第4話 修練

文字数 2,254文字

 昼食後30分ほど休憩をとったあと、宮廷でランニングをし体を温めた。
 そして、修練場に向かった。



 500名ほど近衛兵が修練の出来る場所であるため、大変広い。
 私は、まずアーク兄さまに挨拶をした。

「アーク兄さま、遅くなり申し訳ございません。本日はこれから参加いたします」

「ん? 今日も歴史資料館で歴史を振り返ってくると言ってだろ?」

「はい。そのつもりでしたが、午前中で結構進みました。あと昨夜、兄さまがおっしゃったように2日もサボっては体がなまります」

「ははは。そうだな。お前らしくて良い」

「それでは、行ってきます」

「ああ、またな」

 次に、師匠のシルバーに挨拶へ向かった。
「シルバー、昨日は申し訳ない。そして本日も遅くなり失礼しました」

「おや、ラム様。事情はアーク様からお聞きしておりますゆえ、大丈夫でございます」
 とニッコリと迎えてくれた。

「元々、近衛隊の修練はシルバーにお任せしているのが正直なところです。いつも、ありがとうございます」

「勿体ないお言葉。こちらこそ、ありがとうございます。さぁ、女性陣がラム様をお待ちですよ。ささっ、どうぞ向かってくださいまし」

「はい。早速、行って参ります」
 と女性の近衛隊の修練場へ向かった。



 私の姿を見ると、リーダー格のシャレム、イスカ、テリア、ユリス、ソフィーアが集まってきた。
 シャレムが片膝を落として、
「ラムディア姫、お待ちしておりました。昨日はおいでにならなかったので心配いたしました。事情はシルバー様よりお聞きしておりますので、ご安心ください」
 と挨拶してきた。

「シャレム。あなた、わざと言ってるわね。やっぱり連絡もせずにサボったから怒ってるの?」

「いいえ。全然でございます。ラ・ム・ディ・ア・ひ・め・さ・ま」

『‥…相当、怒っているわね。そりゃそうね』
「えっと、皆さんごめんなさい。昨日の朝のお祈り時に急にインスピレーションがあってね。つい突っ走ってしまったの」
 お辞儀をして謝った。

 ソフィーアが、
「シャレムー、姫様もお詫びされているのですから許して差し上げたら?」
 と言うと、

「ふぅ~、姫様! ちゃんと連絡くらいはしてくださいね!!」
 そう言って、立ち上がってニッコリしてくれた。

「はい。今後は、必ずそういたします」
『シルバーには伝えたのだけど‥…、と言っても言い訳よね』
「さぁ、修練再開しましょう!」
 と号令をかけた。

 一同が、「はっ!」と気合を入れて、それぞれの持ち場に帰っていった。
『さて、今日私はイスカの隊の番ね』
 そう思い、イスカについて行った。

「姫様、本日は私の隊ですか?」

「そうです。順番ですからね。昨日は本当にごめんなさいね」

「いえいえー、シャレムだけむくれていただけですよ」
 優しく微笑んで答えてくれた。

 イスカ隊の場所に到着するとイスカが、
「さぁ、みんな。本日は姫様が直々に相手をしてくださいますよ」
 と言うと一同が片膝を置き、

「姫様、本日はよろしくお願いいたします」
 と挨拶してくれた。

「はい。こちらこそ、よろしくお願いしますね。早速、順番に行くわよ!」

 最初に、コリンの前に立った。
 そして、お互い礼を取り木剣での打ち合いが始まる。
「さぁ、コリン。遠慮なく掛かっておいで!」

「それでは、参ります。はぁーーー」
 と剣で突いてきた。

 それをひらりと体を回転させながら避けると、回転を利用してコリンの右小手のガードに木剣を叩きつけた。
 ぼとっと音がして、コリンの木剣が地に落ちる。
「参りました!」

「最初に突きでくるとは思わなかったから、なかなかよ。でもモーションで読めちゃったよ。ちょっと気合を入れ過ぎたのかしら?」

「は、はい。つい意表を突こうとして気合を入れ過ぎてしまいました。しかし姫様の優雅なあの回転するような動きには、見とれてしまいます」

「ありがとう。私は攻守ともに()を描くのが合っているの。なかなかでしょ?」
 とウィンクしてみせた。

 コリンがしばらく、ぼ~と眺めていたので、
「コリン? どうしたの?」

「いえ。姫様の美しさに見とれてしまいました」

「あ‥‥、そうなのね。ありがとう。素直に喜んでおくわね」

「は、はい!」
 元気よく返事が返ってきた。

「さぁ、まだまだこれからよ」
 と打ち合いが続き、その度にコリンへのアドバイスをした。



 そのように隊、全員との打ち合いを済ませると修練終了の音楽が流れた。
 イスカが、
「イスカ隊、全員集合!」
 と号令をかけると、一同が迅速に集まってきた。

「姫様、本日は私の隊への修練をしてくださいまして、ありがとうございました」
 と全員が、お礼を述べてくれた。

「はい。みんなもお疲れ様でした。夜はゆっくりと休んでね」

「じゃ、あとはイスカお願いね」
 その場を任せた。

 後ろから、
「姫様は本当にお強いです。あの独特の動きは真似できません」
「本気で向かっていくのだけど、ぜんぜん相手にもなれませんでした」
「今日、褒められちゃった。もう眠れないよー」
「姫様、毎日この隊にいらっしゃらないかな」
 などと聞こえてくる。

『みんな、本当にいい子ばかりね。私は恵まれているわ』
 と喜びを噛みしめていた。

 振り返って見ると、丁度イスカが、
「はいはい。早く片付けをして帰りましょう。姫様も、ゆっくり休むようにおっしゃったでしょ」
 と指示すると、隊員は見事な動きで片づけ始めた。

『うんうん。みんな、ゆっくり休んでね』
 心の中でそう声をかけてから、シルバーとアーク兄さまに挨拶をし、水晶神殿で夕刻のお祈りを済ませ王宮に戻った。
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登場人物紹介

アトランティス王家最後の第二王女で、本作の主人公

ラムディア・ラァ・アトランティック

「皆さま、どうかアトランティスの悲劇を現文明で繰り返さないようお願いします」

アカシック王

アトランティス滅亡を防ぐため降臨した救世主(メシア)

「愛とは奪うものではなく与えるものである。爽やかに吹き渡る風のように」

「創造神は人に完全なる自由を与えた。しかし自由には責任が伴うのだ」

後世、イエス・キリストとして降臨する。

アモン(第一王子)

アカシック王の後継者。

アカシック王の第一子。

性格は温厚で優しく、遠視や未来を視る能力を持つ。

重要な役割を負うことになる。

ラファティア(第一王女)

アカシック王の2番目の子で、巫女を務める。

能力が高く結界の守護者。

性格は早くに亡くなった母のように母性の高く思いやりに満ちている。

アーク(第二王子)

アカシック王の3番目の子で、近衛隊長を務める。

性格は正義感が強いが、気性が少し荒い。

曲がったことが嫌い。

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