第49話 それぞれの断章#6

文字数 7,301文字

「あのバケモンみたいな男が、僧侶になる為の修行だって?」
 椅子に座って腕を組んでいる水川(ミズカワ)が赤ら顔に怪訝な表情を浮かべて云った。
「お前、起きてたのかよ」
「俺を除けモンにして、面白そうな話してンじゃねーよ。」
 水川の威勢の良い言葉を受けて、俺は降参したかのように無言で阿川(アガワ)に続きを即した。阿川は煙管煙草(キセルタバコ)を深く吸いながら話を続ける。
「暫くの間は、アイツも仏門を志していた。マァ、今となっては、其の時のヤツの心中にどんな思いが渦巻いていたのかは、知る由も無いのだが。」
 其処まで云うと、阿川は少し会話を止めて視線を床へ向けた。まるで過去の記憶を手繰るような、もの悲し気な顔をしている。
「…… …伊比亜(イビア)を最初に見つけたのは、俺なんだ。高野山の山中に傷だらけで倒れていたアイツを、偶々、修行で山に入っていた俺が見つけた。普段は滅多に人が立ち入らない場所だ。あのまま誰にも見つけられなかったら、恐らく伊比亜は命を落としていただろう。俺は身体中血だらけのアイツを背負い、必死で正道高野(ショウドウコウヤ)の集落へと戻った。其れから、伊比亜の正道高野での生活が始まった。今から八年前… …俺と伊比亜が十六の頃だ。」
「…… … …」
「其れから伊比亜はゆっくりと傷の回復に専念し、一年程、正道高野で生活を続けて居た。其れ迄の生活とは正反対の生活に戸惑いながらも、アイツはなんとか適応しようと努力をしていたようだ。」
「…… … ……そもそも、不坐(フザ)は何故、山の中で大怪我をしていたんだ?」
 先を話そうとする阿川の言葉を遮り、俺は疑問を口にした。阿川の口が一度仕切り直すように閉じ、改めてゆっくりと話し始める。
「… …伊比亜を恨む者たちからの報復だ。監禁され、拷問を受けて居たらしい。」
「… …か、監禁、拷問だってェ?」
 水川が思わず声を上げる。
「伊比亜は大阪の貧民街の生まれだった。其処は、弱いヤツや馬鹿なヤツ等、真っ先に食い物にされるような場所だった。相手のコトを決して信用しては不可(いけ)無い。甘さを見せたら直ぐに骨の(ずい)迄食い尽くされてしまう。あそこはそんな場所だと、伊比亜はいつも云っていた。両親の居なかった不坐は生まれもった超能力(チカラ)を使い、そんな地獄のような日常を一人生きていた。だが、そんな環境で生きていくと云うコトは、同時に、人々の怨み辛みを引きずって生きていくコトと同義だ。超能力(チカラ)と云う、人より優れた武器を持つアイツの周りには、伊比亜に恨みを持つ者が沢山居たんだ。報復を受けるのは最早、時間の問題だった。」
「… …… …」
「… …身体の傷が癒えた頃、伊比亜は正道高野の修行に加わり始めた。過酷な修行であるにも関わらず、伊比亜は歯を食いしばりながら耐え抜いていたんだ。」
「… … …… …へッ。あンだけ強い超能力(チカラ)を持って居るのに、態々(わざわざ)修行なんてする意味あンのかよ」
 水川が腑に落ちないと云うように声を上げる。
「…… …伊比亜は当時、今程の超能力(チカラ)を持って居るワケでは無かった。… …そうだな、アイツの其の頃の超能力(チカラ)は、小石を飛ばす程度の念動力(サイコキネシス)だった。」
「…… … …なんだって?」
 かつての不坐の超能力(チカラ)は小さかった、だと?
 其の時、部屋の扉が開き序開(ジョビラ)が入って来た。漬物が乗った皿と、もう片方の手には一升瓶を持って居る。
「只今、戻りました。」
「お。有ったのかい」
「はい。一寸(ちょっと)、分かり難かったですケド、なんとか見つけました。」
