第93話 驚き

文字数 638文字

「ありがとうございます!」
4人は再び深く頭を下げた。

「みんなぁ!」
ようやく大村と池崎が到着した。
「どうしたんだよ。今まで俺達がいくら言っても戻ってくれなかったのに」
池崎がそう言うと、岩田が
「実は今日、上山さんが俺達一人一人の所に来て下さって、
 頭を下げられて、野球部に戻ってくれって」
「上山が・・・」
他のみんなも驚いていたが、オレも驚きを隠せなかった。
上山がそんな行動に出るなんて、予想もしていなかった。

「ゴメンな。今まで戻るって言えなくて。
 金子さんから野球部に戻ったらただじゃおかないって脅されてて・・・」
「金子さんが!」
池崎が驚いた様子で言った。
オレ以外は上山と金子の会話は聞いていなかったようだ。
岩田が続けて言った。
「でも、上山さんが、もう金子さんは絶対に何もしないからって」

恐らく上山には確信があったのだろう。
ある意味、金子の行動は上山への復讐でもあった。
金子は上山が本当は野球が好きなことをわかっていたから。
金子は上山を殴り、上山は反撃することもなく詫びを入れた。

金子は決して良い奴とは言えないが、それでも上山にとっては仲間であり、
金子もまた、上山をまだ仲間だと思っていたのだろう。
そんな2人だからこそ、あの瞬間、
金子の中で全てが終わったことを上山は確信したのだろう。

とにかくこれで陵成高校野球部は1歩前進することができた。
「よし!練習始めるぞ。お前らもジャージで良いから着替えて来い」
「はい!」
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