呪い

文字数 816文字

「病気なのか?」
 マイが王子に問いただす。
「医者がいうには何らかの毒物ではないかと。祈祷師どもは呪いと言っております。」
 マイは椅子にすわると、粘土を取り出した。
「わしらの仲間に水銀を扱うものがおる。かれらは短命だが、その死に際に似ておる。」

 国政は正妻の子である第一王子が摂政として行っていた。しかし、まだ幼く実権は母親とそれを取り巻く臣官たちが握っていた。母親は自由な人で、疑うことをしない。近づいてくる人間にはなにかと優遇してしまう。さまざまな名誉職につくが、大抵は正常な人間なら敬遠するようないかがわしい集団のものであった。

「わしは医者ではない。治すことはできん。」
 その日から、マイは部屋にこもると何かを作り始めた。
「誰も、信用できん。私の助手は、王子おぬしがするのじゃ。」
 コペン王子は、土をこね、紐状にした土をくみ上げ、筒をつくる。
 マイは筒を組み合わせている。数日後、高さ30センチほどの一体の土人形ができた。
「これを持って、工房へ行け。出来上がれば仲間が届けに来る。」

 王子は、乾いて固くなった人形を袋にいれると急いで出かけた。慎重にしかし急いだ。人形とマイの言葉を伝えると、工房は扉を閉ざした。
 2週間の月日が流れた。工房からは何人もの職人が巨大な布にくるまれたものを背負って出て行った。
 その間、王が触れたち食べたりするものは厳重に管理され、容態は落ち着いていた。

 工房からの荷物が届いた。マイは王の隣の部屋に運び込ませた。いくつもの大小さまざまな筒上の土器だった。やがて、それは巨大な人形となった。足には土を入れた。それはまるで植木鉢のようだった。そこに木の枝で芯をつくりいくつもの筒をはめてくくり付けていく。筒同士は紐を通す穴がいくつも空いていた。それは、素焼きの王の実物大の立像だった。
「これを日に数度、外からかすかに見える位置に置け。それで、敵はあせるだろう。」
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