旅立ち

文字数 676文字

「助かったよ。」
 タボは素直にお礼を言った。

「ヘヘン。どう、これでも役立たずかしら?」
 ポポは得意げだった。
「ごめんよ。」
「この氷の大地を越えるには、優秀なガイドがいるわ。それもひ弱な小人族ではないガイドがね。」
「ああ、そうだね。」
 タボはポポの言いたいことはわかった。体の雪を払いながら
「君はガイドとして優秀かい?」
 と覗き込むようにたずねた。
「もちろん。このあたりでは、私をおいて条件にかなうものはいないわ。」
「では、お願いしよう。ぼくをこの氷の大地の先に案内してくれるかい。」
 ポポは少し考えてから答えた。
「いやよ。」
 それから少し間をおいて続けた。
「あなたの行く新天地までなら引き受けてあげる。」

 二人は、一旦ポポの洞窟に戻ると本格的な旅支度をした。両親が残した毛皮を使って、衣装を作った。とくに靴と手袋と防止は毛の厚い部分で入念に作った。ポポためにウサギやモグラなどの肉を乾燥させた。そうして半月ほどしてから、改めて氷河へと二人で向かった。
 タボは氷河の向こうのことを毎晩ポポに話してくれた。氷河のまだなかったころ、タボたちの祖先が食料を求めて山を越えたこと。ポポの祖先が住んでいたこちら側に来て帰れなくなったことや、ポポたちの種族がもうこのあたりにはいなくなってしまったことなどを話してくれた。
 ポポは山の悪霊の言い伝えをタボに話した。
「氷の王は、人間が嫌いで人が山に入ると雪の塊を落としてきたり、大きな口をあけて落としたりする。だから、獣の皮を被り、獣達の足跡を探しながら歩かなければならない。」
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