第21話 戦への準備
文字数 1,762文字
それから、また1ヶ月が経過しお父様のご法話の4回目も無事に終わった数日後、アソ地区つまり北の拠点から知らせが入った。
久しぶりに巨人族が攻めてくるというものだ。
しかも大部隊で‥‥
偵察舟によると、今までにない大部隊で500人ほどで一気に攻めてくるという恐ろしい知らせであった。
「やはり今回の侵攻のために色々と準備していたようだ」
ガハルは自分の推測が当たったとは思ったが、内容が内容だけに喜べなかった。
「500人だと! アソ地区の300人では対抗できん。基本3:1で戦うのだ。あと1200人も増援しなくてはならん。飛行船と潜水艇で間に合うか? 天候によっては飛べない日もある」
焦りが生じていた。
「とにかく、まごついている暇はない。早速、増援の指示を出し、早急に送り込まねば」
と急いて部下を招集した。
*
その日の夜食で、その話題が出た。
「なんだと! 巨人が500人もか! 増援は間に合うのか?」
アーク兄さまが怒っていらっしゃる。
「軍も長い期間、侵攻してこなかったため念のため、準備はしていたようです。しかし、これほどの大部隊でくるとは思わなかったようです」
アモン兄さまが答える。
「ガハルも馬鹿ではないのだな。そうか警戒はしていたのか」
「ちゃんと前回のラムの光弾での効果を認め牽制攻撃部隊を作って訓練もしていたようです」
「ほほー。そいつは頼もしいな。ラム、お前の活躍が認められ採用されたのは意外だったが良かったな」
「はい! あのときの私にはそれしかできなかったので実行したのですが、良かったです」
と素直に答えた。
「そうは言っても単なる思いつきではなだろう?」
「はい。勿論、あのときの私に何ができるのか一生懸命に考えた結果です」
「お前は真面目だからな」
アーク兄さまが褒めてくれた。
「次は俺が戦場に行こうと思っていたが、この状況では拠点部隊が俺たち王族防御に戦力を割かなくてはならなくなるからな。やめておこう」
冷静に判断していた。
「そもそも近衛隊が戦場に、ほいほい出向いていくのはオカシイのはでないですか?」
ラファティア姉さまが釘を刺す。
「いえ。ラファ姉、私も実戦を経験し、巨人族を相対してみたかったのですよ。ラムに先を越されてしまいましたが」
と反論する。
「確かに実戦経験は貴重だね」
アモン兄さまが同意した。
「結局は、政府と軍部に任せるしかないな」
「そうよ、アーク。そのための軍部なのですからね」
ラファティア姉さまが正論を言い、アーク兄さまもバツが悪い様子だった。
「私の部隊。つまり女性の近衛隊には全員、光銃モードでの射撃訓練を、あれから随分と行って参りました。いざとなったら、応援に駆け付けたいと存じます」
私は、そう言ってみた。
「本当に援護射撃だけのつもりなのか?」
アーク兄さまから疑いの目を向けられる。
「前回のことはお詫びします。しかし今度は支援に徹します」
「今度は‥‥か。その次は戦いたいって聞こえるぞ」
「あっ」
「このじゃじゃ馬娘め。ラムの腕がいいのは俺も知っている。前回、実際に巨人に対抗できたのだからな。しかし他の女性部隊には無理だぞ」
「はい。あのシャレムさえ、直ぐにやられてしまいましたので承知しています。ですから支援に徹すると申し上げました」
「おう。ちゃんと学んでいたか」
「アーク兄さまの意地悪」
とぷくっとほほを膨らませた。
「ラムが俺に先んじて実戦を経験してしまったからな。近衛隊長の俺の立場がない」
「はい‥‥申し訳ございません」
「一応、ガハルには俺から伝えておくよ」
と結局、アーク兄さまは認めてくださった。
「ありがとうございます。今度は約束を守ります」
「そうしてくれよ。天に還ったお母さまもきっと心配しているぞ」
「はい」
ルディア・ラァ・アトランティック
お母様の名だ。
私が8歳のとき、病で天に還っていった。
優しいが凛とした気品のある人だった。
最後の言葉は、
「みんな、私の子供として生まれて来てくれてありがとう。幸せだったわ。あなたたちが大人になるまでは一緒に過ごしたかったけど、ごめんね。お父様は将来、大切なお役目を果たさなくてはならなくなるから、みんなで支えてあげてね」
だった。
思い出すと、
