第29話 意地と意地

文字数 604文字

「浅野!そんな打球じゃ練習になんねぇよ!
 もっと思いっきり打て!
 1年!黙ってねぇで声出せよオラァ!」
ノッカーの浅野くんが打った打球を見て、
上山くんが声を上げた。
1年生たちは球拾いをしながら、必死に声出しを始めた。

浅野くんは少し強めにノックをした。
大村くんは難なく捌いた。
「まだまだ!試合でそんな打球来んのかよ!」
浅野くんは更に強い打球を打った。
大村くんはこれも難なく捌いた。
「そんな正面ばっかりじゃ意味ねぇだろ!」
浅野くんが少し右にノックした。
大村くんはまたしても難なく捌いた。
続いて、左、右、左、右と強い打球が飛ぶが、
大村くんは次々と捌いていく。

松島くんはおもむろに素振りを始めた。

「浅野!やる気あんのかよ!」
上山くんがイラついた様子で、
浅野くんの元へ行き、バットをひったくった。
「代われ!」
「行くぞ!大村!」
上山くんが猛烈な打球を放った。
大村くんは何とか食らいつく。
右、左、右、また右、突然、真ん中へライナー
容赦ないノックの嵐
しかし、大村くんも負けじと食らいつく
ほとんど喧嘩だ。
2人とも息が上がり、いよいよ根競べになってきた。
まさに意地と意地とのぶつかり合いだ。

池崎くん、他1年生たちは必死に声を出している。
松島くんはグラウンドの隅で黙々と素振りをしている。
町村さんは心配そうに見つめている。
僕もただ黙って見守るしかなかった。
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