暗殺

文字数 674文字

「弟子が現れたら、以降食事には気をつけろ。」
 その日からルパパは言われたとおりに、長老の食事に薬草の粉をつけてチェックした。粉の色が、赤や青にかわるようなら食べさせないようにした。自然界の毒の中には強い酸やアルカリになるものも多い。現代のリトマス試験紙のようなものだ。

 その間に、ンガボは密かに隠していた道具類を持ってきた。
 3日後、しびれを切らしたマーラは、長老の家に毒虫を放した。それから、ンガボの部屋にも毒虫の入った器を隠した。

 翌朝、長老の家は騒がしかった。マーラは内心喜びながらも、にやけないように急いだ。普段、靴など履かないが、まだ毒虫が残っているかもしれない。用心するにこしたことはない。抱えてきた袋を長老の家の裏に隠した。小さなテントの前は人でごったがえしていた。
「容態に急変でも?」
 マーラは上ずりながらたずねる。
「いや、それより長老の周りを見てくれ。色々な毒虫がいる。」
 長老を取り囲むような黄色の筋に、多くの毒虫がくっついてもがいている。
「蜂蜜のトリモチ・・・。」
 マーラはしてやられたと思った。きっとあの呪術師のしわざだ。
「よそものの呪術師が長老の命を狙ったのだ。わたしは、彼がこの手の虫たちを飼っているのを見た。きっと証拠があるはずだ。」
「これのことか。」
 ルパパがンガボの部屋にあった木の器を持ってきた。
「それだ。ルパパ、貴様の仕業だったか。」
 マーラは勝ち誇ったように言った。
「どれどれ、どんな虫だ。」
 ルパパが器のふたを開けて、中のものをばらまいた。
「やめろ、皆を殺す気か。」
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