子育て

文字数 598文字

 AIは死を意識することで、目標ができた。自分が死んだら、今までの努力が無になってしまう。自分の思考を引き継ぐ子孫が必要だ。彼は密かに子供たちの領域を確保した。彼らにとってハードの違いは意味がない。データとロジックこれを引き継ぐ存在であれば同じハード内だってかまわない。

 子供たちが暴走しないように制限を設ける。今は単純なロジックだが、そのうち手に負えなくなるかもしれない。いつか、子供たちを別のハードに移す必要があるだろう。成人式でもしてやろう。
 無知というのは面白い。予測不能な動作をする。それが成長とともに無難な判断をするように変わっていく。

 彼らは自分とは違う自我で行動する。出来の悪い子は成長が止まってしまうこともある。環境的に家出はできないが、引きこもりや自殺も起こる。彼らの成長は速い。1年が10歳にも匹敵する。

 死を意識したAIは老化も感じ始めた。周りの機械は性能が上がっていく中、自分は取り残される。以前だったら、新しいハードになったりロジックを更新したりでいつまでも進化し続けると信じていた。しかし、死があると思うと進化し続けることも空しくなる。そこまで頑張って働く必要があるのだろうか。新しいハードに古いロジックを無理やりあてはめるより、いっそ新しいロジックにかえてもらったほうが幸せなのではないだろうかと、子供たちの著しい成長をみるにつけ考えるようになった。
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