第40話 過去

文字数 523文字

「えっ?」
オレの言葉に大村は驚いた様子だった。
「上山もオレや児玉と同じくらい、野球バカだった。
 オレが上山と同じ中学だったのは知ってるな?」
「はい」
「上山な。中学入った頃、凄いピッチャーだったんだ」
「えっ!上山さん、ピッチャーだったんっすか?」

4年前・・・

上山がマウンドから投げたボールは
唸りをあげてオレのキャッチャーミットに吸い込まれた。

「おぉーーーっ!」
同級生だけではなく、先輩達からも歓声が上がる程
上山のボールは既に中学レベルで十分に通用するものだった。

上山はすぐにエース候補として先輩と競い合うようになった。
オレも幸いレギュラーを獲得し、練習でも試合でも、
いつも上山のボールはオレが受けていた。

上山は中学野球に慣れるため、自ら志願して
練習中はバッティングピッチャーを務め、練習試合もほぼ毎週登板
投げて、投げて、投げまくっていた。

そして、夏。
この頃にはチームの誰もが認めるエースへと成長していた。

夏の大会も全試合登板
しかし、大会が始まる前から既に、肩に痛みを感じていたらしい。

そして、上山の肩は壊れた。
毎日、上山のボールを受けていたのに、オレはそのことに気付けなかった・・・
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