 壁に向いている机の上に、一升瓶を置きながら序開が云った。
片倉(カタクラ)サン、アンタ、其れ、」
 一早く、阿川が反応したのが嬉しかったのか、片倉は酔い眼で得意げに俺たちの方を向いた。
「話しが盛り上がってますからね。此処で酒が無いッてんじゃア、寂しいじゃないですか。ですので、禁じ手を使いました。此の酒は、研究所の有志でカンパして買ってたモノです。まだ結構残ってるでしょう。なあに、僕がまた買い戻しておきますから、問題ありません。此れで残りの時間、心良く迄飲みましょう。ホラホラ、序開サン。今、阿川さんが、大事な話していますからね。こっちで一緒に聞きましょう。」
 片倉が人懐っこそうな声を上げて序開に椅子をあてがい、手招きをした。序開が椅子に座るのを横目で見ながら、俺と水川は阿川の話に集中する。
「…… …修行と云うモノは、何も超能力(チカラ)を手に入れる為だけのモノでは無い。心身を鍛え、神仏と共に人々を導くためのモノだ。… ……其れがやがて、アイツの傷だらけの日々を、綺麗に浄化してくれるのを期待して居たのだが…… …」
「… …… … …」 
「…… … …環境と云うモノは、何時までも人間の心を蝕み続けるのだろうか。修行に加わって二年程は、アイツも真剣に取り組んでいるように見えた。だが或る時期、神仏の超能力(チカラ)を手に入れた頃から、伊比亜は其の狂暴さを露呈し始めて居った。… ……(イヤ)、そもそも初めから変わらず、其れがヤツの本性だったのだろう。… …… … ……或る日の法力僧同士の試し合いで、伊比亜は相手の僧を瀕死(ひんし)に追い込み、叩きのめした。… ……相手を見下ろす其の冷酷な顔を今でも覚えている。… …… ……其れからと云うモノ、伊比亜は堰を切ったかのように暴走していく。正道高野の上層部が早々に伊比亜を見限り、追放を命じるのは当然の流れだった。… ……だが、俺と伊比亜の世話をして居た一人の兄弟子が居た。彼は最後迄、伊比亜の心が変わるコトを信じて居たんだ。…… … …今思えば、どうしようも無くお目出度い話なンだがな。そして、俺も何処かで、そんな夢を信じて居たのかも知れない。」
「…… … …… ……」
 食い入るように聞く俺たちのコト等、まるで忘れ去ってしまったかのように、阿川は自身の過去を思い出して居た。其の視線は誰にも向けられるコト無く、何処か中空を彷徨(さまよ)っている。
「伊比亜は。… …… …其の兄弟子の命に手を掛けて、正道高野から消えた。… …… …背後から心臓を一突きだった。… ……。… ……其れから月日が流れ、それらの忌まわしい記憶が風化しようとして居た矢先、一つのウワサを耳にする。… …伊比亜が国の研究機関に在籍していると云うウソみたいな話だった。… ……其れを聞いて、俺は率先して、研究所への視察を買って出るコトにしたんだ。果たして、ヤツは此の研究所の用心棒のような存在になって居た。然も、強大な超能力(チカラ)を手にして。」
「… ……。… … …元々不坐(ヤツ)は、生まれ持った超能力(チカラ)も、そして、修行によって手に入れた法力も、其処までのモノでは無かった、と?」
「… …… …法力については、確かに優秀な能力を発揮していた。だが、其れもあくまで通常の範疇だった。だが、研究所に来てからのヤツの能力は、明らかに常軌を逸したモノだったんだ。」
「… …… …一体、研究所で何があったんでしょう… …。… …此の研究所の実験によって其れ程の成果が得られた、と云うコトなのでしょうか?」
 序開も話の内容に加わるかのように、浮かんだ疑問を誰に云うとも無く口にした。
 其の時一瞬、奇妙な

