第86話 きっと

文字数 748文字

「よし!最後、しっかり締めていくぞ!」
「おうっ!」
松島くんの掛け声とともにベンチからナインが飛び出していく。
9回裏の守備だ。
9回表の攻撃は9番の鈴木くん、1番の僕、2番の高橋くんと三者凡退で終わっていた。

ライトのポジションへ向かいながら、僕はようやく状況が掴めてきた。
僕はライトへのハーフライナーをギリギリのところでキャッチし、
タッチアップした3塁ランナーをホームベースでアウトにした。
1アウト1、3塁のピンチを僕のワンプレーで凌いだんだ。

ベンチでは僕のプレーをみんなが称賛してくれて、
みんなが盛り上がってくれていた。
打席ではあっさり三振をしてしまったけど、
その盛り上がりは収まることなく、今、9回裏の守備についている。

とにかく、僕はついに練習の成果を試合で発揮できたのだ。
ようやくチームに貢献することができたのだ。
はっきりと覚えてもいないのに、そう言って良いのかはわからないけど。

何よりもみんなが喜んでくれているのが嬉しかった。
松島くん、高坂くん、大村くん、池崎くん、町村さん、チームのみんなが。
そして、きっと上山くんも。

大村くんは最後の力を振り絞り、1段ギアが上がったように見えた。
まず6番バッター三振に切って取り、続く7番バッターをセカンドゴロ。
そして迎えた最後の8番バッターを再び三振に切って取り、ゲームセット。
僕たち陵成高校野球部は、秋の大会初戦に勝利したのだ。

「あっした!」
ホームベース前での挨拶を済ませ、スタンドへの挨拶に向かった。
スタンドには金子くんが不貞腐れた様子で座っており、
金子くんの連れたちは妙に盛り上がっていて、拍手をしてくれていた。
僕は上山くんの姿を探したが、上山くんの姿はもうスタンドにはなかった。
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