第97話 うるせぇよ

文字数 604文字


池崎くんはしばらく上山くんを見つめた後、ニコッと笑い
「坊主頭、似合ってないっすね」
上山くんが頭を上げた。
池崎くんは上山くんに笑顔を向けた。
上山くんの顔にも笑みがこぼれ
「うるせぇよ」
みんなの表情が笑顔になった。
やっぱり池崎くんがこのチームのムードメーカーだ。

「じゃあ、みんな良いんだな。ありがとう」
松島くんはそう言うと、上山くんの腕を掴み、引き起こした。
上山くんはみんなの顔を見渡し
「みんな、本当にすまなかった。ありがとう」

「あのぉ。私のこと忘れてません?」
町村さんがふくれっ面で腕組みをして立っていた。
上山くんは町村さんの方に向き直ると、町村さんはニッコリ笑って
「おかえりなさい。上山先輩」
「町村・・・。すまなかった。ありがとう」
上山くんは町村さんに向かって頭を下げた。

松島くんはホッとした様子で
「よし!じゃあ練習始めるぞ!」
「はい!」
松島くんの号令にみんなが笑顔で応えた。
これで本当にチームが一つになったのだ。

この日の練習中、上山くんは誰よりも声を出し、誰よりも懸命にボールを追っていた。
ライトを守る僕の前に打球が来た。
僕は何とか捕球し、中継に入っているファーストの上山くん目掛けて送球した。
ボールは大きく右に逸れてしまった。
「なにやってんだ!へたくそ!」
以前ならこう言われていたが、今日、上山くんの発した言葉は
「ドンマイ、ドンマイ!」
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