう思うと足はアモン兄さまの元に向かっていた。
*
「アモン兄さま!」
「入ってくるなり大声で‥‥ラム。少しは」
「そんなことは、今は良いのです」
と言葉を遮った。
「どうせ頼みごとなんだろ?」
「はい! アチ地区の拠点が巨人族に占拠され、駐屯部隊はクローン兵を残し第2拠点にまで撤退したとのことです」
「なんだって! 本当かい!?」
「アモン兄さま、このような嘘をついて私になんの得がありますか?」
「そうだね。信じるよ」
「ということは視て欲しいってことだね」
「はい。司令官のクルツは首都のガハルに召集され、代わりの司令官にはガハルの甥のガフェイになったそうです」
「なんて愚かな人選を‥‥」
「わかったよ。今から視てあげるから静かにしていなさい」
「はい。よろしくお願いいたします」
アモン兄さまは、部屋の祭壇の前まで行き精神を集中し始めた。
流石に早い。
今の私には到底かなわない早さで、無の境地になっていた。
しばらくの間、後ろでじっと見ているしかなかった。
10分ほどすると、アモン兄さまが通常の状態に戻り、こちらを向いた。
「それではソファーに座って。ちゃんと教えてあげるからさ」
と気さくに言ってくれた。
「はい。アモン兄さま!」
と返事をしてソファーに座った。
対面のソファーに座ったアモン兄さまが説明してくれた。
「巨人族は、2段階で兵を送り込んできたのだよ。最初は我が軍の予想より少ない人数、編成で戦端を開いて時間稼ぎをした」
「巨人族がそんな手段を! 初めてですね」
「そうだね。それから第2陣でクロスボウ部隊と片手武器部隊の増員が到着し一気に攻めてきた」
「え? それでは我が軍の大敗北ですね。死者は?」
「そこは司令官のクルツが戦場の直感だろうね。敵の攻撃に違和感を感じ用心していた」
「それで?」
「そう急かすのではないよ。順を追って説明するからね」
「ごめんなさい」
と素直に謝った。
「クルツは自分の直感を信じて早めに撤退を開始した。まぁ援軍の一部が命令違反して攻撃に転じたようだけど」
「なんて愚かな‥‥」
「そうだね。そのとき少し迷ったようだけど、撤退のチャンスだとして砦まで撤退に成功した」
「クルツは凄いわ! 冷静に判断できたのですね」
「しかし増援で増えた敵兵数と編成を見て、砦での防衛戦だと全滅すると読んで第2拠点への撤退を命令した。クローン兵は連れていけないから内門に待機させ逃げる時間稼ぎに使ったようだよ」
「クローン兵ですか‥‥複雑ですね。お父様が反対されているのに結局は戦場に送り出している。でも今回はそれがなければ撤退できなかったかも知れません」
「いや、巨人族は砦を落としたことに満足して追撃するつもりはなかったから無駄死にだね」
「‥‥そうですか」
複雑な心境だった。
「でもアモン兄さまのご説明をお聞きすると、クルツの判断は最良でお陰で犠牲者も最小限で済んだと思えます」
「うん。その通りだよ。最善だった。立派だったよ。良い武人だ」
「それでクルツはいつ首都に到着するか分かりますか?」
「迎えに行くつもりかい?」
「はい!」
「まったくラムは‥‥あと1時間後には発着場に着くよ」
「ありがとうございます!」
御礼を言って、アモン兄さまの部屋を出た。
ラグナロク王は上機嫌だった。
「我の作戦が上手くいったな。初めて拠点を占拠に成功したぞ」
「ははぁー、王の知恵にはかないません」
トール軍最高司令官は心から敬服していた。
「あのような作戦、王以外に思いつく者はございません」
と褒めたたえる。
「うむ。小人どもの拠点は小さすぎて使い物にならん。壊して我らの砦と築こうぞ。あちらは温かいからな作物も育てやすい。食糧も育てねばならぬ」
と命令した。
「はい。そのようにいたします」
「しばらくは砦建設に集中し防衛に徹する。小人どもは防衛は経験しているが、自分たちから攻めることを知らない。こちらの砦さえ建設してしまえが手もでまい」
と余裕であった。
「おっしゃる通りでございます」
トールは返事をする。
「砦を建設したのち更に内側へ攻めにいくぞ。しばらくは力を貯めておくのだ」
「ははぁーーー」
*
場面は変わり、西方のレッドキャニオン王国(現北アメリカ大陸、アメリカとカナダの中間にあたる)
「なに! 巨人族が、アトランティスの北拠点の奪取に成功しただと!」
テスタロッサは心底驚いた。
