第102話 二人のエース

文字数 580文字


「凄いよ、上山くん!」
練習を終えると、アイツを先頭にチームメイト達がオレ達のそばに駆け寄ってきた。
上山も嬉しそうだ。
オレも本当に嬉しかった。
また上山のあの球を受けられるのだ。

「上山さん」
大村が近づいて来た。
「ナイスピッチング」
「お、おう」
「でも、俺も負けませんから。マウンドは譲りませんよ」
そうだ。このチームのエースは大村だ。
今日、投げたばかりの上山と比較すれば、少なくとも現時点では大村の方が上だ。
もしかするとオレは、またチームに余計な火種を作ってしまったのだろうか。
いや、そんなことはない。
きっと二人が競い合って、チームに良い影響をもたらすはずだ。

上山は練習を重ねる度に、徐々に感覚を取り戻していった。
オレの思い通り、二人は常に競い合い、互いを高めていった。
練習試合も交互に先発し、譲らぬ好投を見せあった。

秋が終わる頃には、上山もかなり感覚を取り戻し、
大村に引けを取らないレベルまで達していた。

上山は徐々にチームメイトとの距離も縮まり、
更に、二人に刺激された他のチームメイト達もどんどんレベルアップしていった。
残念ながらアイツは“へたくそ”なままだったが・・・

勝てる!
オレは確信した。
この二人がいれば、必ず城東にも勝てる。
もしかすると甲子園も夢ではないかもしれない。

そして迎えた春・・・
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