があった。阿川と、其れから隣に居る片倉の様子が、少し硬直するようにも見えたが、其れが一体何を意味をするのかは分からない。
「… ……恐らくは、国立脳科学技術研究所で行われている投薬実験が、ヤツの身体に有効に働いたのだと思われる。」
「… … ……投薬実験?」
 俺の言葉の後、阿川の説明に片倉が補足のように付け加える。
「… …… …投薬実験は、此の研究所で行われている覚醒手段として用いられる方法の一つだ。勿論、身体に過剰な負担を強いるような薬は使って居ないし、副反応も無いコトは実証済みだ。投薬により、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン等の分泌をコントロールする。簡単に云えば、人工的に無我の境地のような状況を作って、超能力(チカラ)が発揮し易い環境を再現してやるのさ。そして、其れを恒常的な状態に迄、推し進めていく。」
「… …… … …ですが、其れって、日頃から他の研修生(プラクティカント)にも施しているモノと変わりないんですよね?」
 序開が漬物を一枚口に運びながら云った。
「… …ああ、その通りだ。何故、不坐だけがあれ程迄の覚醒を遂げたのかについては、未だ解明出来て居ないと云うのが正直な所だ。認めたくは無いが、ヤツの中に眠る才能がそうさせたのかも知れない。」
「…… …あの強大な不坐の超能力(チカラ)は、此の研究所で開花したと云うのか。」
「…… …被験者には重大な問題がありますが、実験結果自体に着目すれば、すごい成果ですね… …」
「… ……ちぇッ、ヤツの能力を覚醒させてしまうだなんて。研究所も、余計なコトしやがる。」
 俺たちは片倉の話について三者三様の反応を見せたが、其れに対して片倉は口惜しそうな顔を召せた。
「被験者である不坐の人格は一先ず置いておいて、だ。… …研究所での一番の成果である、被験者の経過状況が、全く把握出来て居ないなんてな。そんなモノを果たして、成果と呼んで良いモノか…… … …」
「…… … ……其れで、不坐が研究所に居た事実に対して、正道高野であるアンタたちはどう云う反応だったんだ?」
 俺は片倉の補足説明で脱線しそうになった話の内容を、修正するかのように阿川へと質問した。阿川はグラスに注いだ酒に眼を落しながら、ぼおっと気の抜けた顔をしている。
「…… … …。其れは、竹田。お前自身が今日、眼の前で見ていただろう?尺丸(ジャクマル)喜緒(キオ)が見せたアノ表情。あれが、実際の僧たちの総意だよ。」
 ぽつりと呟くように呟く阿川。今日、不坐との揉め事(イザコザ)の際に、阿川と共に駆け付けた二人の若僧たちは、不坐を見るなり、激しい憎悪を見せた。あれが、正道高野の僧たちの総意と云うコトなのか。だとすれば、其れ程に憎らしい、仲間の仇とも云えるような男を研究所で囲っていると云う状況は、正道高野と研究所と云う関係に亀裂が入る程のモノでは無いのか。
「… …… …そうだとすると、正道高野と国立脳科学技術研究所の関係にも影響があるのでは?正道高野の仇である不坐を囲うなんて行為は、とりわけ、超能力(チカラ)について立場の弱い研究所側が、不利益を被ってしまうのは、眼に見えているように思うが。」
