探りあい
文字数 835文字
「治りそうか?」
大将がたずねる。
「あれは、危険だ。」
とダンガはささやいた。
「あの香りをかいだ後、少量の酒を飲むと胸の鼓動が強くなり生気が戻る。しかし、効果が切れると前よりひどくなる。残念だが、彼はもう立ち上がることはできないだろう。」
大将は首を横に振った。
「やつは、不思議な力で、多くの者に信頼を得ている。水の上を歩くのを見たとか、宙に浮いたとかいう話だ。」
ダンガは、しばらく考え込んだ。おそらくトリックか、幻覚だろう。盲目的な信者には、何を言っても無駄だ。それに、呪術師は相手の術を非難しないという暗黙の掟がある。
彼は、診察の前にその呪術師に会う事にした。
「余計な事は言うな。われわれも命が危うくなる。」
ダンガは大将のルパパと二人だけで呪術師の家を訪ねた。
「これは、これは有名人がこんなところに。いや、お会いできて光栄ですな。ダンガ殿。」
呪術師はスーヤ・マーラと名乗った。おそらく、本名ではあるまい。
「珍しい術をお使いになるようですな。先ほど長老にお会いしたが、一瞬で生気が戻られた。すごいものです。わしなんぞただの老いぼれ。昔ながらの治療しかできんでな。」
ダンガは相手に悟られないように、部屋を見回した。乾燥した植物がつるされている。はっきりとは解らないが、香料や興奮作用のあるものが目立つ。
「山からの霊気を取り込みたいのだが窓を開けてよいかの?」
ダンガがマーラに尋ねた。
「邪気除けの香りが逃げるので、なるべくなら締めたままにしておきたいのだが。」
明らかに彼は嫌がっている。
「徐々に、体調が悪化しているように見えるが、呪術師として良心の呵責を感じませんか?」
ルパパが耐え切れずに口を挟んだ。マーラはニヤニヤと笑った。
「父親を心配する気持ちはわかるが、これは呪術師同士の話。ルールは守んなきゃ。」
「私は、単なる客だ。おぬしの呪術の邪魔はせんようにしよう。」
その場はダンガが引いて事なきを得た。
大将がたずねる。
「あれは、危険だ。」
とダンガはささやいた。
「あの香りをかいだ後、少量の酒を飲むと胸の鼓動が強くなり生気が戻る。しかし、効果が切れると前よりひどくなる。残念だが、彼はもう立ち上がることはできないだろう。」
大将は首を横に振った。
「やつは、不思議な力で、多くの者に信頼を得ている。水の上を歩くのを見たとか、宙に浮いたとかいう話だ。」
ダンガは、しばらく考え込んだ。おそらくトリックか、幻覚だろう。盲目的な信者には、何を言っても無駄だ。それに、呪術師は相手の術を非難しないという暗黙の掟がある。
彼は、診察の前にその呪術師に会う事にした。
「余計な事は言うな。われわれも命が危うくなる。」
ダンガは大将のルパパと二人だけで呪術師の家を訪ねた。
「これは、これは有名人がこんなところに。いや、お会いできて光栄ですな。ダンガ殿。」
呪術師はスーヤ・マーラと名乗った。おそらく、本名ではあるまい。
「珍しい術をお使いになるようですな。先ほど長老にお会いしたが、一瞬で生気が戻られた。すごいものです。わしなんぞただの老いぼれ。昔ながらの治療しかできんでな。」
ダンガは相手に悟られないように、部屋を見回した。乾燥した植物がつるされている。はっきりとは解らないが、香料や興奮作用のあるものが目立つ。
「山からの霊気を取り込みたいのだが窓を開けてよいかの?」
ダンガがマーラに尋ねた。
「邪気除けの香りが逃げるので、なるべくなら締めたままにしておきたいのだが。」
明らかに彼は嫌がっている。
「徐々に、体調が悪化しているように見えるが、呪術師として良心の呵責を感じませんか?」
ルパパが耐え切れずに口を挟んだ。マーラはニヤニヤと笑った。
「父親を心配する気持ちはわかるが、これは呪術師同士の話。ルールは守んなきゃ。」
「私は、単なる客だ。おぬしの呪術の邪魔はせんようにしよう。」
その場はダンガが引いて事なきを得た。