第22話 大部隊

文字数 2,163文字

 それから10日後、アソ地区での戦端が開かれた。
 なんと巨人族500人のうち、200人が片手斧と盾を装備していた。
 これだと3:1では分が悪い。

 我がアトランティス軍は、撤退する事態になってしまった。
「ファーレン様の早い決断で被害が少ない段階で拠点まで撤退できましたが、今後どうなさいますか?」
 副拠点指令のクルツが、ファーレンに話かけた。

「200人も片手装備でくるとは予想外だった。これでは分が悪い。更なる増援が必要だ。偵察舟からの情報は人数だけで装備までは確認できなかったから仕方がないが‥‥」

「軍部は今回精一杯、飛行船、潜水艇をフル稼働して1200人もの増援を派遣してくれた。更なる増援を依頼したが日数を要するとの回答だった」

「それでは間に合わない。巨人族は追ってこず、海岸線で一旦休息をとって体制を整えているが明日にはまた仕掛けてくるだろう」

 拠点での作戦会議で各隊長が集まり、作戦を立て直しているが結局は支援部隊に剣を持たせ攻撃部隊化する必要があることだけは全員一致していた。
 一致はしたが、そうすると光弾での援護射撃部隊の人数が圧倒的に足りないのだ。

 正直、悩んでいた。
 当てはある。
 先日、ラムディア王女から通信で、
「いざとなったら光銃モードでの支援を行います。そのために、あれから射撃訓練を重ねてきました。女性の近衛隊75人と私76人全員で行けるから、必要になったら連絡してください」
 と連絡があったからだ。
 
『しかし姫様を、また戦場に来させるなど臣下として出来ない』
 との想いが強く、決断できなかった。

「とにかくこちらからは攻めにいかず、この拠点を砦として対抗するしかない」
 と皆に言う。

「持久戦ですか。軍部の増援の時間を稼ぐのですね。しかしながら、正直申し上げます。その作戦では無理です」
 クルツが意見する。

『わかっている。わかってはいるのだ‥‥』
 ファーレンは苦しかった。

 そこに、通信役の兵が訪れた。

「ファーレン様、お耳を」

「ん? どうした? 何かあったのか?」
 と耳を貸す。

「ラムディア王女からファーレン様に通信が入っています。今すぐに繋いでくださいと」

「な‥‥なんだと!」
 驚いた。何故このようなタイミングで通信が入るのだ。

「皆、少し待っていてくれないか」
 そういって、その場から出て通信室に向かった。



「姫様、ファーレンでございます。如何いたしましたでしょうか?」
 と平気そうにファーレンがスクリーン通信に出た。

「ファーレン。気を使わなくて良いのよ」

「いえ、そのようなことはございません」

「では、何故あなたが拠点にいるの?」

「!」
 思わず言葉に詰まってしまった。

「私は、今の状況を把握しているわ。アモン兄さまに透視をお願いして事態を把握しているのよ」
 優しい言葉で語りかけた。

「一緒に戦った仲間じゃない。今から準備をして76人、王家の飛行船にそちらに行くからね」
 と一方的に通信を切った。

『さあ、急いで準備しなくてはね。とは言っても全員、訓練場に待機させているからそう時間は掛からないわね。飛行船の準備次第だわ』
 と思いながら訓練場へ向かった。

「シャレム、イスカ、テリア、ユリス、ソフィーア。集まって」
 と指示する。

 5人が駆け寄ってきた。
「前々から話はしていたけど、今回500人のうち200人が片手装備で攻めてきたわ」

「え?」
 シャレムが反応する。

「前線は拠点まで撤退したわ。軍部の更なる増員派遣を待っていては間に合わないの。だから私と一緒にアソ地区の拠点で戦って!」

「はい!」
 5人とも興奮しながら返事をした。

「いい? 今回は訓練してきた光銃モードでの支援射撃のみ。剣での戦闘には参加しないわ。私もね」

「かしこまりました」

「それでは隊のみんなに伝えて来て、またここに来て頂戴。今、飛行船の準備をさせているわ。1機は大型だから2機で76人乗れるから、日が暮れる前には向かうわよ。あと今夜は飛行船でお泊りよ。お風呂は入れないから飛行船の準備中に訓練場のお風呂に入っておいで」
 とウィンクした。

「はい!」
 と言って各隊に戻っていった。

 しばらく騒めきが起こった。
 それはそうだろう。
 近衛隊が戦場に行くのだから当然だ。
 でも、その可能性は前の実戦後から皆に伝えてはきた。

 10分もすると5人が戻ってきた。
「隊の全員に伝えました。みな、この日が来るだろうと覚悟はしていましたので大丈夫です。だた、やはりお風呂には入っておきたいと申しております。申し訳ございません」

「良いわよ。そう言ったじゃない。飛行船の準備に時間が掛かるからお風呂の時間くらいあるわよ。でも長湯はできないけどね。では全員急いでお風呂に入ってまた15時にここに集まりましょう」
 と言って解散した。



 私も一旦、王宮に戻り入浴した。
 そして装備を整えていると、飛行船の準備ができたとの知らせがあった。
『いいタイミングね』

「念のため確認するけど、バッテリーパックは指示通りに積み込んである?」
 と確認する。

「はい。只今積み込み中でございますが、もう15分ほどで終わると聞いております」

「そう。ありがとう。行ってくるわね」

 お父様に挨拶し、水晶神殿に足早に向かい皆の無事帰還を祈り、ラファティア姉さまへの挨拶を済ませると、訓練場に向かった。
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登場人物紹介

アトランティス王家最後の第二王女で、本作の主人公

ラムディア・ラァ・アトランティック

「皆さま、どうかアトランティスの悲劇を現文明で繰り返さないようお願いします」

アカシック王

アトランティス滅亡を防ぐため降臨した救世主(メシア)

「愛とは奪うものではなく与えるものである。爽やかに吹き渡る風のように」

「創造神は人に完全なる自由を与えた。しかし自由には責任が伴うのだ」

後世、イエス・キリストとして降臨する。

アモン(第一王子)

アカシック王の後継者。

アカシック王の第一子。

性格は温厚で優しく、遠視や未来を視る能力を持つ。

重要な役割を負うことになる。

ラファティア(第一王女)

アカシック王の2番目の子で、巫女を務める。

能力が高く結界の守護者。

性格は早くに亡くなった母のように母性の高く思いやりに満ちている。

アーク(第二王子)

アカシック王の3番目の子で、近衛隊長を務める。

性格は正義感が強いが、気性が少し荒い。

曲がったことが嫌い。

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