第35話 体力だけは

文字数 634文字

1年生のほとんどが驚く気力すらなく、
言われるがまま腹筋を始めた。

「98、99、100!」
池崎くんが顔を真っ赤にして、
ひときわ大きい掛け声で締めくくった。
「児玉さん、俺の腹、千切れてないっすか・・・」
池崎くんは腹を押さえながら言った。
「そんな冗談言ってられるなら、まだ大丈夫だね」
僕は他の1年生たちの様子を見た。
大村くんはまだ上山くんを睨み付けている。
他は全員、息を切らせて、
腹を押さえながらうずくまっており、
大分、キツそうだ。

続けて、ダッシュ50本、素振り500回と続き
最後にランニングを始めた頃には
1年生たちは皆、意識も朦朧として、
惰性で付いて来ているような状態だった。

上山を先頭に2年生部員が続き
大村くん、池崎くんは何とか付いて来ていたが
他の1年生部員たちは徐々に遅れ始めていた。

「ちょっと後ろの様子見てくる」
僕は一番、遅れていた柿崎くんのところまで下がって、一緒に走った。
大村くんと池崎くんは何か話ながら走っているところをみると、
まだ大丈夫そうだ。

「児玉さん、すげぇな。どこにまだあんな体力残ってるんだ」
「そりゃ、お前が一番わかってるだろ?
 あんだけ毎日、誰よりも努力してんだから
 野球の技術はともかく、体力だけは超一流だろ」
「そっか・・・
 あれっ?お前、今、何気にすっげぇ失礼なこと言わなかった?」
「えっ?バ、バカ!そういう意味じゃねぇよ!」
「はっはっは。笑うと腹痛ってぇ」
「バーカ」
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