第62話 グリーンラッド国へ1

文字数 1,619文字

 水晶神殿につくとともに、ラファティア姉さまに今回の件をご報告した。
 流石のお姉さまも眩暈(めまい)がしたようで、その場でへなへなと倒れた。

「ラファ姉さま!!」
 そっと抱き起す。

 お姉さまが、私の腕の中からじっと見つめてきた。
「お父様が許可されたと言うのは本当ですか?」

「はい! 許可してくださいました」

「なんて‥‥なんて無謀なことを」
 と今度は泣き出した。

「大丈夫です。お父様を説得する際にも申し上げましたが、圧倒的にアトランティスが有利な状況で王家の私を処刑なり、捕虜にすればアトランティスの宣戦布告を招きます。さすればグリーンラッドは全滅します。だから大丈夫です」
 力強く伝えた。

「あなたって子は、本当にハラハラさせて‥‥困った子だわ。私は心臓が破れそうですよ」

「申し訳ございません。でも今回、巨人族に侵攻させてしまうと、それこそ政府の思うつぼです。きっと完成したあの兵器を使います。そのようなことは絶対避けなければなりません!」

「ラムが言いたいことはわかるわよ。でも何故あなたが行くの?」

「私は王家の者です。その資格は充分にあると自覚しています。誰かが行かなくてはなりません」

「ではアークではいけないのですか? あなたは女性なのですよ」

「アーク兄さまは気性が少々荒いところがあります。我が兄で失礼とは承知ですが交渉には不向きと思います。ラファ姉さまやアモン兄さまでは、やはり向いていないと思います。だから私が行きます!」

「なんてことを‥‥」
 お姉さまが大泣きをし始めた。
 初めて見るお姉さまの姿だった。

「ラファ姉さま、心配をおかけし本当に申し訳ございません。ですがアトランティスを滅亡から救いたいのです! そのためなら私の命など軽いものです」

「そんなこと言うものではないわ!!」
 とてもキツイ言葉でした。ラファティア姉さまらしくない‥‥

「もう決めたのです。カルディアにも相談しますし、シルバーにも同行してもらいます。絶対に生きて帰って参ります!!」

「‥‥言っても無駄なのね」

「はい。お許しください」

 するとお姉さまは立ち上がり、私を思い切り抱きしめてくれた。
 いつまでも、いつまでも‥‥



 お姉さまが私を開放すると、
「イーシュナ。こちらに来てください」

 すると駆け足で、巫女姿の女性が現れた。
 私も無論、知っている。
 ラファティア姉さまの護衛役で、剣の腕も立ち、結界維持にも重要な補佐役でもある。

「ラファティア王女。何用でお呼びでしょうか?」
 イーシュナがお姉さまに問う。

「この子が‥‥ラムディアが近々グリーンラッド国へ向かい、ラグナロク王を説得に行くのです。大変危険だけど、あなたには護衛として一緒に行って欲しいの」

「!! それは本当の話ですか?」

「こんなことを嘘でも言えないわよ」

「そうでございますね。かしこまりました。ラムディア王女をお護りいたします」

「ありがとう。よろしくお願いいたします」
 ラファティアお姉さまが、イーシュナの手を握って心からの感謝を伝えてくれた。

「そのような‥‥ラファ姉さまの一番頼りになる護衛を私めになど、できません!」

「ダメよ。私がしてあげれるのはこれくらいしかないの。イーシュナは頼りになるわ。だから彼女を護衛として連れて行くことが私からの条件です」
 お姉さまの決意が伝わってきた。

「わかりました。ありがとうございます。ご厚意に感謝いたします」
 そう伝えた。

 イーシュナに向かい直し、
「イーシュナさん、巻き込むつもりはなかったのよ。ごめんなさいね」
 そう頭を下げた。

「ラムディア王女。頭をお上げください。私もお受けした以上、この命をもってしてもお護りする覚悟でございます」

「それでは、よろしくお願いします」

「かしこまりました」
 こうして、私の同行者にイーシュナが加わった。

 その後、一緒に向かうメンバーが決まった。
 私、シルバー、イーシュナの他に、近衛隊からライゼン部隊長、腕の立つカイオンの5人となった。
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登場人物紹介

アトランティス王家最後の第二王女で、本作の主人公

ラムディア・ラァ・アトランティック

「皆さま、どうかアトランティスの悲劇を現文明で繰り返さないようお願いします」

アカシック王

アトランティス滅亡を防ぐため降臨した救世主(メシア)

「愛とは奪うものではなく与えるものである。爽やかに吹き渡る風のように」

「創造神は人に完全なる自由を与えた。しかし自由には責任が伴うのだ」

後世、イエス・キリストとして降臨する。

アモン(第一王子)

アカシック王の後継者。

アカシック王の第一子。

性格は温厚で優しく、遠視や未来を視る能力を持つ。

重要な役割を負うことになる。

ラファティア(第一王女)

アカシック王の2番目の子で、巫女を務める。

能力が高く結界の守護者。

性格は早くに亡くなった母のように母性の高く思いやりに満ちている。

アーク(第二王子)

アカシック王の3番目の子で、近衛隊長を務める。

性格は正義感が強いが、気性が少し荒い。

曲がったことが嫌い。

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