第41話 誤算
文字数 2,090文字
ガハルの予想通り、その10日後に戦端が開かれた。
アチ地区拠点の長だったファーレンは、半年ほど前に西方拠点に異動となっていた。
名目では、”疲れを癒して欲しい”との通達であったが、ガハルの頭の中にはラムディア姫との信頼関係が気にくわなかった。
将来、ファーレンが王家側につくのが嫌だったのだ。
ファーレンに政府としても恩を売っておきたかったため、そうしたのだ。
よって現在は、クルツが拠点長に昇格していた。
*
「よし! ガハル最高司令官の読み通りに来たぞ。戦の準備を始めろ!」
とクルツが号令をかけた。
士気は高い。
巨人族の編成は700人中、クロスボウ部隊120人、片手武器部隊200人、両手武器部隊が380人と予想よりクロスボウ部隊の人数が少なかった。
『ガハル最高司令官が、我が軍に不利な編成として考えられたのが功を奏したのか一番厄介なクロスボウ部隊の人数が少なくて良かった』
クルツは内心、ホッとしていた。
クロスボウ部隊は、クローン兵を盾にして接近すれば容易 く倒せる。
片手武器部隊は、更に威力が増し、命中精度の向上した拳銃モードの光弾牽制の連携で倒せる。
両手武器部隊は、攻撃範囲が広く厄介ではあるが戦いなれているし、応援部隊にもコツを伝えてある。
『これなら時間はかかるが勝てる』
そうクルツは、読んでいた。
*
戦端が開かれてから1時間が経過した。
『ん? なんだこの妙な感覚は?』
とクルツと思い始めた。
最前線で戦い続けた強者のみが感じる直感だ。
しかし違和感は感じるのだが、まだハッキリしない。
そのため、そのまま戦闘を継続していた。
更に1時間が経過。
『やはり、おかしいぞ。敵がイヤに消極的ではないか? 何か時間稼ぎをしているような‥‥』
ビリビリ直感的に、危険が迫っているのがわかった。
通信機を各隊のリーダーへ繋ぐ
「なにかおかしいと思わないか? イヤにあの攻撃的な奴らが消極的ではない?」
すると、
「私も、そう思い始めたところです」
「同感です」
と賛同の答えは返ってくるが反論はまったくなかった。
クルツは、
「奴ら、時間稼ぎをしているのではないか? まさか増援が来るのではないか?」
と言うと、
「今までに巨人が2段階で攻めてきた事例はないはず。奴らは力推ししかない能無しものですぞ」
と反論があるが、自信がなさそうな声であった。
「クロスボウ部隊の攻撃も甘い。当初は片手武器部隊との連携が今回の作戦かと思っていたが‥‥どうも違うようだ」
頭がピリピリする。
クルツは、そう思うや否や決断した。
「各隊、クローン兵を盾に徐々に後退しろ。拠点の砦まで撤退しよう」
と命令した。
「なんと仰せた? 撤退ですと? まだ我が軍の被害も少なく戦線は維持できます」
と意外にも反論があった。
「あなたは援軍の方ですよね。今回の現場司令官は私です。従ってください」
と強制した。
「は! 命令とあれば」
と従ってくれた。
じりじりと後退していくと敵も距離ととりつつ接近してくる。
後退しながらも最前線では戦いが続いている。
『早く‥‥早く撤退しないと危険だ』
クルツは、焦り始めた。
「全員、急げ! できるだけ早く砦まで撤退するのだ!」
と急かせる。
撤退の速度は上がっているが、まだ遅い。
すると、巨人のクロスボウ部隊が引いていったのだ。
「これは反撃のチャンスではないですか?」
と各隊長から次々と声が届く。
『確かにクロスボウ部隊がいなければ、こちらが有利だ。しかし奴らにクロスボウ部隊を引かせる理由がない。罠だ』
クルツは、冷静に判断した。
「あなた方の意見は分かる。だが、これは罠だ。これに乗じて撤退するぞ!」
と伝えた。
しかし一部の隊長からは、
「いや。チャンスを活かさないのは臆病者のすることだ。我が隊は反撃にでます」
と勝手に動き出した。
何隊かが連携して、一緒に反撃に向かってしまった。
「命令違反だぞ!」
「軍法会議ものだぞ! わかっているのか!」
続けざまに伝えるが、返事がない。
『どうする。援軍部隊は実戦経験が浅い、敵を甘く見過ぎている』
一斉に反撃にでるかとも思ったが、
『いやダメだ。これは直感だが、絶対に罠だ。確かに今までに事例はないが、巨人とて連敗続きでは作戦も考えて来よう。今一度、戻ってくるように告げよう』
直ぐに行動に移した。
「命令違反者に告ぐ。これは罠だ。今すぐに戻ってこい! これは絶対命令だ」
と告げるが、戻ってくる気配はない。
『折角の撤退のチャンスなのだ。被害が浅いうちに砦に戻らねば』
こうして命令違反者は見捨てることに決めた。
「仕方ない。違反者は見捨てる。全員、砦まで撤退せよ。今すぐにだ。クローン兵もだぞ!」
と命令した。
「はい。了解しました」
クローン兵のリーダーから次々と答えが返ってくる。
そして、砦まで撤退することができた。
*
命令違反した者が、その後見たものは巨人部隊の後方からクロスボウ部隊が戻ってくるだけではなく、更に多数のクロスボウ部隊が迫ってくる風景だった。