「あの頭でっかちの巨人に、そんな知恵があったとは‥‥油断ならんな。今まではアトランティスの動向のみ注意していたが、巨人族がアトランティスの北拠点からこちらに攻めてくるやも知れん」
「は! 警戒するよう駐屯部隊を編成し配置いたします」
バーン軍事司令官は即答した。
「しかし‥‥アトランティスが初めて敗退したな。巨人族、恐るべし。現王のラグナロクは今までの王と違うようだ。今後、認識を改めるとしよう」
テスタロッサは、素直に状況を認めた。
*
そして、アトランティス陣営。
「え? なんですって? アチ地区の拠点が占拠されて第2拠点にまで撤退したというの?」
報告を受け、
「クルツは、どうなったの?」
報告にきた者に聞く。
「はい。ガハル最高司令官に首都の自分とところまで即刻来い! とご命令されたそうです」
「なんですって! 最前線の司令官を動かすなんて愚かな。後任は誰になったの? ラーゼ?」
「いえ。それがガハル最高司令官の甥のガフェイ様になられたとのことです」
「ろくに実戦経験や指揮経験もないのに血族を任命するなんて、今までは軍事においてはなかなかだと思っていたけれど小物だったのね」
ガッカリした。
「それでは私は戻ります」
「はい。報告ありがとう」
そう言って別れた。
『状況が知りたい!』
そう思うと足はアモン兄さまの元に向かっていた。
*
「アモン兄さま!」
「入ってくるなり大声で‥‥ラム。少しは」
「そんなことは、今は良いのです」
と言葉を遮った。
「どうせ頼みごとなんだろ?」
「はい! アチ地区の拠点が巨人族に占拠され、駐屯部隊はクローン兵を残し第2拠点にまで撤退したとのことです」
「なんだって! 本当かい!?」
「アモン兄さま、このような嘘をついて私になんの得がありますか?」
「そうだね。信じるよ」
「ということは視て欲しいってことだね」
「はい。司令官のクルツは首都のガハルに召集され、代わりの司令官にはガハルの甥のガフェイになったそうです」
「なんて愚かな人選を‥‥」
「わかったよ。今から視てあげるから静かにしていなさい」
「はい。よろしくお願いいたします」
アモン兄さまは、部屋の祭壇の前まで行き精神を集中し始めた。
流石に早い。
今の私には到底かなわない早さで、無の境地になっていた。
しばらくの間、後ろでじっと見ているしかなかった。
10分ほどすると、アモン兄さまが通常の状態に戻り、こちらを向いた。
「それではソファーに座って。ちゃんと教えてあげるからさ」
と気さくに言ってくれた。
「はい。アモン兄さま!」
と返事をしてソファーに座った。
対面のソファーに座ったアモン兄さまが説明してくれた。
「巨人族は、2段階で兵を送り込んできたのだよ。最初は我が軍の予想より少ない人数、編成で戦端を開いて時間稼ぎをした」
「巨人族がそんな手段を! 初めてですね」
「そうだね。それから第2陣でクロスボウ部隊と片手武器部隊の増員が到着し一気に攻めてきた」
「え? それでは我が軍の大敗北ですね。死者は?」
「そこは司令官のクルツが戦場の直感だろうね。敵の攻撃に違和感を感じ用心していた」
「それで?」
「そう急かすのではないよ。順を追って説明するからね」
「ごめんなさい」
と素直に謝った。
「クルツは自分の直感を信じて早めに撤退を開始した。まぁ援軍の一部が命令違反して攻撃に転じたようだけど」
「なんて愚かな‥‥」
「そうだね。そのとき少し迷ったようだけど、撤退のチャンスだとして砦まで撤退に成功した」
「クルツは凄いわ! 冷静に判断できたのですね」
「しかし増援で増えた敵兵数と編成を見て、砦での防衛戦だと全滅すると読んで第2拠点への撤退を命令した。クローン兵は連れていけないから内門に待機させ逃げる時間稼ぎに使ったようだよ」
「クローン兵ですか‥‥複雑ですね。お父様が反対されているのに結局は戦場に送り出している。でも今回はそれがなければ撤退できなかったかも知れません」
「いや、巨人族は砦を落としたことに満足して追撃するつもりはなかったから無駄死にだね」
「‥‥そうですか」
複雑な心境だった。
「でもアモン兄さまのご説明をお聞きすると、クルツの判断は最良でお陰で犠牲者も最小限で済んだと思えます」
「うん。その通りだよ。最善だった。立派だったよ。良い武人だ」
「それでクルツはいつ首都に到着するか分かりますか?」
「迎えに行くつもりかい?」
「はい!」
「まったくラムは‥‥あと1時間後には発着場に着くよ」
「ありがとうございます!」
御礼を言って、アモン兄さまの部屋を出た。