第59話 やっぱり先輩は

文字数 692文字

「お疲れっした!」
大村くん、池崎くんと分かれて、今日も先輩と二人きりの帰り道。

先輩はさっきのレギュラーの話から、ずっと深刻な顔をして、
心ここにあらずという感じです。
「先輩。どうしてレギュラーになれるのに、そんな深刻な顔してるんですか?」
私の問い掛けにも、先輩は上の空で聞いてくれていないようです。

「先輩っ!」
私は歩いている先輩の正面に立って、少し大きな声で言いました。
先輩はビクッとして立ち止まりましたが、その時にはもう
先輩の胸に私の顔がくっつきそうなくらい、先輩が近くに来ていて、
逆に私がビクッとして、心臓がドキドキで、
どうしていいのかわからなくなって下を向いてしまいました。

「す、すみません」
私は平静を装うのに必死で、急いで先輩の横に戻って、下を向いたまま歩き始めました。
「ゴメン。ちょっと考え事してて」
先輩は笑顔で私にそう言ってくれました。

少し落ち着いてきた私は
「どうしてずっとそんなに深刻な顔をしてるんですか?」
「いやだって、僕がレギュラーじゃチームは勝てないし
 もし誰か怪我でもしたら、試合もできなくなっちゃうんだよ。
 辞めた1年生が戻ってくれれば良いけど、
 それでもやっぱり戦力的には厳しいなぁって」
「なるほど・・・」
先輩は自分がレギュラーになれることよりも、チームのことを考えていました。
だからみんな、先輩をキャプテンにって言ってたのに・・・

「私も明日、大村くんや池崎くんと一緒に、
 辞めた1年生たちに戻って来てくれるようにお願いしてみますね」
「ほんと!ありがとう!」
やっぱり先輩は野球のことばっかり。
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