定住

文字数 455文字

 男達が狩猟に出ている間、時間のある女たちや老人は食べられる植物を育て始めた。気候が穏やかになり、人の交流が盛んになったため技術が広まった。大きな湖の周辺に、村ができた。畑の作物を狙って、イノシシや猿も集まってくる。わざわざ遠くまで獲物を探す必要も無くなった。

 定住によって人々の寿命は延びたが、病気も増えた。老人が感染する。しだいに病気は強力になって子供や大人を襲う。薬もワクチンも無い時代。親は口移しで子供に食べ物を与える。ちょっとした肺炎で村が全滅することもあった。

 生まれつき猟にでることができないひ弱な子は、呪術師となった。薬草の知識を身につける事で、養ってもらえた。病は気から。信頼を得るほど、ちょっとした病気や怪我であれば治りやすくなることも彼は知っていた。そのため、大げさな悪霊を掃う儀式を行った。儀式が複雑になるほど、信用が増した。

 最初は噛んで与えていた薬草も、すりつぶすことで安全に与えることができることも学んだ。その技術は、歯の弱った老人のための食べ物を作るのに応用された。
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