第10話 それぞれの路

文字数 606文字

練習後、僕はいつも通り、高坂くんと一緒に帰った。
「今日はごめんね。
 僕のせいで、また上山くんと・・・」
高坂くんは何も言わなかった。
少しの沈黙の後、高坂くんが口を開いた。

「なあ、児玉。やっぱ一緒に辞めないか?」
「そんな!僕はともかく、なんで高坂くんが辞めるんだよ」
「だってさぁ、あんなクソみたいな奴と一緒に野球やりたくねぇもん。
 お前だって、このまま続けてても、絶対あいつと仲良くなんかなれねぇぞ」
「でも・・・」
「お前が野球好きなのはわかってるし、俺から誘っておいて悪いけど
 俺はどうしても、上山とか金子とかと一緒にやっていける気がしねぇんだよな。
 どうせプロになれるわけでもないし、他の部活で楽しくやった方が良くねぇか?」

しばらく沈黙が続いた。
高坂くんの言うことはもっともだ。
でも・・・

翌日、グラウンドに高坂くんの姿は無かった。
「高坂は?」
浅野くんが何気なく言った。
僕は何とも言えなかった。
「もしかして辞めた?」
金子くんがニヤニヤしながら言った。
上山くんもニヤニヤして言った。
「あいつはムカつくけど、戦力にはなったのになぁ。
あいつが辞めて、お前が来てどうすんだよ」
上山くんの言葉に、金子くんは声を上げて笑っている。

「僕、もう1回、高坂くんと話してみるから・・・」
そう言って、僕はグラウンド整備を始めた。

松島くんはただ黙って、僕らの様子を見ていた。
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