第19話 学徒と水使い#11
文字数 3,273文字
私の首を
『… …痛ッテーなァ、てめェ… …』
偽ネクラ野郎が私の顔を見上げながら云う。私は必死で目線を下げ
首を締め上げられている私のつま先が、少しずつ床から離れていく。
「ガハッ、…ガハッ… …。…… …… …何故… …」
『何故?馬鹿が。誰が何の保険もなく、てめェみてーな危険な野郎に近づくかっての。俺の両脇に居た
「… ……… …クソッ… …… …」
『にしてもなァ…』
「… …
突如として、向こうから声が聞こえた。
其の方向を見ると、倒れ込んでいたネクラ野郎が、今にも起き上がろうとしていた。汚れたウィンドブレーカーの袖と手の甲で何度も顔を拭いながら、ネクラ野郎が此方を向く。
「
「… … …もっと、目いっぱい食らわせてやるから、… …来いよ」
私は今出来る限りの売り言葉をネクラ野郎に吐きかけた。だが、最早ネクラ野郎は
「嫌々、もう十分懲りたから止めとくぜ。アンタの
ネクラ野郎が片手を伸ばして手の平を徐々に上げていくと、其れに合わせて
「…ご、ごほッ… …」
『それじゃあ、ご安全に、
私は
私は集中し、両手に
「… …ハァ、ハァ。… ……」
手の平の中に小さな火種が発現する。込めた
「… …ッ!!… …」
「ウン、そうするだろうね」
『てめェのやることなんか、見え見えなんだよ』
ネクラ野郎の本体は、何時の間にか戦闘態勢を解いていた。最早、戦う必要もないと判断したのだろう。腕を組み、只、事態をゆっくりと見ている。然し其の眼に
「く… …クソッ!!… …汚いぞッ、ネクラ野郎ッ」
「… ……… ……。…… …黙れよ、ファイヤ・スターター。此れ以上、俺を失望させないでくれ」
… …そうだ、その通りだ。奴の云う通りだ。くそ、何が汚いだ。戦いに、キレイ汚いなんてモンがあるか。そんなコト、生まれて
私が
「よう、それじゃ。もう一回、お別れの挨拶するぜ。今度は」
ネクラ野郎が右手の平の鉤爪を限界まで開きながら、私の眼の前で喋っている。
「此の鉤爪でお前の心臓を、確実に
削る
からよ。ちょっと痛ェけど、すぐ終わるから我慢しな」『すぐ終わるから我慢しな』
ネクラ野郎が私の左胸に鉤爪をゆっくりと近づけていく。… …くそッ。この期に及んで、もうなんにも出来ないのか、私はッ。
私は成す術もなく、私は只、奴の湾曲した鋭い爪が徐々に近づく様を見ていることしかできなかった。
「…… …ッツ… …」
「… ……あ、そうそう。最後に聞きたいコトがあった」
「…… … …」
「お前の仲間さ、竹田って奴と、あと、なんとかトミーって奴が居るんだろ?そいつ等って一体何者なの?まぁ、
「… …… ……」
---パシュッ
「
何処からか、水の弾ける音が聞こえたような気がしたけど、それが何なのか一瞬分からなかった。
其れの意味が分かったのは、ネクラ野郎が肩を抑えながら向こうに仰け反っている姿を見たからだった。奴の肩口からは、真っ赤な鮮血がだらだらと流れていた。続けてすぐ、同じような水の弾ける音が連続で聞こえてきた。其れが地面に叩きつけられる度、地面が浅くであるが
「… ……。何か、水のような物が飛んでる?」
どうやら、物凄い水圧の球が、何処からかネクラ野郎を狙撃している。突如、数多の水圧の球に晒されたネクラ野郎は、あまりの突発の事態に防戦一方となっていた。そして其の威力は、ネクラ野郎の肩口の傷を見れば一目瞭然だった。水の球は比較的小さい。だが身体に一撃でも食らえば確実に致命傷となって足は止まり、後は蜂の巣になりお陀仏だ。奴の焦りの表情からも、其の危険さが容易に想像できた。
「… ……ッッツ!!… …ック!…… …ンだよッ!!… おいッ!絶マキコッ!一体此れはナンだ!!誰が攻撃している!」
ネクラ野郎が必死で此方に向かって問いかけている。知るかよ。こっちだって聞きたい。ヨウコの力は氷で水はほとんど生成できないし… …水を作り出す能力… …と考えたところで、不図、思いついた。
「あぁ…」
「ああ!?… …あぁって何ンだよッ!… …おい!教えろよ!此れはナンの能力だッ!此奴は一体、ナニモンだッ。てめェの仲間かッ!」
あまりにも必死に聞きたがるものだから、私はネクラ野郎に教えてやることにした。
「
まだ
会ったコトないんだケド」「あぁ!?
「一週間の能力者、って奴みたいだけど。うろ覚えで良く知らない」
「……… …! ……… …何? ………」
一瞬、ネクラ野郎の表情が変わったのを認めたところで、手足を拘束された私の肩に、ぽんと大きな手が置かれた。
「…… …!」
見上げると、身長がびっくりするほど高い、金髪で眼鏡を掛けた男が立っていた。どうやら、此の所謂、アメリカ人という
「アーユーオーケイ?」