「… …… … ……現場と上の考えが違うなんてコトは、良くある話だ。上層部には上層部同士の思惑や取引関係があるのだろう。正道高野と研究所。これらの関係については、今もマッタク変わりは無い。… ……とは云え、正道高野の僧の中には、上層部の考え方に異を唱える者も少なからず居る。」
 俺の指摘に対しても、阿川は感情を殆ど動かさず、淡々と答えた。其の様子は、まるで何かを諦めてしまっているかのようにも見える。
「… ……最初にお前等に云ったろう?不坐には極力、関わるなと。そういう特殊な立場に居るのが、アノ不坐と云う男なんだ。だから、俺たち現場の研究者は、奴のコトは極力考えない。面倒臭い上層部たちのコト等気に留めず、研究のコトにだけに集中して居れば良いんだよ」
 片倉が酒をぐいと飲みながら、努めて明るく話した。が、其の言葉に水川が素早く云い返すように云う。
「関わるなったって、そんな無茶な。俺たちは、正門の前で待ち伏せされて襲われたンだぜ。そんな状況で、どうやって危機回避すりゃア良いんだよォ」
「… ……今後は、不坐を見たら、踵を返して逃げるコトだな」
「え、えぇー… …」
「… …其れで、えっと… ……器、でしたっけ。不坐がそう云いながら、何処か(わたくし)たちのコトを、値踏みするかのように見ていました。」
「… ……そう。…不坐は、俺たちに対して何等かの興味を見せていたんだ。… … …ナァ、阿川。アンタはヤツの云った言葉の意味が分かるんだろう?」
 不坐はあの時、研究所から出てくる俺たち三人の姿を見て、『俺たち三人と組む』と云う提案が閃き、正門の前で待ち伏せしていたのだと云った。俺たちが器として相応しいのだと云う。あれほどの超能力(チカラ)を持つ不坐が、何の力も持たない俺たちと手を組みたいと思う理由は一体何なのか。今後、此の研究所で過ごす為にも、そして自身の身を守る為にも、俺たちは此のコトについて、知っておかなければならない。
「… … …想像の範疇を出ないが……」
 ゆっくりと前のめりになり、両手でグラスを持ちながら阿川が話し始める。
「… … ……恐らく、お前等三人は、超能力(チカラ)についての才能があるのだと思う。」
「…… …何?」
「…… …は、ハァッツ!?」
「…… …」
 阿川の言葉に、俺と水川は思わず大きな声が漏れた。序開も漬物を摘まみ、口に運ぼうとした箸を止めて、阿川の次の言葉を待って居る。
「… …… …残念ながら、俺にはお前等にそう云った才能があるのかは、判別がつかない。だが、伊比亜はお前等の中に、超能力(チカラ)の片鱗のような、何かを見つけたのだろう。」
「… …マジかよ… …」
 思わず水川が息を呑む。
「……器、と云う言葉から想像するに、お前達の中に眠るモノは、所謂、研究所で云う所の超能力(チカラ)とは厳密に云えば違うと思う。… …詰まり… ……、そうだな。推察するに、霊能媒介(ミディアム)の一種なのかも知れない」
「…… …霊能媒介(ミディアム)って、確か、見学した研修生(プラクティカント)の中にも居た、霊的な超能力(チカラ)のコトか」
「そうだ。霊能媒介(ミディアム)とは簡単に云うと、巫女たちが行うような、口寄せをする超能力(チカラ)のコトだ。霊力を其の身に