『お母様はお父様が、今のようにご活動されることを知っていたみたい』
と思った。
久しぶりに巨人族が攻めてくるというものだ。
しかも大部隊で‥‥
偵察舟によると、今までにない大部隊で500人ほどで一気に攻めてくるという恐ろしい知らせであった。
「やはり今回の侵攻のために色々と準備していたようだ」
ガハルは自分の推測が当たったとは思ったが、内容が内容だけに喜べなかった。
「500人だと! アソ地区の300人では対抗できん。基本3:1で戦うのだ。あと1200人も増援しなくてはならん。飛行船と潜水艇で間に合うか? 天候によっては飛べない日もある」
焦りが生じていた。
「とにかく、まごついている暇はない。早速、増援の指示を出し、早急に送り込まねば」
と急いて部下を招集した。
*
その日の夜食で、その話題が出た。
「なんだと! 巨人が500人もか! 増援は間に合うのか?」
アーク兄さまが怒っていらっしゃる。
「軍も長い期間、侵攻してこなかったため念のため、準備はしていたようです。しかし、これほどの大部隊でくるとは思わなかったようです」
アモン兄さまが答える。
「ガハルも馬鹿ではないのだな。そうか警戒はしていたのか」
「ちゃんと前回のラムの光弾での効果を認め牽制攻撃部隊を作って訓練もしていたようです」
「ほほー。そいつは頼もしいな。ラム、お前の活躍が認められ採用されたのは意外だったが良かったな」
「はい! あのときの私にはそれしかできなかったので実行したのですが、良かったです」
と素直に答えた。
「そうは言っても単なる思いつきではなだろう?」
「はい。勿論、あのときの私に何ができるのか一生懸命に考えた結果です」
「お前は真面目だからな」
アーク兄さまが褒めてくれた。
「次は俺が戦場に行こうと思っていたが、この状況では拠点部隊が俺たち王族防御に戦力を割かなくてはならなくなるからな。やめておこう」
冷静に判断していた。
「そもそも近衛隊が戦場に、ほいほい出向いていくのはオカシイのはでないですか?」
ラファティア姉さまが釘を刺す。
「いえ。ラファ姉、私も実戦を経験し、巨人族を相対してみたかったのですよ。ラムに先を越されてしまいましたが」
と反論する。
「確かに実戦経験は貴重だね」
アモン兄さまが同意した。
「結局は、政府と軍部に任せるしかないな」
「そうよ、アーク。そのための軍部なのですからね」
ラファティア姉さまが正論を言い、アーク兄さまもバツが悪い様子だった。
「私の部隊。つまり女性の近衛隊には全員、光銃モードでの射撃訓練を、あれから随分と行って参りました。いざとなったら、応援に駆け付けたいと存じます」
私は、そう言ってみた。
「本当に援護射撃だけのつもりなのか?」
アーク兄さまから疑いの目を向けられる。
「前回のことはお詫びします。しかし今度は支援に徹します」
「今度は‥‥か。その次は戦いたいって聞こえるぞ」
「あっ」
「このじゃじゃ馬娘め。ラムの腕がいいのは俺も知っている。前回、実際に巨人に対抗できたのだからな。しかし他の女性部隊には無理だぞ」
「はい。あのシャレムさえ、直ぐにやられてしまいましたので承知しています。ですから支援に徹すると申し上げました」
「おう。ちゃんと学んでいたか」
「アーク兄さまの意地悪」
とぷくっとほほを膨らませた。
「ラムが俺に先んじて実戦を経験してしまったからな。近衛隊長の俺の立場がない」
「はい‥‥申し訳ございません」
「一応、ガハルには俺から伝えておくよ」
と結局、アーク兄さまは認めてくださった。
「ありがとうございます。今度は約束を守ります」
「そうしてくれよ。天に還ったお母さまもきっと心配しているぞ」
「はい」
ルディア・ラァ・アトランティック
お母様の名だ。
私が8歳のとき、病で天に還っていった。
優しいが凛とした気品のある人だった。
最後の言葉は、
「みんな、私の子供として生まれて来てくれてありがとう。幸せだったわ。あなたたちが大人になるまでは一緒に過ごしたかったけど、ごめんね。お父様は将来、大切なお役目を果たさなくてはならなくなるから、みんなで支えてあげてね」
だった。
思い出すと、
『お母様はお父様が、今のようにご活動されることを知っていたみたい』
と思った。