第67話 会談
文字数 2,172文字
「はい。現在、ラグナロク王は我が国に対して侵攻を開始していると存じます」
「いかにも、そうだ」
「今回の侵攻を中止して頂きたいのです!」
「まぁ、そういう話であろうな。それだけではあるまい。話せ」
「1年以上前に我が国の北方を占領されましたが我が国が奪還したこと、お忘れではないと存じます」
「あの不思議な雪のことだな」
「はい。そうです。あれは、まだあの段階では試作品でした。現在は兵器として完成しており威力や保有数が1年前と比較にならなくなっております」
ラグナロク王が思わず立ち上がり、
「なんだと! あれで開発途中だったの申すのか?」
と問うてきた。
「左様です」
「それならば一層、我が国が不利になっているのだな。優勢であるアトランティスがなにゆえ、こうして交渉にきたのだ。戦えば勝てるのであろう?」
「はい。また敗退しても、軍はあの完成した兵器を使うでしょう。そうなれば、グリーンラッド国は大きな痛手をこうむります」
「何故、手を差し伸べてきたのだ?」
「政府や軍はいざ知らず私ども王家の者は、かの兵器自体の存在をなくしたいのです」
「何故だ? 圧倒的有利になった現状で、それを捨てる? 訳が解らんぞ」
「かの兵器は人工的に気象を変化させるのです。それは神の怒りを買うものです。次に使用した場合にはガイア様が反作用を起こされると、守護天使との交信でお聞きしました」
「つまり、その気象を操る兵器を使うと我が軍には勝てるが、アトランティスに災厄が訪れると言いたいのか?」
「その通りです!!」
「そのことを、アトランティスの政府や軍は知っておるのか?」
「いえ。知りません。聞く耳を持っておりません」
「なるほど、ラムディア姫の主張は理解した。それで和平を望んでおるのだな?」
「左様にございます。食糧については和平を結べは交易も可能です。巨人族の方々は身体が大きく力持ちでございます。しかし科学力には力を入れておらず、そこが弱点になっています」
「言ってくれるな」
「真剣です。命を懸けてここに参りました」
「本当にラムディア姫は王家の者か? と思うほどだな。いや馬鹿にしている訳ではないぞ、感心しておるのだ」
「ご理解くださって感謝申し上げます」
御礼の述べ続いて話をする。
「互いの長所で、互いの短所を補い合えば、共に繁栄を迎えることができます。寒いこのグリーンラッド国でも温かく過ごせるような発明も我が国ならできると信じております。ですので、争いはやめて手を結ぼうではありませんか? ラグナロク王よ!」
「我が国の者は生来的に戦を好む傾向が強い。それは、どう思っておるのだ?」
「それはつまり力の発散方法を知らないだけでございます。その強力な腕力などを活かして出来ることがあるはずです。そうなれば、戦で発散しなくても良くなります!」
『いい感じだわ。この調子よ』
と私は自らを褒めていた。
ラグナロク王は、しばらく沈黙し思考を巡らせていた。
そして、
「話はわかった。だがアトランティス王家には実権がないと聞く、もし我が国がラムディア姫の提案に賛同したとしても王家でアトランティス軍を止めることができるのか?」
順調に話は進んでいたと思っていたけれど、一番痛いところをついてきた。
「確かに実権はございません。しかし現在はアカシック王が国民に対して毎月説法をして国民を教育しております。そしてアカシック王を支持する国民が急激に増えており、政府にとっても無視できないところまで来ております」
「しかし、止めれる保証はないのであろう?」
『ぐっ‥‥折角、ここまで来たのに』
悔しかった。
本来ならお父様にはトート神の声を聞くことができるため、実権を王家に返上しなくてはならないのに、時代がそれを風化させてしまったことが悔しかった。
「ラムディア姫は、真っ直ぐな性格なのだな。ここで色々と誤魔化すことをしない」
「正直申し上げますと、ラグナロク王に痛いところをつかれました」
「ふふふ。あっはっはっはっはっは」
ラグナロク王が、またも笑いだした。
「正直で良い。かえって誠実さが伝わってきた」
意外な言葉に、ラグナロク王の目を見つめる。
そして、
「今回の我が軍の侵攻開始を聞いて、すっ飛んできたのであろう」
「はい。その通りでございます」
「確約はできん。だがラムディア姫の提案には乗ることにする。しかし期限付きだ」
「ありがとうございます!!」
思わず笑顔になり、前のめりになって答えた。
「期限付きだと申したぞ。我もいつまでも軍を引くことはできんのだ」
と厳しい言葉が発せられた。
「1ヶ月だ。1ヶ月だけラムディア姫に政府や軍への説得時間を与える。しかしその期間内に説得できなければ、この話は無効だ。よって正式な調印はせぬ」
「わかりました。私が命がけで政府や軍を説得してみせ、和平交渉をグリーンラッド国にするようにしてみせます!」
「そのことに期待しよう。ではギランを連れていけ、舟は既にでているのだ。ギランに私の命令書を持たせ、攻撃開始を一時的に停止させる。よって、しばし待て」
「はい。待たせていただきます」
「うむ。では飛行船で待っているが良い。だがギランを乗せることはできるのか?」
「格納庫になりますが、お一人であれが可能です」
「よし。ギラン、わかったな」
