第６１話　野球やりたいはずなのに

翌日、私は大村くん、池崎くんと一緒に
辞めて行った1年生部員たちに復帰をお願いして回った。

私たちは滝沢くんを廊下に呼び出し、復帰をお願いした。
「でも、まだ他の2年生はいるんだろ？」
滝沢くんがそう言うと、池崎くんが
「大丈夫だって！先輩たちは上山に言われて仕方なくやってただけなんだから。
　それはお前だってわかってるだろ？」
「でも・・・」
「心配すんなって。もう二度とあんな風にはならないから」
滝沢くんは少し悩んだ様子で黙っていた。そして
「ごめん・・・やっぱやめとく」
そういうと滝沢くんは教室に戻ってしまいました。
「おい！滝沢！」
池崎くんが呼び止めても、滝沢くんは振り向きもしませんでした。

その時、ちょうど山本くんと柿崎くんが歩いてきました。
「山本！柿崎！」
池崎くんが呼びかけると、2人は避けるように隣の教室に入ってしまいました。
「なんだよ、あいつら。あんな逃げなくても良いのに」
「上山や金子がいなくても戻りたくないほど、嫌な思いしてたのかな・・・」
大村くんがそう言うと池崎くんが
「なんでだよ。あいつらだって野球やりたいはずなのに。
　上山と金子がいないんだから、戻ってくれば良いだけじゃん」
池崎くんは全く理解できないといった様子でむくれていました。

私達は岩田くんに声を掛けに彼の教室まで行きました。
「ごめん」
岩田くんの返事も同じでした。
「なんでだよ。みんなして。もう上山と金子がいないんだぞ。楽しく野球できるんだぞ」
池崎くんが食い下がりました。
岩田くんは少し考えた後、複雑な表情を浮かべながら、
「ごめん。やっぱ戻れない・・・」
「そんなぁ・・・」