第65話 下船

文字数 1,944文字

 ギランは大テラスに向かう途中で王城で働く子供を1人連れて行くことにした。
「おぬしの名前はなんと言う?」

「あぁ、ギラン様。ぼくは‥‥私はフランと言います」

「そうか。悪いがちょっと付き合ってくれ」

「でも仕事が!」

「そんなことはあとで良い。私からお前の上司にあとで連絡してやる」

「はい。わかりました」
 そうしてギランは、フランを引き連れ大テラスに到着した。

 上空を見上げると小型の飛行船が空中で停泊している。
『うむむ。やはり凄いものだな。我が国では考えられぬ』
 改めて飛行船を見てそう思った。

 そして飛行船に向かって、手をいっぱいに振るいながら、
「アトランティスの者ども、王が謁見を許可した。ここに降りてこい」
 と叫んだ。
『聞こえたのか?』

 そう思っていると飛行船から女性の声で、
「そちらのテラスに来られた方、そこに飛行船を降ろして良いと言うことでしょうか?」
 と返事があった。
 そのため、大きく手で〇を描いた。

 しばらくすると飛行船が降下してきた。
『本当に豪華な装飾だな。黄金のシャチのエンブレム付きか。確かに王家の者のようだ』
 王が謁見を許したこと事態意外であったが、指示に従うのみだ。

 その小型飛行船は、ゆっくりと大テラスに着陸した。



「私から下船します」
 そう(ラムディア)は、申し出た。

「それは、なりません!」
 ライゼンが大慌てで止めに入る。
 他の皆も驚いた表情をしていた。

「いいえ。大丈夫です。そう直感でわかりました。だから行きます」

「ラム様は言い出したら、本当に聞かぬ方だ‥‥」
 シルバーが呆れていた。

 こうして私、シルバー、ライゼン、カイオン、イーシュナの順に下船を開始した。



『降りてきたぞ。ナント! 最初に女が降りてきたぞ。あれが王女なのか? しかし輝くような金髪ではないな。(めかけ)の子なのか? なにか見覚えがある気もするが‥‥』
 そう思っていたところ、次に下船してきた男性に驚いた。

『あ! あの者は、ゴルン隊長の首を断ち切った銀髪だ!! うむむむ。あ奴を護衛につけてくると言うことは、やはり王族なのか?』
 あのときのゴルン隊長の戦いの一部始終を見ていたため、そう思えた。

 あと3人下船した。
『男が2人に、女が1人か。奇妙な組み合わせだな』
 ギランはそう思った。

「ラムディア王女の一行。いきなりの訪問、驚いたぞ。悪いが、ここで少し待っていてくれ。飛行船の中を確認させてもらうぞ。例の不思議な雪を持ってきてはおらぬか確認するぞ」

「構いません。機内には機長と操縦士がおりますが手をお出しにならぬようお願いいたします」

「約束しよう」
 そうギラン答えるとフランに対して、
「フラン。あの中に入って何か変な物がないか確認して参れ」

「でも僕、よくわからないですよ」

「違和感のあるものがあったらで良い」

「わかりました。いってきます」
 そういってフランは渋々、中に入っていった。



 中に入ると何がなにやら、さっぱりわからなかった。
 小人が2人いる。
『といっても2mの僕より一回り小さいくらいだったけど』

「えっと、僕は中を見に来ただけなので何もしません」
 そう伝えた。

「わかりました。疑問があればお聞きください。正直にお答えします」
 小人の1人がそう言ってきたので色々と質問したけど、ちゃんと丁寧に答えてくれた。
 でも、見るものすべてが初めてばかりだからワクワクした。
 結局、異様なものはなにもなかった。

「ありがとう。じゃ僕は降りるね」
 そう言って下船した。

「ギラン様、わからないなりに色々と質問してきました。親切に答えてくれたのですが正直、よく理解はできませんでした。でも、変な物はなかったです」
 そう報告した。



「そうか、フランご苦労だった。持ち場に戻ってよいぞ。あとで上司の元へ伺うゆえ、叱られそうになったらそう言いなさい」
 そうフランに命じると、楽しそうに帰っていった。

「ご一行。お待たせした。それでは王の元へ案内するので付いてきてくれ」
 そういって先行して歩き始めた。



「わかりました」
 そう答えて(ラムディア)は、その者のあとを追った。
 順番は私、シルバー、イーシュナ、ライゼン、カイオンだ。

『ふぅぅぅ。これで第2関門突破ね。いよいよラグナロク王との謁見だわ』

「私がラムディアです。貴方はギランさんという名で良いのですね」
 そう語りかけた。

「そうだ」
 ぶっきらぼうな返事が返ってくる。
『でも子供に話をしていたときには優しい感じがしたわ。身体が大きくても、やっぱり人間だんだわ』
 そう思った。

 しばらく黙ってついていくと時折、巨人とすれ違い凄い目で見てきた。
『無理もないわね。ここの人たちはアトランティス人を見るのは初めてでしょうから』
 そう言って気にしないようにした。

 そして大きな豪華な扉の前に辿り着いた。
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登場人物紹介

アトランティス王家最後の第二王女で、本作の主人公

ラムディア・ラァ・アトランティック

「皆さま、どうかアトランティスの悲劇を現文明で繰り返さないようお願いします」

アカシック王

アトランティス滅亡を防ぐため降臨した救世主(メシア)

「愛とは奪うものではなく与えるものである。爽やかに吹き渡る風のように」

「創造神は人に完全なる自由を与えた。しかし自由には責任が伴うのだ」

後世、イエス・キリストとして降臨する。

アモン(第一王子)

アカシック王の後継者。

アカシック王の第一子。

性格は温厚で優しく、遠視や未来を視る能力を持つ。

重要な役割を負うことになる。

ラファティア(第一王女)

アカシック王の2番目の子で、巫女を務める。

能力が高く結界の守護者。

性格は早くに亡くなった母のように母性の高く思いやりに満ちている。

アーク(第二王子)

アカシック王の3番目の子で、近衛隊長を務める。

性格は正義感が強いが、気性が少し荒い。

曲がったことが嫌い。

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