第60話 レギュラーじゃん

文字数 715文字

町村さんと別れて、僕は一人で歩いていた。
コンビニの前を通りかかったとき、金子くんがいた。
金子くんは他校の柄の悪そうな人たちと一緒に座り込んでいた。

その中の一人が僕に気付いて
「おい。なんだてめぇ」
金子くんも僕に気付いて
「おう。へたくそ」
「知り合いか?なんだ、へたくそって」
「あぁ。野球部で一緒だったんだけどさぁ、こいつ面白れぇくらいへたくそなの。
 ゴロはすぐトンネルするし、フライは取れねぇし、ボール投げたら暴投だし。
 こいつのせいで俺なんか、いっつも走り回らされてたんだぜ」
「なんだそれ。なんでそんな奴が高校野球やってんだ?」
「だろ?早く辞めりゃあ良かったのによぉ。おかげでこっちは・・・」

金子くんは立ち上がって僕に近づいてきた。
「児玉。こうなったのも全部お前のせいだ」
金子くんは僕の胸倉を掴み、殴り掛かろうとしたが、その手を止めた。
何か思いついた様子で、振り上げた拳を下し、僕の胸から手を離した。
「そういやぁ、残ったのって9人だな」
「う、うん」
「てことはお前もレギュラーじゃん」
「・・・」
「こりゃあ傑作だ!」
そういうと金子くんは彼の仲間たちに向かって
「もうすぐ秋の大会あるからよ、絶対見に行こうぜ!
 こいつがレギュラーで試合なんか出たら、絶対笑えるから」
「でも、辞めていった1年生たちが戻ってくれると思うし・・・」
僕がそう言うと、金子くんは黙って僕を見ていた。

少しして金子くんはニヤニヤしながら僕に言った。
「そんな簡単に戻ってくるかね。他の2年はまだ残ってるのに。
 俺はお前がレギュラーになれると思うけどな。
 精々、試合で大恥かいて、俺達を楽しませてくれよな」
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