第74話 そうだ

文字数 624文字

そうだ。
池崎くんの心配ばかりして、すっかり忘れていた。
今、チームには10人しか選手がいない。
池崎くんが怪我で出場できない今、僕が代わりに出るしかないのだ。

中学時代から公式戦には一度も出たことがない。
練習試合でさえ、ほとんど出たことがない。
松島くんに自信を持ってプレーしろと言われたことがあったが、
そんなことはすっかり忘れてしまうくらい頭が真っ白で、
正直言って、全く自信が無かった。
僕なんかが試合に、しかも公式戦に出て良いのだろうか。
みんなに迷惑を掛けてしまわないだろうか。
僕は一気に血の気が引く思いだった。

「児玉さん・・・。児玉さん!」
池崎くんに呼び掛けられるまで、僕はすっかりボーっとしてしまっていた。
気が付くと、もうベンチの前まで来ていた。
「ベンチに座らせて下さい」
「だめだよ!医務室に行かなきゃ!」
「お願いします!最後までみんなと一緒に闘いたいんです!」
池崎くんの熱い眼差しに押され、僕は池崎くんをベンチに座らせた。
監督が池崎くんの足の具合を見ている。
僕はまたボケーっとその様子を見ていた。

「児玉。大丈夫か?」
僕の様子を見て、松島くんが声を掛けてくれた。
「う、うん・・・」
「大丈夫。自信持っていこうぜ!」
高坂くんも声を掛けてくれた。
「そうですよ。練習の成果を見せてやりましょう!」
大村くんも声を掛けてくれた。

「先輩」
僕が振り向くと、町村さんが僕のグローブを持って立っていた。
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