「王よ。かしこまりました」
そうして会談は終わった。
「いかにも、そうだ」
「今回の侵攻を中止して頂きたいのです!」
「まぁ、そういう話であろうな。それだけではあるまい。話せ」
「1年以上前に我が国の北方を占領されましたが我が国が奪還したこと、お忘れではないと存じます」
「あの不思議な雪のことだな」
「はい。そうです。あれは、まだあの段階では試作品でした。現在は兵器として完成しており威力や保有数が1年前と比較にならなくなっております」
ラグナロク王が思わず立ち上がり、
「なんだと! あれで開発途中だったの申すのか?」
と問うてきた。
「左様です」
「それならば一層、我が国が不利になっているのだな。優勢であるアトランティスがなにゆえ、こうして交渉にきたのだ。戦えば勝てるのであろう?」
「はい。また敗退しても、軍はあの完成した兵器を使うでしょう。そうなれば、グリーンラッド国は大きな痛手をこうむります」
「何故、手を差し伸べてきたのだ?」
「政府や軍はいざ知らず私ども王家の者は、かの兵器自体の存在をなくしたいのです」
「何故だ? 圧倒的有利になった現状で、それを捨てる? 訳が解らんぞ」
「かの兵器は人工的に気象を変化させるのです。それは神の怒りを買うものです。次に使用した場合にはガイア様が反作用を起こされると、守護天使との交信でお聞きしました」
「つまり、その気象を操る兵器を使うと我が軍には勝てるが、アトランティスに災厄が訪れると言いたいのか?」
「その通りです!!」
「そのことを、アトランティスの政府や軍は知っておるのか?」
「いえ。知りません。聞く耳を持っておりません」
「なるほど、ラムディア姫の主張は理解した。それで和平を望んでおるのだな?」
「左様にございます。食糧については和平を結べは交易も可能です。巨人族の方々は身体が大きく力持ちでございます。しかし科学力には力を入れておらず、そこが弱点になっています」
「言ってくれるな」
「真剣です。命を懸けてここに参りました」
「本当にラムディア姫は王家の者か? と思うほどだな。いや馬鹿にしている訳ではないぞ、感心しておるのだ」
「ご理解くださって感謝申し上げます」
御礼の述べ続いて話をする。
「互いの長所で、互いの短所を補い合えば、共に繁栄を迎えることができます。寒いこのグリーンラッド国でも温かく過ごせるような発明も我が国ならできると信じております。ですので、争いはやめて手を結ぼうではありませんか? ラグナロク王よ!」
「我が国の者は生来的に戦を好む傾向が強い。それは、どう思っておるのだ?」
「それはつまり力の発散方法を知らないだけでございます。その強力な腕力などを活かして出来ることがあるはずです。そうなれば、戦で発散しなくても良くなります!」
『いい感じだわ。この調子よ』
と私は自らを褒めていた。
ラグナロク王は、しばらく沈黙し思考を巡らせていた。
そして、
「話はわかった。だがアトランティス王家には実権がないと聞く、もし我が国がラムディア姫の提案に賛同したとしても王家でアトランティス軍を止めることができるのか?」
順調に話は進んでいたと思っていたけれど、一番痛いところをついてきた。
「確かに実権はございません。しかし現在はアカシック王が国民に対して毎月説法をして国民を教育しております。そしてアカシック王を支持する国民が急激に増えており、政府にとっても無視できないところまで来ております」
「しかし、止めれる保証はないのであろう?」
『ぐっ‥‥折角、ここまで来たのに』
悔しかった。
本来ならお父様にはトート神の声を聞くことができるため、実権を王家に返上しなくてはならないのに、時代がそれを風化させてしまったことが悔しかった。
「ラムディア姫は、真っ直ぐな性格なのだな。ここで色々と誤魔化すことをしない」
「正直申し上げますと、ラグナロク王に痛いところをつかれました」
「ふふふ。あっはっはっはっはっは」
ラグナロク王が、またも笑いだした。
「正直で良い。かえって誠実さが伝わってきた」
意外な言葉に、ラグナロク王の目を見つめる。
そして、
「今回の我が軍の侵攻開始を聞いて、すっ飛んできたのであろう」
「はい。その通りでございます」
「確約はできん。だがラムディア姫の提案には乗ることにする。しかし期限付きだ」
「ありがとうございます!!」
思わず笑顔になり、前のめりになって答えた。
「期限付きだと申したぞ。我もいつまでも軍を引くことはできんのだ」
と厳しい言葉が発せられた。
「1ヶ月だ。1ヶ月だけラムディア姫に政府や軍への説得時間を与える。しかしその期間内に説得できなければ、この話は無効だ。よって正式な調印はせぬ」
「わかりました。私が命がけで政府や軍を説得してみせ、和平交渉をグリーンラッド国にするようにしてみせます!」
「そのことに期待しよう。ではギランを連れていけ、舟は既にでているのだ。ギランに私の命令書を持たせ、攻撃開始を一時的に停止させる。よって、しばし待て」
「はい。待たせていただきます」
「うむ。では飛行船で待っているが良い。だがギランを乗せることはできるのか?」
「格納庫になりますが、お一人であれが可能です」
「よし。ギラン、わかったな」
「王よ。かしこまりました」
そうして会談は終わった。