超能力(チカラ)。東北地方、恐山のイタコ等が有名か。其の身に霊を憑依させ、様々な霊現象を起こしたり、予言等を口にする。… ……お前たちに眠るモノも、其れによく似ているが、もっと単純なモノだと思う。詰まり、超能力(チカラ)を引き受ける才能、とでも云うべきか。」
「……超能力(チカラ)を引き受ける才能… …」
「… … …お前たちの中に器が存在する。とすれば、後は、其処に流し込む水さえあれば、全てが揃う。… …… …不坐はそのように考えているのだろう。」
 俺たちが超能力(チカラ)を引き受けるだって?あんな常人離れした超能力(チカラ)が俺の身に宿るなんて、マッタク想像もつかない。
「な、なんで、俺たち三人が、そんな才能を、持って居るんだよ。」
 狼狽えるような、だが同時に、何処か興奮したような面持ちで水川が阿川へ質問した。が、其れに対しては横から片倉が口を挟む。
「…… …其れについては、幾つか仮説があるが、恐らくは間違いないだろうと云うのが現場での考えだ。詰まり、お前たちのような優秀な者たちが持つ聡明な頭脳は、膨大な情報処理能力を有している。超能力(チカラ)を発揮する際には、脳内で途轍もない量の情報が行き交い、凄まじい電気信号の伝達が確認されている。だから、類まれなる頭脳の持ち主が、超能力(チカラ)を受容するのに優れていると云うのは、科学的見地からも理に(かな)っているんだ。」
 俺と序開は、まるで死刑宣告でも受けたかのように黙りこくってしまった。想像の斜め上を行く阿川の回答。まさか俺たちが、超能力(チカラ)を持つ可能性があるなんて。
 今日一日、研究所内を見学して、初めて超能力(チカラ)を発揮する人々と出会い、対面して話を聞いたりもした。俺たちにとって彼等はあくまで研究所での被験者であり、何処か遠い存在の人々だった。だが、阿川の話を聞いた今、俺は自分でも意外な程、酷く動揺している。屹度、俺は何処かで彼等のコトを、常人とは違う異質な人々として、線引きしていたのかも知れない。頭の隅に、差別と云う言葉が浮かぶ。
 不図隣を見ると、序開もかなり思いつめた表情をして居る。俺には計り知れないが、心持ちとしては、俺と大して変わらないような暗澹としたモノなのだろう。唯一水川だけが、俺と序開の表情を伺うようにしながらも、少年のように眼を輝かせて居た。
「マァ、阿川サンが云う所の、肝心の『水』が何処にあるのかもワカランのだけれどね。其れに、或いは其れを見つけたとして、お前等に移植するなんて芸当も、今の研究所の技術力では不可能だよ。」
 序開の箸の動きに対抗するように、片倉の箸が漬物を大量に掴み、一気に口へと運ばれていく。
「えぇええ… …、そ、そうなの?」
 片倉の言葉を聞いた水川が、心底落胆した声を上げる。喜んだり落ち込んだりと、目まぐるしく一喜一憂するお目出度い男だ。
「… ……。… …… … …で、アンタは此れからどうするんだ?不坐(ヤツ)を放っておけば、此れからも悪さを働くぞ?」
 俺はワザと阿川を挑発するように云う。が、阿川の表情は少しも変わらない。
「… ……。… ……どうも、せぬよ。」
「… …… …… …」
 片倉も箸を進めながらも、阿川の次の言葉を待つように黙って居た。
「… … ……俺は正道高野の人間なのでね。寺を出て行った者のコト等、ウチの範疇外だ。伊比亜の起こした事案(トラブル)に関しては、アイツを雇っている研究所側が責任を持って対応する必要がある。違うか?」
「… … ……確かにその通りだ。だが、本当にそう思っているのか?…… …今日、不坐と戦ったトキ、アンタが若僧に叫んだ言葉を、俺は覚えているぞ。『此奴の後始末は、俺ががつけなきゃならないんだ』と。…… … …屹度、アノ言葉こそが、アンタの本心なんだろう。」
「… …… … …。… …… …… …」
 阿川は暫く、俺の顔を凝視した後不意に顔を背け、再び煙管煙草(キセルタバコ)を吸い始めた。
「… …… …」
「…… … …」
「…… ……。 … … …イヤな野郎だ。」
 紫煙を吐き出しながら、誰にも聞こえないようなか細い声で、阿川が呟いた。俺だけが其の声を聞いていたようだった。
 微妙に空気が重くなったのを察したのか、片倉が大声を上げて俺たちを鼓舞するかのように叫び始めた。内容は、此れからの俺たち三人の門出に乾杯、だとか、祝辞を延々と述べているのだった。序開は微かな不安を拭い去るように相変わらず漬物に手を伸ばし、水川は自分が超能力(チカラ)を使うならば、どのような能力が良いかと云うコトを一人で滔々と語っていた。阿川は其れから俺には一瞥も呉れず、ゆっくりと紫煙を吐き続け、俺も何処か居心地の悪さを感じながら、グラスの中の酒に眼を落していた。
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登場人物紹介

