第42話 過去③

文字数 524文字


そして1年が経ち、オレ達が最上級生として新チームが始動した頃
上山は突然、部活に顔を出した。

「上山!
 戻って来る気になってくれたのか?」
「別に・・・暇だから・・・」
上山の返事は素っ気ないものだった。
それでも、オレは上山が戻って来てくれたことが、とにかく嬉しかった。

上山の肩は治っていた。
いや、正確には治ってはいなかったと言うべきだろう。
投げれるようにはなっていたが
以前のような力強さは無く
小手先だけで送球ができる程度だった。

それでも、上山の野球センスはやはり抜群だった。
すぐにファーストのレギュラーを獲得した。

しかし、上山の野球に対する取り組み方は
以前とは全く真逆のものになってしまっていた。

練習は来る日と来ない日があり
来ても気だるそうにダラダラとやっていた。

当然、後輩たちからは不満の声が上がっていたようだ。
しかし、俺達、同級生は上山の過去を知っている。
だから何も言えなかった。

チームのために投げ
チームのために肩を壊したあいつが
どういう心境の変化があったかはわからないが
また野球をやりたいと思ってくれたなら
多少のことは目をつぶってやりたい。
そう思うのは間違っているだろうか・・・
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