そして、このことを砦まで報告するために戻ることも敵わず全員が戦死した。
アチ地区拠点の長だったファーレンは、半年ほど前に西方拠点に異動となっていた。
名目では、”疲れを癒して欲しい”との通達であったが、ガハルの頭の中にはラムディア姫との信頼関係が気にくわなかった。
将来、ファーレンが王家側につくのが嫌だったのだ。
ファーレンに政府としても恩を売っておきたかったため、そうしたのだ。
よって現在は、クルツが拠点長に昇格していた。
*
「よし! ガハル最高司令官の読み通りに来たぞ。戦の準備を始めろ!」
とクルツが号令をかけた。
士気は高い。
巨人族の編成は700人中、クロスボウ部隊120人、片手武器部隊200人、両手武器部隊が380人と予想よりクロスボウ部隊の人数が少なかった。
『ガハル最高司令官が、我が軍に不利な編成として考えられたのが功を奏したのか一番厄介なクロスボウ部隊の人数が少なくて良かった』
クルツは内心、ホッとしていた。
クロスボウ部隊は、クローン兵を盾にして接近すれば
片手武器部隊は、更に威力が増し、命中精度の向上した拳銃モードの光弾牽制の連携で倒せる。
両手武器部隊は、攻撃範囲が広く厄介ではあるが戦いなれているし、応援部隊にもコツを伝えてある。
『これなら時間はかかるが勝てる』
そうクルツは、読んでいた。
*
戦端が開かれてから1時間が経過した。
『ん? なんだこの妙な感覚は?』
とクルツと思い始めた。
最前線で戦い続けた強者のみが感じる直感だ。
しかし違和感は感じるのだが、まだハッキリしない。
そのため、そのまま戦闘を継続していた。
更に1時間が経過。
『やはり、おかしいぞ。敵がイヤに消極的ではないか? 何か時間稼ぎをしているような‥‥』
ビリビリ直感的に、危険が迫っているのがわかった。
通信機を各隊のリーダーへ繋ぐ
「なにかおかしいと思わないか? イヤにあの攻撃的な奴らが消極的ではない?」
すると、
「私も、そう思い始めたところです」
「同感です」
と賛同の答えは返ってくるが反論はまったくなかった。
クルツは、
「奴ら、時間稼ぎをしているのではないか? まさか増援が来るのではないか?」
と言うと、
「今までに巨人が2段階で攻めてきた事例はないはず。奴らは力推ししかない能無しものですぞ」
と反論があるが、自信がなさそうな声であった。
「クロスボウ部隊の攻撃も甘い。当初は片手武器部隊との連携が今回の作戦かと思っていたが‥‥どうも違うようだ」
頭がピリピリする。
クルツは、そう思うや否や決断した。
「各隊、クローン兵を盾に徐々に後退しろ。拠点の砦まで撤退しよう」
と命令した。
「なんと仰せた? 撤退ですと? まだ我が軍の被害も少なく戦線は維持できます」
と意外にも反論があった。
「あなたは援軍の方ですよね。今回の現場司令官は私です。従ってください」
と強制した。
「は! 命令とあれば」
と従ってくれた。
じりじりと後退していくと敵も距離ととりつつ接近してくる。
後退しながらも最前線では戦いが続いている。
『早く‥‥早く撤退しないと危険だ』
クルツは、焦り始めた。
「全員、急げ! できるだけ早く砦まで撤退するのだ!」
と急かせる。
撤退の速度は上がっているが、まだ遅い。
すると、巨人のクロスボウ部隊が引いていったのだ。
「これは反撃のチャンスではないですか?」
と各隊長から次々と声が届く。
『確かにクロスボウ部隊がいなければ、こちらが有利だ。しかし奴らにクロスボウ部隊を引かせる理由がない。罠だ』
クルツは、冷静に判断した。
「あなた方の意見は分かる。だが、これは罠だ。これに乗じて撤退するぞ!」
と伝えた。
しかし一部の隊長からは、
「いや。チャンスを活かさないのは臆病者のすることだ。我が隊は反撃にでます」
と勝手に動き出した。
何隊かが連携して、一緒に反撃に向かってしまった。
「命令違反だぞ!」
「軍法会議ものだぞ! わかっているのか!」
続けざまに伝えるが、返事がない。
『どうする。援軍部隊は実戦経験が浅い、敵を甘く見過ぎている』
一斉に反撃にでるかとも思ったが、
『いやダメだ。これは直感だが、絶対に罠だ。確かに今までに事例はないが、巨人とて連敗続きでは作戦も考えて来よう。今一度、戻ってくるように告げよう』
直ぐに行動に移した。
「命令違反者に告ぐ。これは罠だ。今すぐに戻ってこい! これは絶対命令だ」
と告げるが、戻ってくる気配はない。
『折角の撤退のチャンスなのだ。被害が浅いうちに砦に戻らねば』
こうして命令違反者は見捨てることに決めた。
「仕方ない。違反者は見捨てる。全員、砦まで撤退せよ。今すぐにだ。クローン兵もだぞ!」
と命令した。
「はい。了解しました」
クローン兵のリーダーから次々と答えが返ってくる。
そして、砦まで撤退することができた。
*
命令違反した者が、その後見たものは巨人部隊の後方からクロスボウ部隊が戻ってくるだけではなく、更に多数のクロスボウ部隊が迫ってくる風景だった。
そして、このことを砦まで報告するために戻ることも敵わず全員が戦死した。