■竹田雷電(たけだ らいでん)

■31歳

■一週間の能力者の一人

■火曜日に電撃の能力を発揮する。二つ名は火曜日の稲妻(チューズデイサンダー)

■繋ぎ止める者(グラスパー)として絶姉妹を使役する。

■武器①:M213A(トカレフ213式拳銃)通常の9mm弾丸と電気石の弾丸を併用

■武器②:赤龍短刀(せきりゅうたんとう)

■絶マキコ(ぜつ まきこ)

■17歳

■炎の能力を持つ。二つ名はブチ切れ屋(ファイヤスターター)

■絶夫婦の娘(養子)であり、絶姉妹のうち姉。

■雷電と死闘を繰り広げた後、死亡。現在は式神として雷電に取り憑いている。

■武器:小苦無(しょうくない)

■絶ヨウコ(ぜつ ようこ)

■17歳

■氷の能力を持つ。潜在的には炎も操る事ができる。

■絶夫婦の娘(養子)であり、絶姉妹のうち妹。

■雷電と死闘を繰り広げた後、死亡。現在は式神として雷電に取り憑いている。

■武器:野太刀一刀雨垂れ(のだちいっとうあまだれ)

■真崎今日介(まさき きょうすけ)

■21歳

■死霊使い(ネクロマンサー)の能力を持つ。五体の悪霊を引き連れる。

■奥の手:影法師(ドッペルゲンガー)

■武器:鉤爪(バグナク)

■W.W.トミー(だぶる だぶる とみー)

■一週間の能力者の一人

■水曜日に水の能力を発揮する。二つ名は水使い(ウォーターマン)

■中学校の英語教師をしている。

■日本語が喋れない。

■武器:無し

■小林マサル(こばやし まさる)

■14歳

■トミーさんの助手。通訳や野戦医療に長けている。

■阿川建砂(あがわ けんざ)

■90歳 ※昭和26年時24歳

■宝石商として全世界を旅する。

■宝石を加工し、能力を向上させる品物を作る技術を持つ。

■山田(まうんてん でん)

■21歳

■死霊使い(ネクロマンサー)の能力を持つ。4体の悪霊を引き連れる。

■雷電を繋ぎ止める者(グラスパー)に設定し、絶姉妹を取り憑かせた。


■竹田三四郎(たけだ さんしろう)

■90歳 ※昭和26年時24歳

■雷電の祖父

■研究者として、かつて国立脳科学技術研究所に所属していた。

■超能力(チカラ)の器としての才能を持つ。

■水川真葛(みずかわ まくず)

■※昭和26年時26歳

■国立脳科学技術研究所所属

■超能力(チカラ)の器としての才能を持つ。

■序開初子(じょびら はつこ)

■※昭和26年時23歳

■国立脳科学技術研究所所属

■超能力(チカラ)の器としての才能を持つ。

■夫を戦争で亡くす。子供が一人いる。

■不坐伊比亜(ふざ いびあ)

■※昭和26年時24歳

■国立脳科学技術研究所所属。所長の用心棒

■研究所設立以来の類まれなる念動力(サイコキネシス)を持つ。

その他

■一週間の能力者…一週間に一度しか能力を使えない超能力者の事。其の威力は絶大。

■獣の刻印(マークス)…人を化け物(デーモン)化させる謎のクスリ。クライン76で流通。

■限界増強薬物(ブースト)…快感と能力向上が期待できるクスリ。依存性有。一般流通している。

■体質…生み出す力、発現体質(エモーショナル)と導き出す力、端緒体質(トリガー)の二種。

■繋ぎ止める者(グラスパー)…死霊使いによって設定された、式神を使役する能力を持つ者。


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