第43話 ピッチャーだったあいつ

文字数 595文字


「そうだたんですか・・・」
大村は悲しそうな表情でうつむいていた。
「だから上山が高校でも野球部に入るって言ったとき
 オレはいつかまた、あの頃の上山に戻ってくれるって信じたかった。
 上山はやっぱり野球が好きなんだって」
「・・・」
「お前らにやらせてる特訓だって、
 確かに度は過ぎてるが、無駄なことは一切やらせてない。
 ノック、腹筋、背筋、素振り、ダッシュ、ランニング
 どれも重要なトレーニングだろ?」
「そうれはそうですけど・・・」
「お前にキツく当たるのも、お前を凄いピッチャーだと認めてるからだと思う。
 当時の自分と重ね合わせて、お前を見てるのかもしれない」
「・・・」
「結局、根っからのピッチャーだったあいつに
 野手として野球をやることを勧めた俺が、間違ってたのかもしれない・・・」
「松島さん・・・」

しばらく沈黙が流れた・・・

そして、オレは意を決して口を開いた。
「オレが上山と話しをする。だからお前は何もするな」

大村は少しの沈黙の後
「わかりました。
 ただ、鈴木も限界が近づいてます。なるべく急いでください」
「ああ。わかった」

オレと大村はしばらく黙って座っていた。
不意に大村が
「あっ。児玉さんたちだ」
遠くの方に児玉、池崎、町村が歩いているのが見えた。
「松島さん、よろしくお願いします」
そう言うと、大村は児玉達の方へ走って行った。
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