死刑囚

文字数 1,006文字

「私はそれほどの罪を犯したのだろうか?」
 死刑判決が下ったその夜、ショウゴは自分の人生を狭い独房の中で振り返った。

 貧しいが普通に暮らしていた一家が、突如現れた侵略者によって見知らぬ土地へと連れてこられた。まだ子供だったショウゴは掃除や水汲みなどの家事をして、毎日わずかの食べ物が与えられるだけの日々。生まれた国が違うというだけで一生奴隷としての生活を過ごすことが決まってしまった。
 鞭で脅されることもあった。具合が悪い日でも容赦なく働かされた。中には、優しい主人もいた。しかし、一緒のテーブルについて食事をすることはないし、いつも裸足だった。熱が出ても薬がもらえるわけでもなく、一日横になって休めれば、ましだった。
 その主人も事業に失敗すると、ショウゴは別の屋敷へと売られていく。そんな繰り返しに、初めこそは両親を祖国を自分の肌の色を怨んだ。しかし、いつしかあきらめと慣れで怒りすら感じなくなっていた。

 ある日、新入りの奴隷がやってきた。彼は、慣れずにいた。働きの悪い彼には、主人は食事をほとんどあたえない。ショウゴは自分の夕食を分けていたが、それがばれてひどく叱責を受けた。鞭が背中に当たる。痛さのあまり、思わず手で払いのけてしまった。それは初めての反抗だった。
 しかし、主人はよほど気に食わなかったのか、彼を反逆者として治安部隊に引き渡してしまった。一度主人に逆らった奴隷はどこも雇ってくれない。そのため軍の傭兵部隊に移された。将校達による理不尽なしごきやいじめがある。しかし、同僚や上官は同じ傭兵なので奴隷のときよりは過ごしやすかった。
 一年もたたないころ、ショウゴのいる部隊が襲撃された。隊は散り散りとなった。彼を含め、多くの傭兵が脱走し、レジスタンスになった。

 ショウゴには人をひきつける魅力があった。朝からショウゴのもとへは、話を聴きに逃げ出した奴隷たちがやってきた。多くの市民が、自分達の奴隷を返せと押しかけてきた。それでも、ショウゴは避難してきた仲間を庇い続ける。やがて、市民と政府が結託すると、どちらからともなく度々衝突が起こった。そのころ、ショウゴの組織は千人ほどに膨れ上がっていた。
 クーデターを起こすため、時の宰相の暗殺を計画したが失敗。政府の弾圧が激しくなり、多くの者が勝手にテロ活動を始めた。ショウゴが指揮したわけではない。しかし、彼は捕まり死刑囚となった。
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